第17話 僕達の戦いはこれからだ!
-- 真治
「夜歌様ぁ、何でも聞いて下さぁい」
拘束を解いたリリアンが、ごろごろ夜歌に甘える。
「夜歌・・・人間の女性と接触禁止・・・」
晶が呆れて言う。
「ロウ、しっかり監視しててね?」
睡蓮が困った様に言う。
「リリアン、リンダの所に案内してくれる?」
「はい、勿論です!」
リリアンの先導のもと、通路を進み・・・おや?
「これは・・・廃棄区画?」
晶がぽそっと言う。
マナが、濃い。
結界の外程では無いが。
朽ち果てた壁、朽ち果てた家。
何かが噛み砕いた跡や、浄化されていない毒沼。
攻撃を受け、そのまま放置したのだろうか。
「こちらです」
リリアンが向かった先には、隔壁が有り・・・その中に学生達が数十名囚われていた。
見張りをしていた精霊達が驚いて言う。
「リリアン?!貴公、何をしているのだ!」
「ご主人様を案内しました」
「・・・?!洗脳か・・・!」
ただのモフです。
「此処で何をしているのですか!学生達を解放しなさい!」
睡蓮が叫ぶ。
「何を・・・だと?見て分からないとは、愚かだな」
精霊が嘲笑う。
「神王、ケルビムの復活ですよ」
リリアンが言う。
・・・
?!
「ケルビムって確か・・・」
夜歌が戸惑った様に言う。
「神王達の良心で、良識。世界の調停者。美しき狼。人間に言葉を教えた存在。知識の象徴」
「違う」
ロウと夜歌を除く全員の言葉がハモる。
多分、ロウが出鱈目吹き込んだな。
「違いますよ。ケルビムは・・・狂気の代名詞、滅ぼす存在、黄昏を告げる存在・・・そして、うら若き男女の生き血を糧とします」
精霊が陶酔する様に言う。
「失礼極まりないな!」
ロウが抗議する様に叫ぶ。
同族の氏神みたいなものなのだろう。
「さて、学生と貴方達は、此処でその血を解放して貰うよ。悪く思わないでくれたまえ」
精霊が光の剣を抜き放つ。
「剣なら私が相手するよ。あの災厄の権化を復活なぞ、させるものか」
ニクスが剣を抜き放つ。
精霊は・・・
名前:ファーマリア
種族:???
状態:霊鎧
霊格:☆6
属性:地
霊殻:1020(+1/1秒)
魔力:210(+2/1秒)
物攻:87
物防:263
魔攻:14
魔防:186
速度:77
運命:3
・・・強い!
対するニクスは・・・
名前:ニクスロア
種族:炎帝/精霊
霊格:☆8
属性:火
霊殻:無限
魔力:無限
物攻:無限
物防:無限
魔攻:無限
魔防:無限
速度:無限
運命:68
・・・あ。
「ニクス、鎧が外れてるわ」
「おっと、危ない」
ニクスがカシャン、と兜前方のパーツを下げ、顔を覆う。
名前:ニクス
種族:???
状態:霊鎧
霊格:☆5+
属性:無し
霊殻:64万(+10万/1秒)
魔力:87万(+15万/1秒)
物攻:17
物防:19
魔攻:8
魔防:17
速度:43
運命:68
うん。
さっきのは何も見てない。
「行くよ!」
圧倒的なステータス差。
ザンッ
ニクスがファーマリアの剣を弾き飛ばし、剣を突きつける。
ステータス差ある筈なんだけど、面倒になったんだろうな。
「く・・・強い。貴公、何故そこ迄の力を持ちながら、人間なんかに・・・我々と・・・理想の世界を作ろうぞ!」
「・・・何で理想の世界を作るのに、犬コロ復活させるのさ」
ニクスが呆れたように言う。
「はっ。ケルビムと言えば混沌の象徴。あの方を復活させ、血と刺激に満ちた世界をお創り頂くのだ!」
ファーマリアが叫ぶ。
「・・・ニクスよ。ソレを倒すの、私が代わって良いかね?」
ロウが半眼で言う。
「混沌の象徴は大人しくお座りしてて」
ピシャリ、とニクスが拒絶する。
暴れだそうとしたロウを、ガイとリスタが抑える。
「私が世界に問うたところ・・・生け贄を捧げた後にこの世界にケルビムが生存している確率は100%なのだよ!」
なっ。
本当に効果有るのか・・・?
皆動揺を隠せない。
「世界質問を、そんな無駄な事に使ったのかあ・・・」
ニクスが脱力した様に言う。
「何にせよ、キミは精霊界にお帰り」
ドッ
ニクスの攻撃で、あっさり依り代を失い、ファーマリアが光の泡となって消えた。
「あの・・・有難う御座いました。私自身、そして皆さんを助けて頂き有難う御座います」
囚われていたリンダが駆け寄り、僕に御礼を言う。
僕は何もしてないんだけど。
「御礼ならニクスと夜歌に言ってよ。とにかく無事で良かった」
帰りは、睡蓮の結界で学生達を保護しつつ、廃棄区画を通って保護区画に移動。
精霊達の侵入経路等、様々な調査・・・等があるけど、僕達は御役御免。
リンダとも別れ、帰宅。
さり気なくリリアンが夜歌についてきたけど、君は当事者じゃないのかなあ。
--
僕達の歓迎会を兼ね、御礼のパーティーを開いてくれた。
所狭しと食べ物が並ぶ。
「これ・・・美味しい!」
僕が今日何度目か分からない声を漏らす。
ケーキ。
小麦粉、を焼いて、クリーム、を乗っけて。
果物が入ってて・・・とにかく美味しい!
「これ、気に入ったわ。でも、何だか分からないわ」
睡蓮が困った様に言う。
「それは、ティラミス、ですわ」
リンダがニコニコしながら言う。
「それにしても、精霊の侵入経路、驚きでした・・・でも、もう大丈夫ですわ。精霊感知の警報もつけましたしね」
リンダが胸を張る。
「あれ?何も鳴ってないけど?」
ニクスが不思議そうに言う。
「あれ・・・おかしいですね。あ、ファミリア登録されている方は、除外設定が入っているようですわ」
リンダが資料を見ながら言う。
「なるほど~」
ニクスが頷く。
夜歌にリリアンと猫耳の女の子がベタベタしている。
リリアン検知されて無いから、多分駄目だと思う。
・・・
って、猫耳の女の子!
「ロウ、ちゃんと監視しててって言ったよね?!」
「ち、違うのだ。迷子の娘でね!」
ロウが狼狽えて言い訳する。
・・・どうしよう・・・
・・・まあ、見なかった事にしよう。
美味しい料理も堪能出来たし。
早速活躍して良い印象残せたし。
なかなかの都会デビューになったんじゃないだろうか?
とりあえず高校の3年間。
それが終われば、行くなら大学の4年間。
まだまだ都会生活は長い。
のんびりやっていこう。
魔王が退場した、この確立した世界で。
--fin
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お付き合い下さり有り難うございました。
後日、別作品を連載開始予定です。
ふぁみりあ!~魔王が退場したこの世界で平和を謳歌します~ 赤里キツネ @akasato_kitsune
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