第10話 虹もふ

-- 真治


「虹水晶?」


僕は晶に聞き返す。

晶が、鉱石を採りに行くのを手伝って欲しい、と言ってきたのだ。


「そう。賢者の石の材料にする」


賢者の石は、魔力を凝縮して貯めておく事ができる、使い捨ての石だ。

作るのが難しく、晶の家系しか作れない。


虹水晶は、霊山の頂上付近に生成される宝石だ。

なかなか見つからない。

ガイなら好きなだけ作れるけど、あまり精霊に頼るのは良くない。


準備を終え、町外れに。


「風よ、集いて運べ」


晶が風の魔法を行使。

空気の船ができる。


やっぱりエレメントは便利で羨ましい。


「ロックジャイアントだ」


強くはないが好戦的で、食べられない。

避けられる戦闘は避けたい。


「向こうにフォレストジャイアントがいるから、威嚇し合っているみたい」


晶が言う。

確かに。

ならこっちには来ないか。


ぐん


晶が船を急上昇させる。

バジリスクの群れだ。


「多いね」


僕がそう漏らす。

晶が手を伸ばすと、


「堕ちろ」


ガラガラ


バジリスク達の足下が崩れ、足止めされる。


「着いた。このあたり、かな?」


船を降り、晶に話しかける。


「ん。だと思う」


早速鉱石を探し始める晶。

さて・・・僕も探そう。


ダイヤモンド・・・違う・・・オリハルコン・・・違う・・・ミスリル・・・お前じゃない。


「無いね」


「数ヶ月前に1度採ったから・・・かな。もっと別の場所、開拓しないと・・・?」


晶が困った様に言う。


ゴゴゴ


ロックゴーレムだ。


ザンッ


僕の剣が、ロックゴーレムを切り裂く。

崩れるロックゴーレム。


ぽとり


ドロップ・・・虹水晶!

ラッキー。


「・・・真治は、ゴーレム狩って貰った方が良いかも・・・」


晶がぽそりと言う。


「了解、ゴーレム探すよ」


結局、僕が出したゴーレム産が、唯一の収穫となった。


-- 真治


「魔獣、エルダースフィンクス・・・こっちで良いの?」


前を歩く夜歌に尋ねる。


「うん。ロウがこっちだって」


入学前に、どうしても捕まえておきたい魔獣がいる。

夜歌からそう相談を受け、手伝いに来ている。


「エルダースフィンクスは無理だと思うけどなあ」


ニクスが困った様に言う。

そんなに強いのだろうか?

でも、夜歌のモフりなら・・・


「そう言えば、夜歌よ。親父殿に許可は取ったのかね?」


ロウが尋ねる。


「取ってない〜」


夜歌が無邪気に答える。

良いのかなあ?


ガサ


スフィンクスが現れる。

でかい。

高さでも5メートルくらい。


「キミじゃない。どいてくれないと、痛い目にあわせるよ」


夜歌がスフィンクスに警告する。

純魔獣なので、夜歌の敵ではない。


「我が実力を知らずに良く吠えるな」


スフィンクスがにやりと笑う。


夜歌ががしっとスフィンクスを持ち上げると、投げる。

十数メートル飛び、岩に叩きつけられ、めり込む。

あ、逃げた。


「ノーマルがいるなら、エルダーもいるかな?」


僕がそう呟いて・・・


ちょ。


「あれ何?」


高さ50メートルくらいのスフィンクスがいる。


「いた、エルダースフィンクスだ!」


夜歌が叫ぶ。


「駄目だと思うよ」

「駄目だろうね」

「駄目だな」


僕、ニクス、ロウが言う。

あんなの飼える訳ないじゃん。


「ちゃんと・・・世話するから!散歩にも行くから!」


夜歌の言葉に、


「夜歌は我と一緒に都会に行くだろう。そもそも、アレは牧場に入るまいよ」


ロウが諭すように言う。


「じゃあ・・・一撫でだけ、させて」


夜歌が言うが、


「駄目。エルダークラーケン懐かせて連れ帰って怒られたでしょ」


僕が首を振りながら言う。


「・・・そこの小さき者共よ。失礼な相談をしていないかね?」


エルダースフィンクスが呆れたように言う。


キラッ


夜歌の目が光り、跳躍。

僕は慌てて止めようと夜歌を掴もうとするが・・・当然届く訳もなく、夜歌がエルダースフィンクスの頭上に乗り・・・


なでなで


びくうううう


ずどん


エルダースフィンクスが力が入らない様子で、その場に崩れ落ちる。


「ふお・・・ふぉ・・・」


口からよだれが流れ、まともに喋れない。

あああ・・・遅かった。


「どうかな!」


夜歌がエルダースフィンクスに尋ねると、


「勿論ついていきます!」


即答するエルダースフィンクス。

あああ・・・


僕はロウを向き、


「街で獣人の女の子とか居たら、絶対夜歌に撫でさせないでね?」


ロウも頷く。


「うむ。流石にそれは止めよう」


さて、エルダースフィンクスどうするか・・・

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