第9話 観察
-- 真治
村の外れに行くと、スレイプニルが待っていた。
脚が多い漆黒の馬だ。
悪路でも結構な速度が出るし、結界を張るので快適に乗れる。
一頭だけだから二人乗りか。
ファミリアは飛んでついてくるし。
「よろしくね、クラフ」
スレイプニル・・・クラフに話しかけると、
「仕事だ、任せろ」
クラフが頷く。
僕が前に乗り、後ろに睡蓮が乗る。
ぴったりくっつくと、準備完了。
ゴッ・・・
最初、一瞬だけ風を切る音がしたが、その後は無音。
クラフの結界のお陰だ。
姿勢制御も素晴らしく、全く動かない。
快適な乗り心地だ。
ゴールデンドラゴンはここまで気を使ってくれない。
「ここだな」
クラフが谷の入口で止まる。
「有難う、クラフ」
お礼を言うと、クラフが頷き、駆け去った。
待っている間暇だから、散歩だろう。
「・・・わ、増水してるわね」
睡蓮が呟く。
昨日このあたり大雨降ったので、沼が深くなっている。
「滑りやすいから気をつけてね」
睡蓮に注意を促すと、足の先に魔力を纏わせ、沼の上を歩く。
「転んだら格好悪いものね」
睡蓮も続いて沼を歩く。
ガボオ
影が浮かび上がり、襲いかかってきた。
ポイズンロブスター。
紫色の巨大ザリガニだ。
不味い。
と。
頭上に乗ると、
ぽかり
鞘に収めたままの剣でショックを与え、気絶させる。
村から遠いので、無駄に命を奪う事もない・・・捕食されたら知らない。
ジュル
デッドリーリーパー、漆黒のイソギンチャクみたいな敵が浮上する。
無数の触手を睡蓮に伸ばし、
パシンッ
睡蓮が展開している反射結界に弾かれ、宙を舞う。
下側、長いな。
ああなってたのか。
ざばあっ
・・・オルトロス!
精霊が混じらない純魔獣なら対処できるが、半精霊は人間では敵わない。
何故此処に!
「ニクス、お願い」
「ん」
ニクスは頷くと、オルトロスに接近。
ザシュ
一撃目で霊鎧を破壊し、
ザシュ・・・シュウウウ
二撃目で消滅させる。
半精霊や精霊は、強い。
攻撃的な奴は放置すると危険なので、駆除が必要だ。
「真治、そこの岩陰怪しいよ」
睡蓮が岩陰の洞窟を指差す。
確かに、テラースパイダーがいそうだ。
「よっと」
洞窟に足を踏み入れた瞬間、無数の糸が飛んでくる。
ザシュッ
僕の腕や足を、細かな毒糸が切り裂く。
当たりだ。
ボウッ
回復魔法を展開、解毒と治療を開始。
ガアッ
襲いかかってきたテラースパイダーを、睡蓮の結界が阻む。
反射結界ではないので、吹き飛びはしない。
「3メートル・・・若い成虫か」
僕がそう呟くと、
「うん、これでも十分だよ」
睡蓮がそう言い、スケッチを始めた。
さて・・・しばらく時間掛かりそうだな。
「真治、お弁当作ってきたよ」
ニクスがそう言うと、お弁当を取り出す。
おにぎりに唐揚げに・・・
「わ、何時も通り美味しそうだね、有難う」
お礼を言って、食べる。
美味しい。
「私も頂きますね・・・ふむ、随分上達しましたよね。残念ですが、私では敵いません」
リスタが悔しそうに言う。
「どうせ睡蓮には敵いませんよ」
ニクスがむくれながら唐揚げを口に運ぶ。
睡蓮の料理は別格だ。
でも、ニクスの料理はホッとするので好きだ。
ニクスは優しいから、その気持ちが料理に反映されていると思う。
「描けたわ。後は、テラースパイダーに糸を出させて」
睡蓮がテラースパイダーの周囲に逆結界を張り、縮めていく。
テラースパイダーが慌てて糸を吐き、逃げようとする・・・
糸をくるくる絡め取っていく。
しばらく糸を吐き出させた後、テラースパイダーをリリース。
慌てて逃げていくテラースパイダー。
「じゃあ、帰ろう」
睡蓮がにっこり微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます