第8話 採取

-- 真治


何か飛んでくる・・・伝書光鳥か。

強い精霊ではないけど、早くて賢いので、手紙の配達に使われる。

ファミリア契約はせず、報酬を与えて頼む、といった協力関係にある。


「有難う」


お礼を言って手紙を受け取ると、ひらひらと羽を振り、また村に向かって飛び立った。


「何て書いてあるの?」


晶が尋ねる。

えっと・・・


「帰りに食材採って来てって・・・うわ、荷物になるなあ」


呻く。


「どれどれ・・・うわ」


覗き込んだ睡蓮が面倒そうに声を漏らす。


「ロック鳥にグリーンドラゴン、それにクラーケン・・・大物ばかりだね。運ぶの大変だよ」


夜歌が困った様に言う。


「問題無い、夜歌。私が運ぼう」


ロウの言葉に、夜歌が、


「ほんと?有難う!」


嬉しい言う。

有り難い。


「まずは・・・ロック鳥か。上にいるし」


上空3km程を、ちょうどロック鳥が飛んでいる。

あの一匹を・・・


「充填・・・射出」


晶が速攻で風弾を構成、射出する。

構成速度は早く、射出速度も速いが、威力は低い。

岩や鉄等は撃ち抜けない。


ロック鳥がバランスを崩され、怒り、こちらに向かってくる。


「わっ!」


降りてきたところに、夜歌の声弾。

ロック鳥が怯む。


ザシュ


僕が死角からロック鳥に飛び降り、急所に剣を突き刺す。


「充填・・・射出」


晶が、圧縮した氷の刃で、ロック鳥を突き刺す。


ザン


僕がロック鳥の頭を切り飛ばす。

後は・・・適切に切って血抜きかな。


ファミリアに時間を止めて貰えば、後で処理もできるけど。

そこまで頼るのは良くない。

線引きが大事だ。


「後は・・・グリーンドラゴンとクラーケンかあ」


帰りがちょっと遅くなるなあ。


-- 真治


狩って帰った食材は、僕達を送り出す前日のお祭用だ。

その日は着実に近付いている。

勉強はもう諦めた。


「真治〜」


睡蓮が家の外に立って、ちょいちょいと呼んでいる。

何だろう。


「睡蓮、どうしたの?」


「うん・・・衣装に使うのに、テラースパイダーの糸が欲しくて」


おや?


「衣装関連ならリスタが出してくれそうだけど」


僕がそう言うと、


「そうなんだけどね。やっぱりテラースパイダーの本物を見て、そのイメージを使いたくて」


睡蓮が頭を振る。

なるほど。


「分かった、付き合うよ」


さて・・・毒の谷だっけ。

準備しないと。


「真治、毒の谷に行くなら、服装気をつけてよ?」


ニクスが注意してくる。


「ん、分かってるよ」


毒の谷・・・毒の沼や、腐食性の毒ガス・・・腐食耐性があるキマイラ製の衣服と、ヴァンパイアロードの羽のマントと・・・後、白い服だと汚れが目立つ。


ちらり、と睡蓮を見ると、純白のふんわりしたドレス。

まあ、多分謎の力で汚れないんだと思う。

そもそも結界張ってるしね。


「毒の谷へは竜で?」


睡蓮に尋ねる。

村で飼ってるゴールデンドラゴンなら、毒耐性もあるし、早い。


「馬借りてあるよ〜」


馬かあ、まあ、大丈夫だろう。

荷物はリスタがしまうだろうし。


「じゃあ行こうか」


準備を終え、睡蓮に笑いかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る