第11話 トウキョウ・シティ

-- 真治


「此処が・・・都会・・・」


僕は慄き、呟いた。


「何これ・・・言葉も出ないわ」


睡蓮もうっとりとして言う。


それは、幻想的な風景だった。

それは、人工的な風景だった。


魔導コンクリートが無限に伸びる円柱・・・それ自体が都市と言われても信じるのだけど・・・それはただの都市を支える脚で。

計7本。

天を衝く様に伸びている。


3層に分かれた、広大な都市。


そして、それを覆う巨大で強力無比な結界。

マナは、旧人類には毒である。

その大部分の流入を防ぎ・・・また、外敵、純精霊すらその内部に入る事は適わない。

契約精霊は別だけど。


これが・・・日本の首都・・・!


「トウキョウ・シティへようこそ。びっくりした?」


ニクスが軽く笑いながら言う。


「・・・ええ、驚いたわ。此処では確かに、何が起きても驚かない」


晶の啞然とした顔は、貴重だ。


「早く・・・色々食べたい」


夜歌が嬉しそうに言う。

食い意地が張ってるけど、僕も賛成だ。


「それで、どうやって入るの?」


睡蓮が尋ねる。


ニクスがちら、っと、ガイを見る。

ガイが、リスタを見て。

リスタがロウを見かけ・・・やっぱりニクスを見る。


「おい」


ロウが抗議する。


「ロウ分かるの?」


夜歌が尋ねる。


ロウが考え・・・


「転移しよう」


そう結論を出した。


精霊すら入れない、と聞いてたけど。

結局、精霊って色々手を抜いているだけなので、本来の力を振るえば、人智では測れない。

そういう事だろう。


-- 真治


「此処が・・・都市!凄い・・・」


僕は思わず声が出る。


「見てあれ!凄い!マナを殆ど使わずに、鉄の箱が飛んでる!」


睡蓮が興奮気味に言う。


「スイ、あれはエアライド、一般的な乗り物です。あれを見て騒ぐのは、正しくない・・・と言うか、恥ずかしい」


リスタが消え入りそうな声で言う。


「凄い美味しそう、何あれ何あれ!もうご飯の時間なの?もう並べてるの?」


夜歌がはしゃぐ。


「夜歌、あれは出店というものだ。常に物を売っている。あれは特に、飲食店というものだな・・・利用にはお金がかかるぞ」


お金・・・大人達が交易で稼いだ奴だな。

少しだけ持たせて貰っている。


「買えば良いんだね!買ってくる!」


夜歌が店で、串に刺さった肉を買い・・・あれ、もめてる?


「お客様・・・百万円硬貨とか使われても困りますよ・・・こんなの、お釣りを出せません。下層で使う物では無いので・・・銀行で崩してきて下さい」


「崩す・・・?このお金を粉々にすれば良いのか?」


「いえ・・・そうではなくてですね・・・」


察するに、下層と上層では、流通している貨幣が違うのだろう。

あれは上層のお金って事だ。


「すみません、僕達、田舎から来まして・・・お恥ずかしいですが、換金の方法も分かりません。銀行の場所を教えて頂けますか?」


間に入って、店員さんに尋ねる。


「田舎・・・?ちょっと意味が分からないですが・・・銀行なら、あの建物ですよ」


「すみません、有難う御座います」


ぺこり、と頭を下げる。


立ち去り際、店員さんが尋ねる。


「君たち、学生さんですか?」


「えっと・・・入学して学生になる為に来ました。まだ入学していないので、学生ではないですね」


俺の答えに、店員さんが不思議そうに言う。


「入学式は4月1日。昨日だよね。入学式に出てないのかい?来年?」

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