第12話 改竄

-- 真治


「・・・入学式・・・今日の昼から・・・って・・・」


僕が、呻きを漏らす。

全員、やってしまった感が漂っている・・・訂正、夜歌は分かってない。


「ニクス、キミが確認した筈だが?」


ガイが低い声で言う。


「ちゃんと見たよ!!ほら・・・あ。試験が2日で、入学式は1日だ」


ばつが悪そうに、ニクスが言う。


「困りました・・・せっかく招かれたモデル世代なのに、入学式をすっぽかすなんて・・・正しくない、正しくない、正しくない・・・」


リスタが呻き、しゃがみ込む。


どうしよう・・・


ニクスが、きっと顔を上げ、


「仕方がない・・・改竄しよう」


ギイイイイイイイ


ニクスが手を突き出すと、気持ち悪い程の魔力の歪みが生じる。

世界の改竄。

精霊とは人智を超えた以下略。


世界が悲鳴を上げ、抵抗する。

だが、それは無意味だ。

その気になった精霊を止める、それは不可能と同意。


世界が改竄されていく。

歴史が改竄されていく。


時間にして数秒。

気安く、ニクスが微笑んで言う。


「うん、終わった」


-- 真治


最上層、学研区、東京高校。

この国の最高ランク。

最高学府、東京大学への進学者が殆ど、という。


「でかい・・・何これ、1つの都市?!」


僕が叫ぶ。

地平線すら見える気がする。


「真治・・・恥ずかしいよ」


ファミリア達は、僕達が騒ぐせいで田舎者とばれて恥ずかしいようだ。


「ようこそ、伝説にある外の民よ。トウキョウシティヘようこそ」


声をかけられる。


金髪、縦ロール、碧眼、白い肌、美女・・・凄いお嬢様感。

・・・何で外から来たってバレたんだろう?


「私は、今期新入生の総代を務める、リンダと言いますわ。宜しくお願い致します」


スカートの端を持ち上げ、お辞儀。


「初めまして。ハクバ村から来た真治です。宜しくお願いします」


・・・今更の様に気づいたけど、黒髪黒目って此処では珍しいのか。

マナから隔離されたとか、妖精の影響とか、色々有るんだろうな。


「こちらは睡蓮、晶、夜歌。一緒にハクバ村から来た仲間です」


何で僕が全員分紹介しているんだろう。


「宜しくお願いします」


3人が頭を下げる。


「宜しくお願いしますわ。それでは、入学式の会場にご案内しますね」


リンダが微笑んだ。


-- 真治


移動装置・・・エレベーターと言うらしい、で移動。

思わずはしゃいだ僕達を見て、リンダがくすりと笑い・・・ファミリア達が恥ずかしそうに小さくなっていた。


途中、凄い勢いで資材を組み合わせ、会場らしきものを組み立てている人達が居た。


「ごめんなさいね、ドタバタして。関係者のミスで、入学式を昨日と間違えて実施してしまって・・・今日になって気づいたのだけど、既に色々解体してたので、今慌てて作っているのですわ」


リンダの道すがらの解説。

ごめんなさい。


「笑い話ですわよね。職員、学生、全員が勘違いしてたのですから。配布物も記録も全部4月2日だったのに、全員見間違えるって逆に凄くないかしら?」


逆にそれを全員が疑わず受け入れてるのが凄いと思うよ!

どう考えても笑い話じゃないよね。


それにしても、都市の人達、底が見えない。

力の制御が完璧過ぎる。


普通、魔力は抑えても見えてしまうもので、夜歌なんかは制御が上手ではないのでかなり見えている。

逆に一番制御が上手い晶だと、かなり小さく見える。


これが・・・リンダから殆ど感じないのだ。

鑑定しても、検出限界以下になる。

凄まじい制御力だ。


入学式は、予定より1時間遅れたが、始まった。


「その・・・手違いで、大半の学生は昨日同じ内容を聞いたと思うが、それは忘れて、新たな気持ちで式に臨んで欲しい」


校長の挨拶から始まり・・・空中に色々映し出されるパフォーマンス。

しかも、魔法を使えば簡単に出来るのに、敢えて魔法を使わないこだわり・・・

これが・・・都会!


学生証が配布され・・・その後はクラス分けに使われる試験。

実技は自信あったのだけど、周りの魔力制御を見ていると不安になる。

まあ、僕達4人は最高クラスに入る事が決まっているのだけど。


「じゃあ、また後で」


挨拶して別れ、試験室に。

魔力量、が重視されるようだ。

本来なら、2万5千エーテル無いと、不合格らしい。

100万エーテル以上で、Aクラス・・・ちょ。


「嘘だろ・・・」


僕で5万エーテルくらい、晶で7万。

夜歌は1万5千くらいだ。

・・・これが、都会。

マナに囲まれて生きていたから・・・とか思っていたけど、関係ない。

まさにエリートの巣窟・・・


ごくり、息を呑む。


「ねえ、真治、勘違いしてると思うけど、その魔力値はね」


「大丈夫。分かってる。本気でやるよ」


木刀に魔力を集め・・・


「スラッシュ!」


ガッ


測定クリスタルを強打。


計測・・・3万4千エーテル!

そうか・・・大気のマナが少ないせいだ。

何時も以上に疲労も感じる。


「これが・・・都会・・・」


僕は慄いて、呟いた。

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