第13話 ささいな誤解

-- 真治


所属クラス・・・Aクラスで、合流。

みんな死んだ魚の目をしている。


「どうしたんですの?」


リンダが心配して尋ねてくる。


「思ったより実技が悪くて・・・3万4千エーテルって・・・」


僕がそう言うと、


「・・・え、5桁ですの?皆さん精霊と契約していると聞いてましたが・・・精霊ってそんなもんですのね」


ぐふ。

ニクスは関係ないじゃん。


「リンダはどのくらいだったの?」


「私は320万エーテルでしたわ」


ぐふ、吐血。


リンダが心配そうに言う。


「その・・・実技ついて来るの難しいかも知れませんが、気になさらないでね?次の子からは、ちゃんと適切学校、適正クラスになるようにしないとですわね」


・・・ははは。


その後筆記試験を受けた。

晶は総合2位であったが、僕と他のみんなはさんざんだった。

特に夜歌。


簡単なオリエンテーションも終わった。

学生証で購買利用出来るとか、色々と説明。

早速夜歌が大量のお菓子を買って来て、クラスメートに苦笑されていた。


クラス役員とかも決める。

夜歌が飼育委員に立候補したが、なれず。

授業についてくるのも難しそうなので、基本役割は免除だ。


帰ろうとすると、リンダに呼び止められる。


「外の民の戦い方に興味が有るんですの。放課後付き合って下さらないかしら?」


「良いよ。僕も都会の人の力は見てみたいし・・・手加減してね?」


くすり、とリンダが笑う。


「それは勿論ですわ」


体育館に個室のデュエルルームが幾つも有るらしい。

学生証を通して認証、扉が開く。

・・・さっきから圧倒されっ放しだ。


「気を付けて、真治。都会の人は、底が見えない」


「うん・・・」


鑑定すら無効化する魔力制御。

どうやればそんな事が可能なのか。


「行きますわ」


コウッ


リンダの横に、妖精が出現する。

リンダは複数の妖精と契約しているみたいだけど、そのうち一体だ。

このタイミングでリアライズ・・・審判?

鑑定してみよう。


名前:ポーラー

種族:雪の精/妖精

霊格:☆4

属性:水

生命:3(+1/12時間)

魔力:4(+1/9時間)

物攻:3

物防:2

魔攻:5

魔防:6

速度:4

運命:1


僕は木剣を出すと、魔力を込める・・・やっぱり集まりが悪い。

何時もより多めに放出する。


「条件の確認ですわ。一撃でも入れられたら、貴方の勝ち。貴方が買ったら、何でもあげますわ。財産でも、私自身でも、ね」


や、キミは要らないけどね。

財産貰おうかな。


「僕が負けたら?」


と言うか、勝てる気がしないけど。


「特に何も。私が勝つのは分かってますからね」


ですよね。


「僕が勝ったら、財産を貰うよ。都会の通貨は、心許ないからね」


リンダはくすりと笑うと、


「分かりましたわ。夢を見て下さい」


そう言って、手を前に出し・・・


「行きなさい!」


ちょ?!


妖精がこっちに突っ込んで来る。

どういう事なの?!


ガッ


木刀で妖精の突撃をいなす。

手が痺れる・・・

えええ・・・


「な・・・いきなり何をするんだ?!何で妖精を?!」


「訳の分からない事をおっしゃりますね。それにしても珍しい。精霊を身に纏って自身が戦われる戦法なのですね」


違いますけど?!

え、何。

これ、妖精と戦わせられるっていうハンディキャップマッチ?!

都会怖い。

そりゃ強気の条件出すよね。


ヒョオオオ


冷気が舞い散る!


転がりながら躱す。

一瞬遅れて、地面がどんどん凍っていく!


「卑怯だぞ!」


叫びながらも、何とか攻撃の機会を伺う・・・厳しい。


「何を言ってますの!」


リンダが叫ぶ。

妖精が2本の氷の剣を構え・・・


「妖精と人間との戦い何て聞いてないよ!」


「意味が分かりませんわ!貴方も精霊を戦わせても良いんですのよ」


・・・え?


「待って、意味が分からない。こっちもファミリアに戦って貰って良いの?」


「当然でしょう?と言うか、人間が戦える訳ないでしょう」


いや、だって・・・あの妖精とニクスじゃ、戦いにならないよ?


「・・・えっと、鑑定、してる?」


「鑑定って何ですの?」


リンダが首を傾げる。


ちら、とニクスを見ると、


「向こうが良いって言ってるんだから、良いんじゃない?」


ニクスも困惑した様に言う。


「じゃあ、ニクス、お願い」


「ん」


僕は後ろに下がり、ニクスが前に出る。


「ようやく出て来ましたわね・・・行きなさい、ポーラー!」


妖精がニクスに向かって進み・・・ぺし、とはたかれる。


ひく・・・ひく・・・


瀕死になって転がるポーラー。


「ぽおおおらああああ?!」


リンダが驚きの声を上げる。

や、そりゃねえ。


「・・・もう少し弱めが良かったかな」


ニクスが困った様に言う。


きっ、とリンダが睨み、


「行きなさい!」


追加で体、妖精を呼び出し。

こちらに向かい・・・


とん、とん、とん


ニクスが突き、そのまま3体とも気絶。


「な・・・どういう事?!魔力5桁でしょう?!」


ん?


「魔力5桁なのは僕で、ニクスは当然5桁じゃないけど?」


ぴしり


リンダが動きが止まる。


ぎぎぎ・・・とこちらを向き、


「まさか・・・貴方自身が・・・魔力5桁有りますの・・・?」


「・・・?だからそう書いたけど・・・?」


ニクスが困った様に言う。


「真治、あれ、私達ファミリアの魔力を書く欄」


ひゅるー。


冷たい風が吹く。


「・・・えええ・・・?」


「この都市の旧人は、自分で生成出来る魔力なんてほぼ皆無だぞ。新人でも、外の新人とは桁違いに弱い。外を防護服無しでは歩けないくらいにな」


ガイが言う。


ああ。

制御出来てるんじゃなく、無いのか。


お父さん、お母さん。

やっぱり、実技には差があったようです。

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