第5話 ドロー

「勿論、噂だけだとは思いたいですが・・・本当だった場合、上手くできないと恥をかきます。それは、正しい行為とは言えません。ファミリアを使って戦いをするのが一般的なのなら、それが可能であるべきです」


リスタが頭を振る。


「うう・・・僕は争いは嫌なんだけど・・・」


夜歌が困ったように言う。


「我に任せよ、夜歌。其方は目を瞑っているだけで良い。全てを灰燼と化してくれる」


ロウが優しく言う。


「それでは意味が無かろう。あと、灰燼と化すな、駄犬」


ガイが溜息と共に言う。


「何か言ったか?ナルシスト」


ロウがガイに視線をやる。


「ほう、まだるっこしいのは抜きにして、晶と夜歌は此処でファミリアの扱いの練習をするかね?」


ビシッ


ガイの周囲に美しい水晶が析出し始める。


「こら、世界を壊す気か!ちゃんと仲良くしないと!」


ニクスが慌てて止める。

・・・時々、ファミリア達のおふざけがエスカレートしそうになる事がある。

ニクスは優しい性格なので、そういう場合は間に止めに入るのだ。

にしても、世界を壊すとか大袈裟な。


晶がポキポキ、と、ガイの周囲に析出した結晶を折り取っている。

あの結晶から凄まじい魔力を感じるな・・・


ガラガラ


ガイのローブのフードに、晶が結晶を流し入れる。

あの中は、晶専用の作品展示兼材料貯蔵庫なのだ。


「それで、最初は何処?」


晶がガイに尋ねる。


「最初は・・・向こうの方かな。ニューヨークあたり」


ニクスが答える。

ニューヨーク・・・結界都市の名だ。

近隣の結界都市なら魔導列車で交流が有るらしいが、ニューヨーク程の距離となると、人間では厳しい。


「あちらだと・・・アバドンか?数が多いから骨だな。それに、アレを刈り切っては、情勢に影響が出ないか?」


ガイが思案しながら言う。


「一体間引くだけだよ」


ニクスが指を一本立てつつ言う。

いっぱいいるの?


「アバドンなら、全員そこで済ませてはどうだ?刈った数で勝負すればいい」


ロウが提案する。

勝負?


「あまり乱獲しては、調和が崩れます。それは許されません。それと、今日は勝負事では有りません。目的を守って下さい、駄犬」


リスタが諭す様に言う。


「誰が駄犬だ、このルール厨!」


ロウがリスタに向かって吠える。


ザンッ


ニクスが大剣を地に突き刺し、叫ぶ。


「だ~か~ら~!喧嘩禁止!リスタもガイも駄犬も、いちいち喧嘩を売らない、買わない!」


ニクスが止めてくれる。

しぶしぶ矛を収めるリスタとロウ。


「・・・あれ?」


ロウが何か違和感が有る様に小首を傾げる。


「仲が良いなあ」


夜歌が嬉しそうに呟いた。

だよね。


「それでは、出発しよう」


ガイがそう言うと、宝石の門を作り始める。


「空間を歪めるのですか?秩序を乱すのは控えて欲しいです」


リスタが困惑した声を出す。


「・・・話が進まないわ」


睡蓮が不満気に言う。

だよね、ファミリア達、放っておくと延々と漫才をしている。


「私がとって来ようか」


ロウが提案する。


「一体ずつだからね。全部持って来ちゃ駄目だよ」


ニクスが釘を刺す。


「アバドンってどんな魔獣?」


晶が尋ねる。


「食欲旺盛、繁殖速度が早いのが特徴だね。可愛い昆虫型魔獣。波動砲と各種抵抗力と病気に気を付ければ、そこまで脅威じゃないよ。群れると注意」


ニクスが答える。

なるほど。


ロウがしたっ、と跳び、次の瞬間、戻って来た。


ぞわっ


一気に瘴気が増し、悪寒が止まらない。

大地が枯れて行く。

それは、巨大な昆虫、だった。

大きさは高さ2メートル、体長8メートルくらい・・・?

大きな口、巨大な鎌、大きな翅。

茶色く、光沢の有る身体。

ロウの風に拘束されている・・・咥えるの嫌だったのかな。


名前:アバドン

種族:???

状態:霊鎧

霊格:☆6

属性:毒

霊殻:246(+1/5秒)

魔力:400(+1/3秒)

物攻:44

物防:58

魔攻:22

魔防:60

速度:41

運命:9


・・・強い。

これが群れをなしてるって、何処まで魔境?!

これが神霊級・・・


名前:ニクス

種族:???

状態:霊鎧

霊格:☆5+

属性:無し

霊殻:64万(+10万/1秒)

魔力:87万(+15万/1秒)

物攻:17

物防:19

魔攻:8

魔防:17

速度:43

運命:68


ニクスと比べると、霊格の違いが明らかだ。

霊鎧と魔力を除けば、運命と速度以外の能力値が全て圧倒されている。


「真治、最初は私達よ。敵のステータスは見たよね。どうすれば良いか・・・分かるね?」


ニクスが俺とアバドンの間に立ち、アバドンに向かって構える。


こちらの物理攻撃と相手の物理防御の差が、ダメージとなる。

つまり、ニクスがいくら攻撃しても、アバドンはダメージを受けない。


逆に、アバドンの攻撃が直撃すると、25もダメージを受けてしまう。

1秒間に4000回を超えるダメージを受ければ、霊鎧が削れて行く。


ひゅる


アバドンの拘束を、ロウが解く。

戦いの・・・開始。


通常攻撃が通じない・・・なら!


「ドロー!」


僕の言葉に世界が反応。

手にカードが5枚現れる。


通称、手札。

枚数は、ファミリアの強さ、マスターの強さ、相性、信頼度・・・そういった要素で決まる。

5枚は多い方だ。


名称:バーニングチェイン

種別:物理攻撃スキル

霊格:☆5

説明:火属性、+10


名称:ムーンスラッシュ

種別:物理/精神攻撃スキル

霊格:☆6

説明:神秘属性、×2、防御無視、連撃ボーナス×2


名称:天火翔

種別:物理攻撃スキル

霊格:☆6

説明:火属性、×4、霊鎧特攻×2


名称:リザレクション

種別:回復魔法

霊格:☆7

説明:蘇生


名称:デス

種別:精神攻撃魔法

霊格:☆6

説明:対象を殺す


・・・攻撃スキルは3枚か・・・!

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