第15話 なんかいる

「我々は今、輝かしい復興の途にある。未来には希望しかない。ここに居るのは優秀な者ばかり。みんなの手で、未来を創って欲しい」


教諭は、みんなを見回し、


「みんな知っての通り、外の大気は濃く、甘い。一部の新人は外でも防護服無しでいられるが・・・普通は防護服を着なければ生きていけない。だからこそ、此処の様に結界都市を創っているのだが」


俺の方を見て、


「既に知っている者もいると思うが。去年、結界の外で生活する旧人が発見された。彼らは、精霊達をパートナーとし、外の濃く甘い大気の中でも、普通に生活している」


多い日は頭痛がしたりするし、歳を取ったら魔力焼けで病死・・・と言うか寿命?で死んだりするけどね。


学生達がこちらを見る。


紫の髪の女生徒が、意味有り気にこちらを見て、微笑む。


鑑定。


名前:リリアン

種族:???

状態:霊鎧

霊格:☆6

属性:風

霊殻:360(+1/1秒)

魔力:900(+2/1秒)

物攻:26

物防:11

魔攻:43

魔防:27

速度:41

運命:3


つよっ。

というか、多分精霊じゃん。


「ニクス、あれ」


「うん、なんかちらほら侵入されてるよねえ。精霊が人間の都市に侵入する必要なんて無いはずなんだけど・・・?」


人間にとって、精霊は脅威だ。

では、精霊にとって都市の人間は?


はっきり言って、どうでも良い。

広い世界の一角を囲い、暮らしているだけ。

無害だ。


「結界都市を増やすのか、外の大気を安定させるのか、または人類が強くなるのか・・・方向性は定まっていないが、人類は確実に良い方向に向かっている。それを忘れないで欲しい」


教諭が落ち着いた声でそう言う。



生徒の一人が手を上げる。


「先生、ニューヨークの方で、精霊により壊滅の危機にあると聞きました。6ブロック中5ブロックが破壊され、避難も追いつかないと」


「詳しいな?!」


学生の言葉に、教諭が驚く。

アバドンかなあ。


「・・・それは事実だ。ただし、数日前に何故か6体いた精霊のうち4体が謎の消失を遂げたので、今は防衛に成功、遠ざける事も出来る見通しだ」


2/3倒しちゃったのかあ。


「先生、日本にはそういうのいないのですか?」


「日本にはいない」


教諭が答える。

嘘だ。


この辺りで言えば、人喰い鬼が自然発生する。

ドロップが良いので、うちの村が狩ってるけど。


トウキョウから離れた場所では、人喰い狼や氷姫、河童・・・半精霊は結構多い。

日本で唯一結界都市を作れたのが、トウキョウだけだ。


彼奴等が何故都市を襲うか・・・それは、人を食べるからだ。

純精霊にはいないが、半精霊には時々いる。


「でも、ナゴヤの方に出た調査団が全滅したと聞いています」


「何故お前はそんなに詳しいんだ?!A級秘匿情報だぞ?!」


秘匿しているのかあ。

そもそも、田舎には都会の情報なんて入ってこないんだけど。


「ナゴヤの方にいるのは、☆5の天火だねえ。数は多いけど、強くはない」


ニクスが解説。


「☆5なら倒せそうだけど」


「数が多い上に隠れてるから、奇襲されたんじゃないかなあ」


不注意かあ。


教諭が続ける。


「そう、確かに、人類は完全にこの世界を取り戻した訳ではない。だが、我々は確実に成長している。必ず勝利できる」


大気のマナは確実に減っている。

だから、時間が経てばこの世界は元通りになるだろう。


新人も次々と生まれているし。


歴史の授業は何とかついていけるけど・・・数学とか化学とかの授業になるとさっぱりだ。

ついていけるのは晶くらいだ。

試験免除で良かった・・・

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