第6話 旅立ちの準備(3)

インターネットは元いた世界にも接続できた。

いくつかの制限はあるらしい。

ニュース画面は見ることはできた。

昨日見た私が巻き込まれた災害の行方不明者はいなかったことになっていた。

メールもチェックできた。

そして銀行口座の残高確認も可能だ。

操作はゆっくりと行うようにと言われた。

こちらの世界は10倍の速さで時が進んでいるからだ。

ライブカメラを見たら確かにスローモーションの様だった。


「そういえばサービスエリアは何か所ぐらいあるのでしょうか」

「はい、約5000か所です」

「はい!?」

「全世界ですから。パーキングエリアも同じだけあります。工場は250か所です。その他の施設が7か所になります。特別室はその全てにありますよ。ここは簡素なものです。お屋敷と言えるところもあります」

「はあ、そうですか。5000か所以上全てでメンテナンスをしなくてはならないのですか」

「いいえ全てではではありません。もちろん全てをメンテナンスしていただければよいのですが」

「それはちょっと」

「大丈夫ですよ」

「はあ」

「では重要な設備に行きましょう。これを左手に着けてください」


腕輪だ。

左手に装着すると変形してフィットした。

しかし着けている感触がない。

色が派手なのが気になるけど。


「これは『賢者システム』の中でのタカシさんの身分を表す魔道具です。これから行く施設に入る認証のためにこれが必要です。それから収納魔法の機能もある魔道具です」

「収納魔法ですか?」

「はい、貴重品を入れるのに便利ですよ。まず左手の掌を上に向けてください」

「こうですか。掌の上に収納操作機-スマホみたいな物が現れますから落とさないように注意してくださいね。腕輪の青い所に右手の人差し指を赤い所に薬指を当てて3つ数えてください」

「1、2,3、おっと」


掌にスマホのようなものが現れた。


「それではその画面を見てください」


画面には大きく「一覧」、「収納」、「取り出し」、小さく「メンテナンス」と出ている。


「まずは『一覧』を右手の指で押してください」


押すと下の方に「新規」、「収納」、「取り出し」、「戻る」、「ホーム」と出ているだけの画面になった。


「ホームを押すと先程の画面になります。左手の掌を上に向けて右手の指で『収納』を押してください」


「収納する物がありません」と表示された。


「ではこのボールペンを左手の掌に載せて右手の指で『収納』を押してください」


ボールペンが消えた。

画面には「ボールペンを収納しました」と表示された。


「『一覧』を右手の指で押してください」


今度は「ボールペン」の表示が出た。


「ではもう1本ボールペンを収納しましょう」


同じように収納して一覧を見ると「ボールペン1」と「ボールペン2」の表示が出た。


「では取り出します。左手の掌を上に向けて右手の指で『取り出し』を押してください」


「ボールペン1」と「ボールペン2」の表示が出たので「ボールペン1」を押す。

掌の上にボールペンが現れた。

次にミオさんの指示で「新規」を押した。

「どの棚を作りますか」と表示され様々名称がでてきたので「文具」選択した。

一覧に表示された「ボールペン2」を押し、「棚なし」を「文具」に変えた。

新たに収納する時も「棚なし」か「文具」か尋ねてくる。

支給品としてノートなど文具一式が渡された。

ペンを筆入れに入れておくと筆入れごと収納された。

支給された財布やペットボトル、非常食用クッキー、システムカードや身分証明書も分類して収納した。

収納操作機を左手の掌に載せ、出した時と同じ操作をすると操作機が収納された。


「この操作機はタカシさんしか扱えません。さらにこの操作機がタカシさんから5m離れた所に5秒以上あると自動的に収納されてしまいます」


リビングで試してみた。

おお、これは便利だな。

置き忘れや盗難の心配がない。


「収納できるサイズとか容量とかは?」

「サイズというよりも重量ですね。タカシさんが左手の掌で支えられる物です。そして無生物。植物やサラダや果物は大丈夫ですよ。生きている動物が駄目と考えてください。中に入れたものは劣化しません。容量は体積10m四方、重量が20トンですね。操作機の一覧画面の上の方に小さく使用量がパーセント表示されます」


至れり尽くせりだね。


「それでは重要施設の方へご案内します」


私が腕輪を装着したことで特別室の鍵も腕輪に権限が移動したという。

今までのカードキーは使えないらしい。

腕輪は一生外せないということだ。

もちろんどんな環境でも壊れないという。


従業員エリアの事務所に行き、さらにその奥の扉から通路に入る。

通路には4m先に扉があった。


「この扉は認証された腕輪の装着者しか入ることができません。この階には同じような扉がこの後2つあります」


さらに2つの扉を通った先にはエレベータがあった。

このエレベータも腕輪のない者が乗っていると動かないということだ。

エレベータが下がっていくのがわかる。

深いな、どこまで下がったんだ。


「ここは地下250mの地点です。ようこそ結界維持設備へ」

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