第2話 サービスエリアにて
従業員は人間でなかった。
人形か?
いや、ロボット?
「いらっしゃませ」
固まっていると声をかけられたよ。
「いかがなさいました」
「へ、」
変な声を出してしまった。
「あ、驚かれましたね。ここの従業員は全てオートマタです」
オートマタ、自動人形か。
「そうのなのですか」
「はい、貴方様は91284日ぶりのお客様です。ここがオートマタによって運営されていることは御存じないのは仕方ありません。250年ぐらい経つのですから。あ、支配人、久しぶりのお客様ですよ」
振り向くとそこには一人の女性が立っていた。
人間もいるのか。
「よくいらっしゃいました。支配人をしておりますスズと言います。あ、私もオートマタですよ」
どう見ても人間にしか見えないスズさんはオートマタだという。
信じられないよ。
身長は160cmぐらいでスマートだけど出るところは程よく出ている黒髪が美しい美人さんだ。
正直オートマタとは思えない。
「おそらくお客様にはこの状況を説明しなくてはならないでしょう。応接室を用意してあります。どうぞおいでください」
「あ、はい」
従業員通用口から応接室に通された。
お菓子とお茶が出てきた。
「個人情報のこともありますので、今はお名前は聞かないようにしております。これから必要に応じて登録していただく必要が出てくるかもしれませんが」
「はい、よろしくおねがいします」
「ではまず私から説明をさせていただきます。まずここは貴方様にとっては異世界という場所です」
「い、異世界ですか」
「はい、正確に言いますと並行世界というものに近いでしょう。貴方様の世界で約29年前に貴方様の世界のコピーというべきこの世界が生まれました。ただし2つの世界が大きく違うのはこの世界の時間の進行が貴方様の世界の10倍であるということです」
「そうするとこの世界の290年前にできたということですね」
「はい、正確に言うと293年と38日前です」
「コピーだったということは私のコピーもいたわけですよね」
「そういうことです。但しもうお亡くなりになっているはずです」
「そうでしょうね」
そうでないと困るかもしれない。
自分のコピーに会ったらどう対応したらいいかわからないよ。
「続けてよろしいでしょうか」
「はい、お願いします」
「この世界では魔法があります」
「魔法ですか」
「はい初めは少数の方が使えるものでした。そして魔法の才能は遺伝をします。私には魔法が組み込まれています。物に魔法を組み込むことを魔法付与と言いまして少数の優秀な方の持つ能力です」
「そうなのですか。私も魔法を使えるのでしょうか」
「申し訳ありません。貴方様には魔法は使えないでしょう。私は鑑定ができます。それによると貴方様は魔法が使えないとわかりました」
「そうですか」
いや残念だな。
まあそんなもんだよね。
あれ、鑑定したら私の個人情報はばればれか。
「あ、今の鑑定は魔法適性だけですからご心配なく。個人情報には触れていません」
「そ、そうですか。私は魔法を付与した物も使えないのでしょうか」
「いいえ、それは使えます」
「そうですか」
「はい、続けますね。魔法を使える人にも能力に大きな差があります。そしてその頂点を究めた方がおりました。その方を世界の人々が賢者と呼びました」
「賢者ですか」
「はい。賢者様は魔法で何でもできるのに科学も活用されてこの世界を発展させました。この高速道路やその施設もその名残です。ところが91284日前にこの世界の地球を強力な宇宙嵐というものが襲いました。その衝撃は大きく山は崩れ、町は滅びました。文明は崩壊しそして多くの人や生物がなくなりました」
「でもここは残っていますよね」
「賢者様はこの高速道路と賢者様が作った工場などには保護と結界を施したので問題ありませんでした。また多くの生物を賢者様が保護しました。賢者様は高速道路に避難すれば大丈夫だと呼びかけたのですが残念なことに信じてもらえませんでした。皆さん地下シェルターに行ってしまったのです。いくら結界があると言っても空が見える状態では怖かったのでしょう」
「駐車所の車はその時の?」
「はい、地下シェルターは地獄の様相だったと言います。生き残ったのは無意識に結界魔法を発動した魔法使いと近くにいた人だけでした。生き残った魔法使いたちには賢者様みたいに魔法と科学をうまく調和できる方々はいませんでした。魔法使いは遺伝で生まれます。それもかなり強い優性遺伝です。魔法を使えない人と魔法使いの子供は魔法使いになります」
「ではこの世界の人たちは皆さん魔法使い?」
「はい、この世界の人たちは魔法を使えます。突然変異の人以外は」
それということは使えない私は絶滅危惧種?
「賢者様は災害の後、混乱を避けるために高速道路など賢者様の結界で守られた施設には他の者が入れなくしました。その代わり各地の集落をつくりました。各集落には魔動馬車も用意しました。配給所も作りました。高速道路を使って私たちオートマタが工場から運んできたものを配給所で配布したのです」
「すばらしいですね」
「はい、そう思いました。その時は。10年経ち、自活できる目途が立ったところで配給を止めました。今は配給所は商店になっており工場で作られたものが販売されています。そして困った事が起きました。人々は科学を活用しなくなったのです。科学は廃れてしまいました。知識が失われてしまったのです。高齢だった賢者様はこの世界に悲観されながら亡くなられました」
「それでは賢者様の知識も失われたのですか」
「いいえ、それは残っています」
スズさんが手をかざすと空中に人の姿が現れた。
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