第15話 シミズ
自由都市国家シミズ。
その首都シミズは貿易港を持つ都市だ。
何となく私のいた世界の清水に似ているよね。
ミホ半島に守られた天然の良港。
だけど、
「富士山がない」
「ああ、高い富士山という山が昔あったのですが災害で小高い程度になってしまいました」
残念。
港には多くの貿易船が出入りしている。
冷凍のマグロの水揚げも多く冷凍倉庫もある。
船は魔動船だ。
『賢者システム』が販売した収納機能を持つ船だ。
ここはコンテナ船などは存在しない世界だ。
冷凍倉庫も『賢者システム』が提供した魔道具だ。
シミズの陸側は長い外壁が続いている。
経済的に豊かなシミズが狙われたことは何度かあるらしい。
魔物より人間の方が厄介だということかな。
シミズサービスエリアからはサービスエリアの持つ魔力車でシミズに行くことにした。
「この方が小回りが利きますから」
「そうですね。確かに私たちの車は目立ちますね」
運転はハルさんがしてくれている。
内部エリアからインターチェンジを使って外に出る。
「お、大きい」
外部エリアの商店は3階建ての大型ショッピングセンターのような規模の商店だった。
「はい、この周辺では最大規模の商店です。大都市に近いのでお客さんも多いですよ」
ミオさんが指さす方にはシミズの外壁が見えている。
「シミズの外壁の一部はあのように『賢者システム』の副結界に接しています。副結界を出たところが外壁門です。そしてあのように主要街道も副結界内を通っています」
「駐車場はあまり広くはありませんね」
「はい、外壁の外から歩いて来られる方や買い物された方が無料で利用できる送迎魔動馬車もあります」
送迎魔動馬車は有料で利用するなら片道一人50円。
乗車証明のチケットをもらって1000円以上買い物をするときチケットを出すと50円引きになり帰りのチケットも貰える。
そのような話をしているうちに外壁門に近づいてきた。
外壁門の外には乗合魔動馬車の乗り場があり、その一角にシミズサービスエリア行きという表示があった。
シミズサービスエリア行きの魔動馬車を待っている人もかなりいる。
私たちの魔力車は多くの市民が入場のために待っている門から離れたもう一つの門へと近づいた。
「こちらは特別門です。王族・貴族・許可を受けている商会関係者と『賢者システム』関係者が利用できます」
「そ、そうなのですか」
門のところで衛士が身分証を確認する。
車から降りることなく確認作業をおこなってくれた。
確認作業が終わると衛士の後ろにいたスーツ姿の男性が近づいて来た。
「よくおいでくださいました『賢者システム』代表タカシ様、ミノ王国王女聖女ナツ様、ミノ王国王女公爵ユミ様。ようこそ自由国家都市シミズへ。シミズ行政府を代表してご来訪を歓迎します」
「え、はい。ありがとうございます」
「サービスエリアから訪問の連絡をしてありましたから」
「いや、ミオさん。そこではなくて代表って」
「タカシさんは賢者様の遺産を受け継いだ段階で『賢者システム』の7人の代表の空席だった1つの代表の地位に着いたのですよ」
「はあ」
シミズ行政府男性の乗る車に誘導されていかにも高級そうなレストランに着いた。
レストランにはすでに昼食の席が用意されていた。
「本日は航路の副結界や海の結界のメンテナンスをしていただいたのこと、ありがとうございます。こちらは私どもの感謝のしるしです。シミズの海の幸を用意しました。ご堪能ください」
「あ、ありがとうございます」
豪華な昼食に遠慮したかったがそのような雰囲気ではなかった。
行政府の男性は席を外したので5人でシミズの海の幸を味わった。
寿司や魚の煮つけやてんぷらなどを楽しみ食事が終わった頃、再び行政府の男性が姿を現した。
「シミズの海の幸はいかがだったでしょうか」
「はい、食材の良さも素晴らしかったですが加えて工夫された料理がよかったです。お寿司はどれも工夫が行き届いていて美味しかったです」
「ありがとうございます。お寿司はシミズの各寿司専門店が味を競っています。本日はその中から7店が自慢の一品を持ち寄ってくれました。タカシ様のお言葉を伝えたら各店の店主も喜ぶでしょう」
「そうなのですか。ありがとうございます」
感謝ですね。
本来なら7店を巡らなければならない美味しい寿司を食べ比べることができたのだから。
「皆様はこれからいかがなされますか。観光に行かれるのでしたら是非ともガイドをつけさせてください」
「申し訳ありません。この後シミズパーキングエリア、シンシミズサービスエリアで監察業務とメンテナンス業務がありますのでこのままハイウェイに戻らなくてはなりません」
ミオさんが対応してくれた。
今日はシンフジインターチェンジにあるシンフジサービスエリアで宿泊予定なんだよね。
「そうですか。残念です。一度ゆっくりとシミズの観光においでください。市民一同に歓迎いたします」
「ありがとうございます」
外壁門で行政府の男性に見送られシミズサービスエリアに向かった。
「本当に美味しい昼食を楽しめたわね」
「ナツさん、王族だったらいつも美味しいものを味わっているのではないですか」
「ええ、それでも今日の昼食は素晴らしかったわ。タカシさんに対する感謝が現れているわね」
「そうね、またゆっくりとシミズ観光に行ってみたいわ」
ちょっとメンテナンスの業務をしただけなのにこの歓待には恐縮してしまうね。
行政府から「オレンジの詰め合わせ」と老舗の「蒸し羊羹」をお土産にもらった。
ミオさんの話ではシミズの良さを少しでも『賢者システム』に印象付けたいのだろうということだ。
「『賢者システム』の各地域の機関紙にも取り上げてもらいたいのでしょうね」
「あのお寿司ならそれだけの価値がありそうですね」
「そうですね」
次はシミズパーキングエリアとシンシミズサービスエリアだね。
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