第11話 二人の魔女

「き、聞こえているの!まさか、言葉が通じないの?」


突然のことに呆けながら声の方を見ると身長150cmぐらいの女性が腰に手を当て仁王立ちしている。

輝くような金髪ツインテール、胸がちょっと薄いが美人だ。

しゃべらずにたたずんでいればお姫様と言われても納得するのだが。

かなり気が強そうだな。


「あの、どなた様でしょうか?」

「言葉がわかるんじゃないの。貴方、絶滅種でしょ。もう一度言うわ。あ、貴方私の部下になりなさい!」

「そう言われても貴方がどこのどなたか存じ上げません」

「そうですよ、ユミ。当然そのよう言われても困惑されるだけですよ」


ユミさんの後ろから一人の女性が近づいて来た。

身長160cmぐらいの黒髪ロング。

豊かな胸を持った清楚な美人さんだ。

なんとなくユミさんに似ているような。


「失礼いたしました。初めまして、私はミノ王国国王の娘、ミノ ナツと申します。ミノ王国では聖女の地位を賜り、『癒しの魔女』の二つ名も頂いております。そしてこちらは私の妹でミノ ユミと申します。ミノ王国では公爵の地位を賜り、『看破の魔女』の二つ名も頂いております。身長は148cm、上から78、54、80です。あ、私は身長は162cm、上から94、58、86です」

「な、なにを言っているの。何で私の個人情報それもトップシークレットを漏らしているのよ」


いや、本当にお姫様だということだな。


「ここではなんですから、場所を変えませんか。あ、ここのお代は私どもで」


ミオさんの方を見ると従えというふうに合図をしてきた。

二人に従って魔動馬車に乗り、町の迎賓館に移動する。

この町の宿では王族や貴族の宿泊には対応できないためこのよう施設がある。

彼女らはここに滞在しているということだ。

招待を受けているわけではないのでもちろん有料だが。


「改めまして、タカシ様。ナツと申します」

「ゆ、ユミです」

「タカシです。で、何で私の名前を」

「あら、私たちは二つ名を名乗りましたは高位の魔術師が鑑定をできることをご存知ではないのですか」

「そういうことですか」

「はい、そしてそちらのお二人はオートマタのミオさんとハルさんですね。鑑定阻害の魔道具をお持ちのようですがごめんなさいね、簡易型では私たちの鑑定は阻害できませんわよ」

「そのようですね」

「さて、本題に入りますわ。ユミは部下になりなさいと言ったけど、この子、恥ずかしり屋さんだから。私たち貴方を伴侶にしたいと思ってまいりました」

「は、伴侶ですか」

「はい、絶滅種のタカシ様のお子様を産みたいと考えています」

「何で。それから絶滅種って何ですか」

「ご存知ないのは仕方ありませんね。異世界の方ですものね。絶滅種というのは魔法を使えない方です。そして私たち高位の魔術師と絶滅種の間にはより高位の魔術師が産まれることが判っています」

「私はただの種馬か!」

「いいえ、そのような事はありません。私たち二人は貴方を愛し、貴方を支えていくつもりです。私たちのような高位の魔術師は貴方のこれからのあなたのお仕事にはお役に立ちますよ」

「私たちって」

「ああ、この世界は一夫多妻制だというのも聞かれていないのですね。この世界では女性が男性の5倍おりますからそうしないと結婚できない女性が増えてしまいますので。男性は30歳までに最低二人と結婚しないと罰金が科せられます」

「だ、だから、私たちは貴方を助けてあげるのだから、すぐ結婚しなさい」

「まだ、30歳までには余裕がありますし、あなた方の事はまだよく知りません」

「一応言っておきますと私は20歳、ユミは18歳です。結婚ができるこの世界の成人は15歳ですが婚約は8歳ぐらいからできます。もちろん私たちは婚約したことがありません。タカシさんと出会えることが分かっていましたから」

「どういうことですか」

「はい。私たちの魔法の才能は全てにおいて普通の魔術師の数倍の力を持っています。魔術師はこの世界の世界で普通に魔法の使える人たちの数倍の魔力と能力があります。さらに二つ名を持つ私たちには特に得意とする魔法があります。私の場合は治癒と回復、ユミは鑑定と探知です。そして二人で力を合わせると偶に予知ができます。10年前に私たちはタカシさんがこの世界に来ることを予知しました。そして10日前に今日あのカフェでタカシさんと会え、一緒に旅ができることを予知できたのです」

「だ、だから私たちをこれからあなたの旅に連れて行きなさい!そうすれば絶対に私たちと結婚したいと思うようになるはずだからね。私たちだってあなたと結婚するために貞操を守ってきたのだから」

「いや、そうとは限らないと思うけど。ミオさんどうしましょう」

「このような事は予測していましたがまさかこんなに早くとは。ナツさん、婚約をしてそれが破談になっても大丈夫ですか」

「はい、大丈夫です。いいわよね、ユミ」

「なら虫よけに彼女らと婚約しましょう。ミノ王国の王女でもある聖女と公爵でもある彼女らが婚約者ならば変なちょっかいも少なくなるでしょう」

「虫よけですか」

「はい、虫よけでも何でもなるわよ」


結局、彼女らと婚約して旅に同行させることになった。

本当にいいのかこれで!

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