不思議で懐かしい作品でした。子供の頃、いつまでも続いて欲しいと願った神社の祭り。その場所から実際に離れられない子供たちもいる。少しの恐ろしさも感じる、ノスタルジックなお話でした。
少女が迷い込んだのは、夏祭りの屋台通り。だけどここは……どこかがおかしい。「お前、いつからここにいる?」そう声をかけてきたのは、狐の面をかぶった少年。彼に名前を聞かれた少女は、さくらという名前を応えたものの、自分の名前を忘れかけていた事に気付く。ここは何かが変だ。さくらはキツネ面の少年といっしょに、この世界から抜け出すために行動を開始する。夏祭りと言う少し現実離れした、幻想的な雰囲気の物語。夏にぴったりの、読後感がある作品です。
夏祭りって、どこか他とは違う不思議な雰囲気があるって思いませんか?主人公さくらが迷い込んだのも、そんな夏祭りから続いている、少し不思議な世界でした。ずっとここにいると帰れなくなる。そう言われて帰る方法を探すのですが、所々に描かれている祭りの描写がとても綺麗で、帰れなくなると言う恐怖があるにも関わらず、ただ怖いだけでない幻想的な雰囲気を醸し出していました。最後、ずっとさくらのそばにいてくれた少年との結末が印象に残りました。
歳をとるにつれて色んなことを忘れたりするわけですが、それは記憶だけじゃなくて、子供の頃はたしかに感じていたはずの、しかも友達と一緒に共有していたはずの感覚ももう思い出せなくなっていることに気づきます。例えば揺れる木の影が怖かったり、岩の後ろになにかいる気がしたり。そういう子供の頃にあったはずの感覚はもしかすると現実ではない何かに通じていたかもしれないのかもなんてこの作品を読んで思いました。もしかするとあのときのあれはなにかに通じていたのかもと思うと、ちょっと背筋がひやっとしますね……。雰囲気があってとてもよかったです
多くは語らない。ただ異界にあるものは、顔を誇示し続けるか、その顔を異界のものとして隠さないといけない。
迷い込んだ不思議な場所で、自分のお面を探す少女と、それを助ける狐面の少年。ここはどこか? なぜいるのか? わからないことだらけの中、お面と記憶を探す少女たちとともに、どんどんと物語の中へ惹き込まれ、最後まで楽しく読むことができました。胸を衝くラストまで、どうぞお見逃しなく。
すごく好き……語彙力の低下が著しくなるくらいすき……お祭りのお店が並ぶ光景が目に浮かぶようで、現実にも起こるんじゃないかとわくわくしました。
祭の日の夜は、光と闇が溶けあう時間。まして鳥居の先にあるお堂付近であればなおさら……。ハレとケの混ざり合う空間で、子どもたちは彼我の境をさまよう。とても幻想的な物語です。
自分の世界はお面の内にあるのか外にあるのか
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