第2話 起きたら異世界でした
「……しゅじん、……て下さい。ごしゅじーん。おーきーてー」
そんな二次元キャラが言いそうなセリフで自分の意識がだんだんクリアになっていく。だが瞼は重く、身体が思うように動かない。
よし寝るか。
俺はクリアになっていく意識を強制シャットダウンさせていく。
「ちょっと、ご主人! また眠ろうとするのはやめてください! 私泣きますよ? 近所迷惑になるくらい。まあ私達以外回りにいませんが」
「ったく、うるせぇな……。分かったよ起きればいいんだろ!」
重い身体を起こしゆっくりと瞼を開いていく。瞼はまるで、今初めて使うかのような重い感覚がする。
立ち上がった後、腕を伸ばし辺りを見ると、丘がある平地に見渡す限り一面に草が生い茂っていた。これはネットサーフィン中に見た景色に似ている。確かユーラシア大陸の遊牧民が生活してるのがこんな感じの所だった。それなら歩いてみて現地の遊牧民に接触してみるか。
「ごしゅじーん」
「そもそも何で俺、こんな所に……」
うーんと思い出しながら右手で頭を掻く……って右手!?
確か爆発に巻き込まれて右腕ごとなくなったはずじゃ……それに左目だって。
俺は右手で左目を触るが、やっぱりある……何でだ?
「ごーしゅーじーんー」
「つーか俺……。死んだはずじゃね?」
俺は最後に杉さんを助けるために身を犠牲にして爆発に巻き込まれたはずなのだが。杉さん、無事ならいいんだけど。
「ごーしゅーじーんー! もうっ! 無視するのはやめてー!」
「だって何処にもいねぇだろうが!!」
その場でまた体を一回転させて周り見てみるが人なんてどこにもいない。
何? 俺って多重人格だったの?
「あっ! 今、姿消してたんでした!」
そんな焦り声がした後、目の前に人形の3Dのグラフィックの骨組みのような物が現れ、そして頭の上から人の姿がパァァっと生成されていく。
「うおっ!? なん……だと!?」
俺は2つの意味で驚いた。
一つはまず何もない所から人がいきなり出現したからだ。こんなことまずあり得ないだろ。二次元じゃあるまいし。
そしてもう一つはその出現した人が……幼さがまだ残る16歳前後くらいのメイド服を着た白銀の髪の美少女だったからだ!
(なにこの子、めっちゃ可愛い! こんな可愛い子、現実ではまず見な……ん? いや何処かで見たような……)
「初めましてご主人! 私は貴方をこちらに引き込んだ物です!」
体が足まで生成された後、美少女は俺に駆け寄ってきて笑顔で手を握り元気に意味不明な事を仰られた。
引き込んだ? この国に連れ込んだ本人だという事なのだろうか。
「引き込んだってどういうことだ?」
「はい! ご主人を"殺して"こちらに連れてきました!」
少女は元気に通常の知識を持つ人ではありえない言葉を発する。
何言ってんだこの美少女は? 殺したってどういうことだよ。だって今こうして生きてるし――ってまさかな。
俺は今、一つあり得ない考えをしてしまった。それはもしかして転生したんじゃね? という非現実的な考えだ。
いやだって"異世界転生"とかラノベとかアニメの二次元の話だろ?
「多分今、転生なんてあり得ない! なんて考えているかも知れませんが、はっきり言います。ご主人は転生されました!」
「いや! だってあり得ないだろそんなの!」
これ、もしかしてバラエティー番組の新手のドッキリとかいうやつだろうか。
ふっ……なら騙されんぞ。
そんな対バラエティー防御に入った俺を見て少女は「うーん」と唸り、手を口元に置き悩み始める。
「信じてませんねぇ。じゃあどうすれば逆に信じます?」
どうすれば信じるか……。あっ、そうだ。この少女が言った転生したと言うことが本当ならこの世界には二次元と同じように魔法とかあるのだろうか。
「なら魔法とか召喚とかあるなら見せてくれよ」
俺は少し皮肉を込めて少女にお願いする。すると少女は手をポンと叩き「その手があった!」と何か納得していた。
いや、まさかな……。
「それでは、ご主人! お手をお貸し下さい!」
「お? おう」
俺は言われた通り両手を少女の前に出す。すると少女いきなり薄い長方形の物体を何もないところから手元に出現させ……って――
「これタブレットじゃね?」
この重さ、タッチパネル、デザイン、ホームに戻る為の丸いボタン。どこからどう見てもタブレットである。
「いえいえ、魔法道具です」
「いや、これ――」
「魔法道具ですぅ!!」
「あっ、はい」
少女は断固としてタブレットとは認めないようだ。もしここが異世界だと仮定して、著作権的なものでもあるのだろうか。
「それで? これが魔法道具だとしてどうやって使うんだ?」
すると少女は何故か柔らかな体を俺にくっつけ密着し、説明を始める。
「まず、横についている電源ボタンを押して下さい」
「やっぱりこれタブ――」
「魔法道具ですぅ!!!」
やっぱり認めんか。
俺は言われた通り横についているボタンを押して起動させ認証確認がでる。どうやらこれは指紋認証なようだ。
「なぁ、えっと……」
「あっ! 名前を言うのを忘れてました! すみません! 私はエリとでもお呼び下さい」
少女は頭を下げて、エリと呼ぶように勧めてきた。
「えっと、じゃあエリ。この認証はどうするんだ?」
「あぁ、それはご主人の指紋で大丈夫です」
何で俺の指紋が登録されてんだよ。まさか寝てる間にか?
画面に指をつけると鍵か外れるマークが表示されロックが解除される。普通のタブレットだったら次はホーム画面が表示されるはずだが、このタブ……魔法道具は違うようだ。
表示された画面、それは、
「兵器製作表? 何だこれ?」
そこには、兵器製作表と表示され、lvを選択しろみたいな事が書かれていた。
「それはこの世界のご主人の能力です!」
「はい? 能力?」
能力って……あの能力か!? 異世界転生物で良くあるヤツだよな。異常なステータスとか無敵スキルとか超強力魔法とか、あれなのか?
俺は試しにlv1と表示された兵器表をみる。
(こっ……これは……!?)
表示された兵器、それは現代の戦闘兵器の数々だった。
戦車だったら日本の10式やフランスのルクレール、ドイツのレオパルド2A6など。
航空機だったら、三菱のF2戦闘機や垂直離着陸が可能なF35 ライトニング。ステルス戦闘機のF22 ラプターなどだ。
そして船だとイージス艦のこんごうやきりしまなど。空母も色々ある。
あと軍事車両や、銃火器などもある。
「うおっ!!! これマジで作成できるの!?」
軍事マニアな俺には感激せずにはいられない。
「はい! 使いたい物をタッチしていただければすぐ生成されますよ!」
「えっ!? すぐに!? 素材集めが必要とか、魔力を貯めろとかいう代償とかないの?」
「ありません!」
やべぇよ。ってことは無尽蔵に生成できんじゃん。これもう完全にチート能力じゃね? いや、そもそも二次元で登場するチートってそんなものだったか。
でも美味い話には裏があると良くいいますしねぇ。
「いやね。もしかして実は寿命が削られていくとか記憶が失われていくとかいう代償が実はあったりして?」
「そんなのないですよ! やっと見つけ、”殺して”こちら側に呼び込んだのに、そんなことしたら水の泡じゃないですか!」
少女はいきなり顔を近づけ「ふんす!」という擬音が聞こえてきそうな表情になる。つーかまた私が殺しました宣言か。
「なあエリ。俺を殺したって言うのはどういう……」
「えっ? 飛行機のエンジンに爆弾を仕掛けて殺したんですよ」
「っ……!」
エンジンのカバーを外した時、赤い粘着テープで巻かれていた爆弾がついていた。確かに殺して転生させて今に至るなら多少強引だが納得することはできる。
「いやー。"また失敗"したと思いましたよ。何せ爆風に巻き込まれてまだ生きてたんですから」
エリはそんな物騒なことを「ははは」と世間話でもするように笑いなが話す。
(また失敗って……まさかっ……!?)
俺は二十歳になってから不気味な視線の後、危険な目に必ず会ってきたがそれらの事をまさか全部この子がやったと言うのか?
「まさかずっと俺を見てきたり、事故や事件を俺の周りで起こさせたのはお前が……?」
するとエリは笑顔で「はい、そうです!」と答えてきやがった。この子頭のネジでも外れてるんじゃ……。
「つーかなんで俺を殺したんだよ。もしかして実はこの世界の救世主で魔王から人を救えとか、王様になって国を統治しろとかじゃないよな?」
「ご主人の想像力豊さには感激します!」
やべぇ。今のイラッときたわ。可愛い顔してエグイ性格してるなこいつ。
「そんで真面目に、俺を殺した理由は何だよ」
真面目に俺が聞くとエリは頭をポンポンと叩きながら「うーん」と悩見始める。おい……これってもしかして――
「あっ、忘れました!」
…………えっ、なに? 俺ってどうでもいい理由で殺されたの?
おい……嘘だろ……?
俺はその場に倒れ手をつけてうなだれる。
「だ、大丈夫ですよ! そのうち思い出しますので、それまで待っていていただければ」
いや、そういう問題では……。俺の人生って安過ぎるだろ……。
メ○カリで最低金額の300円レベルじゃねぇか……。
「ま、まあ……いいや。それじゃ、このタブ……魔法道具のレクチャーを頼めるか?」
なんかもう考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきた俺は凄く気になっていた兵器製作表の方に話を変える。
「はい! 分かりました」
そして俺は"兵器製作チート"を試していく。
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