第12話 俺、多分また死にました
「……様、とても良く寝て……れますね」
「はい……は本当に可愛……す」
俺は二人の女の人の声に呼ばれるように意識がゆっくりと浮き上がっていく。
(あれ? 俺、いつの間に寝ていたんだ?)
声的に一人はエリだとしてもう一人は、多分ナチェだろうか。
そしてなんか下半身が重い……。
「……うわぁ、エリさん、大胆ですね……」
「……ふふふ。これが未来への家族計画なのですよ――」
「お前らなにやってんグハッッ!」
俺は何か大変な事を止めるため上半身を勢いよく起こす。がそこにいたエリの顔にぶつかる。
「グァァァァァッッ!! ハナガァァァァ!!」
「ちょっとご主人大丈夫ですか!? やられた時の魔物みたいになってますが!?」
エリは特に苦痛を受けている感じはなく俺を心配した表情で覗く。
(くぅぅぅぅ! 足の小指並に痛いぞこれは!)
鼻を押さえた手を見ると血で真っ赤に染まっていた。これはまさかっ……!?
「ほら分かる!? 血よ! 血!」
「あぁ、はい。鼻血ですね。それではこれを」
メイド服姿になっているエリは、俺の渾身のネタをスルーしてポケットから厚みのある長方形のティッシュを手渡してきた。
いや……これって――
「ナ○キンじゃねーかっ!!」
「はい。吸水性がありますよ!」
「俺はナ○キンで顔を埋める変態じゃねぇ!!」
(くっ……! エリはなんというものを渡してくるんだっ! 恥じらいというものが無いのかお前は!)
「あの、光輝様が持っている綿を固めたような物はなんですか?」
「えっ!? そ、それは……」
男の俺が説明するとか変態以外の何者でもないじゃん。
エリ、頼んだ!
「この、ご主人が今、顔をフガァァァとしようとしたこれは」
「おい馬鹿! やめ――」
――説明中――
「……光輝様……。そんな方でしたか……」
「なんで……エリの言葉しか信用しないんだ……」
エリがナチェに危ない説明をしていくから何度も弁明したのだが、駄目でした……。
「大丈夫ですご主人! 世界に嫌われても私だけは――」
「自重しろ!」
「あいたっ!?」
エリはその場でしゃがみこみ俺がチョップしたところを押さえて涙目で「うぅ~いたい……」と唸る。
(なんで剣で腕切った時は平然としてたのに俺のチョップでダメージ入ってんだよ)
「それで? ナチェはどうして我が赤城に?」
「あぁ! この特殊な建物は赤城というんですか!」
ナチェは目をキラキラさせながら艦橋を見上げる。なんかこの子、すぐにキラキラするよな。
「って、そういや足大丈夫なのか?」
昨日は歩けないくらい酷かったのに。
「回復魔法で処置したので大丈夫です。それで私はその事で光輝様に伺ったのですよ」
「その事?」
「はい。本当なら昨日、命の恩人である光輝様の為に宴会をあげるはずだったのですが、色々ありまして……」
ナチェはしゅーんとして「ごめんなさい……」と謝る。
この光景を第三者が見たら俺が悪者みたいに見えるのだろう。それほどナチェは申し訳なさそうにしている。
「あっ……いや、いいんだ。こんな広い敷地をくれただけでも俺は大満足!」
俺は凄い満足してると少し大袈裟気味に体を使い表現する。
「そうですね! 私との愛の巣で――」
「だから自重しろ!」
「あいたっ!?」
俺はまたエリにチョップを振り下ろす。すると頭を押さえて「あたたたた」と擦る。
どうやら俺のチョップには天使特攻が付与されているらしい。
(つーかエリがどんどん(性的に)危なくなっていくんだが……。っていうかこれが素なのか?)
「そ、それでは、宴会の準備は整っているので行きませんか?」
ナチェは無理に笑顔を作り勧めてきた。
その気遣いが俺には凄く痛い……。
「あれ? そういやナチェはどうやってここまで来たんだ? まさか徒歩なのか?」
「いえいえ、私はこの子に乗ってきたんです。来て! ドーントレスちゃん!」
(ドーントレスだと!?)
ナチェの呼び声と共にバサバサと何かが羽ばたく音が近づいてくる。
そして甲板にドオォォォン!! と大きな音を立てて牛と鷲が混ざったような生物が甲板に降り立つ。
こ、これは!?
「あっ、どうもー。グリフォンのドーントレスでーす」
『…………』
俺とエリは目の前に降り立った、何とも性格が軽そうなグリフォンに言葉を失った。
ギャルってこんな感じだよな。
「ちょ!? うちを見て絶句するのやめてくれません!?」
「うーん。やっぱりドーントレスちゃんは話し方を普通にしませんか?」
「そんなっ!? それじゃクソじじい共と被るじゃないですか!!」
何? グリフォンにも反抗期とかあるの?
「って、あああぁぁぁ!!!」
「ご、ご主人?」
俺はつい叫んでしまった。
その理由は、グリフォンのドーントレスが降り立った箇所にひびが入って凹んでいたからだ!
「てめぇ、よくも俺の赤城を!」
俺は恨みを込めた目でドーントレスを睨む。
「えっ? あっ!! やばっ!」
そう言って1歩後退り、またバキッと割っていく。
「はぁぁぁ!? てめぇ!! わざとやってるなっ!!」
「いやいやっ! うちそんな事考えてないっすよ!」
俺が詰め寄るとまた1歩後退りバキッと割っていく。
「だーかーらっ!!」
「ひぇぇぇ! それならどうすればいいんすか!?」
「そんなのここじゃなくて下の草の生い茂る地面に降り立てばいいだろ! 何? 知性が高いって(笑)なの? そんなことも分からない鳥頭なの? 馬鹿なの? 図体でかいくせに脳ミソ小さ過ぎるんじゃないの? 頭にう○こでも詰めた方がいいんじゃないの~!」
俺は馬鹿なグリフォンに罵詈雑言を吐き捨て、甲板端まで走り「スッキリしたっ!!!」と空へ叫ぶ。
まさかこんなに罵倒が気持ちいい事だったなんて!
「…………言わせておけば…………!!」
「ん?」
振り返り馬鹿グリフォンを見ると誰が見ても分かる、見事な怒り顔だった。天狗のお面のような感じに見えなくもない。
「この人間風情がぁぁぁぁぁっ!!!」
「うおっ!?」
そのグリフォンはまるで闘牛の牛が赤い布に突っ込んで来るようにいきなり突っ込んで来たのだ!!
(やべぇ! こんな図体の奴に突っ込まれたら100パーセント死ねる!)
ナチェが「ドンちゃんやめてっ!!」と叫ぶが聞こえてないのか、無視をしているのかで止まらない。
死因、グリフォンを罵倒して激昂させた事による自爆。
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