01_04:アジャイルとは

 さて、人の歴史が進むようにシステムの歴史も変遷を繰り返してきました。

 『やり方フレームーワーク』が存在するのは、こうした変遷に対応するためでもあります。


 ではアジャイルとはなぜ必要とされたのか。


 これは『大規模な単一パッケージシステム』から『小規模なシステムの集まり』へ、開発単位がシフトしていったからです。



 例えて言うならガラケーからスマートフォンへの変遷が近いのですが……。

 昨今『ガラケーってなんぞ』って人もいるし、『クルクルピッピ』なんて30代でも通じるか怪しいですね。



 なので少し形態は異なりますが、スマートフォンで説明を試みます。


 統合制御オペレーティングを行うシステム、つまりAndroidやiOSは大規模な単一パッケージです。

 これらは電話、通信、データベース機能などを備えています。


 本来はチャットや写真編集ツールも盛りたいところですが、それは個々にインストールするアプリケーションが担います。



 つまり『小規模なシステム』を集合させて、お手元の『ユニークなスマートフォンが完成している』というわけです。


 芋煮会を開いて、3万食一気に作ってたのを10人前に小分けしたみたいなノリですね。






 さて、ここまで説明してお気づきの方もいるかもしれません。


『俺は3万食の芋煮だいちょうへんが作りたいのに、なんで10食分の芋煮ちいさくぶんかつをしなきゃいかんのか』


 興味を失った方は、そのまま3万食の芋煮ウォーターフォール・モデルで取組んでも構いません。

 先述の通り、利点は『全てに見通しが立つ』ことです。


 大長編対して、走り出したいなら、もはや読む意味も価値もありません。




 ここで対象とするのは、私のように『長編が書きたい』けど、『それでは堪え切らない人』です。




 ただし前述の通り『全体の完全な見通しが立たないフレームワーク』です。

 そもそもAgileアジャイルの意味が『機敏』や『頭の回転の早い』という意味ですからね。速度重視の仕組みなのです。



 例えば『勇者が旅立つ』から『魔王を倒す』というイベントを用意します。

 最初期段階では『勇者がたどる過程』がのがアジャイルです。


 本当に『苦難が3つぐらい』というざっくりした事しか決めていないのです。


 ただし『最初から全てを作り込まない』でないだけで、たどり着くゴールはウォーターフォールと一緒です。




「こんなんで本当に行けるのか?」


 全然いけます。現に拙作、女神のエルフは旅をする(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883320801)はこのフレームワークで執筆しています。

 というかアジャイルというの中に方法論がたくさんあって、そのうち1つが長編に対応可能というだけの話です。



「出来るか心配なんだけど?」


 ここで心配して足止めする方は何も生み出せません。創作者はいつだって傷つきながら産み出して行くものを指す言葉なのですから。

 手を動かさない者に、このテキストは全く意味を成さないでしょう。

 ですが『どうしても前に進みたい』けど、『後押しが欲しい』のならば十分にお応えする準備があります!



「わたしにもできますか?」

 正直向き不向きはありますから、やってみて判断してください。私はこれが『大正解』だと思っているに過ぎませんからね。

 つまるところあなたにとって大正解……かも知れないというだけの話です。


 ですがアジャイルの考え方自体が『連載』向きなので非常にオススメしますよ!






 さて、ここでアジャイルに関する公約マニフェストを見ていきましょう。

>> http://www.agilemanifesto.org/


まずアジャイルには4つの価値があり、それを言い換えると次のようになります。


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  ・プロセスやツールよりも、著者と読者の相互作用

  ・包括的な設定集よりも、実際書き出したテキスト

  ・著者の願望よりも、物語世界との協調

  ・計画の順守よりも、変化への対応

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 前者に意味も価値もあるが、より比重を置くのは後者です。

 スプリング・モデルのいいとこ取りみたいな宣言ですね。


 カッチリ決めたい人は拒絶反応が出るタイプの考え方ですが、連載には寧ろ向いている考え方でもあります。


 連載って、どうしても書いている内に方向が変わっていってしまいますからね。






 続いて12の法則について見ていきましょう。もちろん言い換えていますのでご注意くださいね。

>> http://www.agilemanifesto.org/principles.html



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  ・もっとも重要なのは読者が満足すること。初期から継続的に、価値ある物語をリリースすること。

  ・終盤での思いつきも受け入れること。アジャイルのプロセスは読者の競争力(≒期待度)を高めるためにある。

  ・数日~数週間の単位で頻繁にリリースすること。リリース間隔は短い方が良い。

  ・執筆中、毎日、著者と読者が共にあること。つまり独りよがりではないこと。

  ・やる気を重視して執筆体制を構成すること。読者も著者の執筆を信じサポートすること。

  ・2者以上での執筆体制を取る場合、情報伝達は会話でした方がいい。

  ・最も重要な進捗尺度は、リリースした物語そのもの。

  ・アジャイルのプロセスは継続的な執筆を促進する。つまり読者や著者は一定のペースで読み書きを保つことができる。

  ・技術や文章力、語彙力を高める意識が、より俊敏Agileさを高める。

  ・「人力作業で行う作業を省力化する工夫」が重要。

  ・関係者が自律的に協調して動くほうが、パフォーマンスが高い。

  ・定期的な『振り返り』により、執筆体制のパフォーマンスを高めるようにすること。

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 ちなみにすでにお分かりかとは思いますが『読者』とは『作者』も含みます。

 というより物語を一番最初に味わうのは作者なので、自身も楽しまねばいいものは出来ません。


 この点だけ重々注意して次へ進みましょう。

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