第15話 伏線を張る
スタート:英検三級を受けることになったよしこさん
大義名分:大切な自分の豆腐屋を守るため
途中 :豆腐屋は何としても私が守る!
???
伏線
結末 :不合格
その後A:それでも、悪いことばかりではなかった、きっと意味があった。
その後B:その他驚くようなストーリー展開
せっかく英検3級なので、面接の試験管とどこかで会っていることにしましょう。ただの出会いでは面白くなさそうですよね、どうすれば非日常的な出会いを作れるでしょうか。
真面目で正義感の強いよしこさん。そんなよしこさんだからこそできるすごいことはどんなことがあるでしょうか?
よしこさんが、線路に飛び込んでまでして、何かを助けた。
これは命を賭けての行動、そしてせっかくならその助けたものは人では普通です。どうせなら、
「猫」だった。
これにより、よしこさんは駅員にひどく怒られる、どうせなら電車も止めてしまいましょう。誰かが非常ボタンを押すことにより電車は遅延、みんなブーイングの嵐、たかが猫のために……。しかもそのために、よしこさんは「馬でも受かる英検3級合格講座」を受けるチャンスを逃してしまう……など。強力なアンチテーゼを打ち出しましょう、行き過ぎで構いません、どんどんよしこさんを追い込んで行くのです、大丈夫読者はきっと味方をしてくれます。
そこで、知らない男がその様子をみています。読者だけがそのことを知っています。その時はその男のことは、特徴的な行動や、ふるまいを述べるだけにしておきましょう。
またもう一つ伏線を張っておきましょう。これは後ほど述べます。よしこさんは日頃の様子をブログに書きます。今日の出来事、豆腐屋の素晴らしさ、豆腐料理を使ったヘルシーレシピ、今後展開したいと思っているインスタグラムを利用した、若い世代向けの豆腐加工食品の販売に関するビジネスプランなど。そして、この「ブログに書く」という行為を利用して、よしこさんの気持ちを表現させてあげましょう。
それをみてよく反応するユーザーがいます。ペンネーム「キラ」。
「僕は今、日本から遠く離れたところにいますぅ。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
寂しい僕によしこさんのブログは懐かしい日本の豆腐のことを思い出させてくれますぅ(´ε` )ポェ 」
変なの、と思いながらも、よしこさんはよしこさんの頑張りに支えられている人もいることを知ります。
さて、猫を助けた場面をみた男を試験官として持ってくるわけですが、そこで普通に二次試験の面接で出会う、だけでは少しアクセントが足りません。どうすればよいでしょうか。
こんなのはどうでしょう。
父「よしこ、ところで面接の方は大丈夫か?」
よしこ「面接? 何それ?」
そうです、よしこさんは面接があることを知らなかったのです。当然対策も何もしていません。絶体絶命のピンチです。でもよしこさんはめげません。
よしこ「大丈夫、所詮人間と人間のやりとりでしょ、英語なんて言葉なんだ、本気を出せば誰でもできる! って誰かが言ってたし」
これで合格してしまうなら、もう一体何の試験なのかわかりません。ともあれよしこさんは二次試験の面接に向かいます。もちろん一言も英語は聞き取れません、しゃべることもできません。そんな時に試験官がこんなことを言います。
試験官「Why do you study English?」
よしこ「すみません、もう諦めますので日本語で言ってくれませんか?」
試験官はうなずきます
試験官「あなたが英語を勉強する理由はなんですか?」
よしこさんはうつむき、少し考えます。そして、力強くこういいます。
よしこ「大切なものを守りたいからです」
試験官「それはあなたがあの時、命を賭けてまで、見ず知らずの猫を救ったようにですか?」
よしこさんははっとします。まさか、あの時のことを見ていた人とは思わなかったからです。
試験官「私は感動しました。あなたのような人がまだ日本にいたなんて」
試験官「Where there's a will, there's a way. あなたの思いはきっと伝わりますよ」
ここでよしこさんは今までの思いが頭を過ぎります。大好きなおじいさん、頼りにしてくれるおばさん、憎きドラ息子、一生懸命頑張りながらも、全く手応えが無かった英検、時代の流れとともに豆腐屋を求める人がいなくなっていったこと、そして絶望的な今の状況。思わず泣き出してしまいます。強力な、よしこさんんの中でのアンチテーゼです。
それは今までぐっとこらえていたサツキが堰を切ったように泣き出すように。よしこさんは今まで張り詰めていた糸が一気に切れてしまったのです。
そのあと、合格発表ですが、もちろん結果は不合格。
でもよしこさんは思います。この一ヶ月、一生懸命やりきった。色々なことがあった、出会いがあった、そして一生懸命頑張っていれば必ず誰か見ていてくれることを知った。それはきっとこれからの人生でかけがえのない財産となるに違いない。大好きな吉村屋は救えなかった、時代の流れにはどうしても逆らえなかった。でも新しい道を切り開いて行くしかない、そう思った。ここまでが結末のところですね。
これで終わりでもいいかもしれませんが、どうせなら、もうひとひねりしてしまいましょう。
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