第2話 アクセントとサスペンジョン

 このお話の最初、早速監督はジャブを入れて来ます。

 最初の場面、引っ越しのために沢山の荷物を乗せた車に乗る大人の男性と、キャラメルを分け合う子ども二人。

 もし何も考えずにこのシーンを作るのだとしたら、ただ単に車を走らせるシーン、外の風景、そして近くを走る人に子どもたちが「おーい」と言って終わらせることもできたでしょう。

 しかし、そうではありません。監督は何をしたでしょうか。

「メイ、隠れて!」

 その声に二人は体を縮ませ、隠れます。しばらくした後、顔をだし

「おまわりさんじゃなかった、おーい!」

 と手を振ります。

 この何てことのないシーンですが、これが「アクセント」となっているのです。

 なんてことのない日常を、少し色をつける効果となっています。

 また、一見のどかな風景から、突然「隠れて!」と言うことで、見ている方は

 ……何が起きた? ……

 とはっとさせられる訳です。この読者の心配な気持ちを作り出すことをここでは「サスペンジョンが効いている」と表現します。これがあることで読者は不安な気持ちになり、内容に惹きつけられるのです。サスペンジョンは大事な技法となってきます。私たちは日常で確かに安定を望みます。しかし、小説などのストーリーの世界では読者が安心をしたら、そこでおしまい、読者は安心してその先を読んでくれないかもしれないのです。

 なので、常にどこか落ち着かない、安心しない状況を作ることで読者を引き付ける、この状態が「サスペンジョンが効いている」状態なのです。

 カリオストロの城であれば、ここで一発ドンパチが始まるのかもしれませんが、これはとなりのトトロ。おまわりさんじゃなかった、と手を振る姿に私たちはほっと胸を撫で下ろすのです。


 この後、家族は家に着き、引っ越しの準備を始めます。ここで「マックロクロスケ」から「ススワタリ」などが登場することにより、ここはどうやら不思議な事がこの後起こりそうな予感をさせていきます。


 次に注目すべきは、病院のワンシーン。何気ない一言に、私たちが参考にすべき驚くほど沢山のテクニックが隠されています。

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