第3話 スマートな脚色「さりげない状況説明」

 病院のワンシーン。お母さんに会いに来た子どもたちのシーンがあります。

 母「いらっしゃい」

 サツキ「今日田植え休みなの」

 母「そう」

 メイ「○○○◯」


 ここでメイがどのようなセリフを言ったか覚えているでしょうか。


 正解はこうです


 メイ「お父さん先生とお話してる!」


 このやりとり、少し気になりませんか?

 言葉のやりとりが不自然です。なぜなら、お母さんはお父さんの事なんて聞いていないし、お父さんの今の状況が気になるような会話のやりとりでもありません。この一言、なぜここに入って来たのでしょうか、そしてどんな意味があるのでしょうか。

 映像の場合、小説と違って、状況描写が難しいといえます。小説であれば、


 父が今の病状を医師から説明を受けている一方、サツキとメイは母の元へ飛んで行った。


 などの一文は決して不自然ではありません。しかし、映像の場合はそういった説明文を入れるのは得意ではありません、少し不自然に感じられてしまうからです。なので、ここで敢えてメイにこのセリフを話させることにより、今の病気は何か説明が要るものなのだ、そして父がここにいないのは不自然なことではないのだ、ということを示す効果を持っています。そしてこれをメイという小さい女の子が言うことで、少し不自然さを軽減させてくれています。こういったさりげない一文を主人公に話させることにより、今の状況をより盛り上げる事ができる事があります。

 

 次は学校でのワンシーンです。このシーンはある意味今回のテーマ、「基礎筆力」の観点で言えば、最も多くの技法がちりばめられているシーンです。このシーンの技法を自分のものに出来れば、明日からの小説構成が変わります。早速掘り下げてみましょう。


 

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