第13話 ストーリーを作ってみよう

 さっそく実践です。


 今思い付きでこんなテーマを考えてみました。


「ハツラツよしこさん、英検三級を受ける」


 このテーマを膨らませてみましょう。

 と言ってもこのテーマ、未知なる生物……的なテーマよりはるかに膨らませるのは難しそうです。順を追って行きます。


 まず大まかな軸となる方向性、それは


「よしこさんが英検三級を受ける」


 で良さそうです。それにこれを変えてしまうのはルール違反でもあります。

 さてここからですが、このテーマ、何もしなければ全く面白みがありません。どうすればよいでしょうか。まず、この行動自体に「大義名分」を与えてあげましょう。一種の「動機」です。

 

 何故英検三級に挑むのか。


……思いついたから……


 ではドラマは生まれません。


……先生に受けろと言われたから……


 これも今ひとつピンときません。その先生が、憧れの先生で、これにより壮大な青春恋愛ストーリーが始まるならまだテーマとして使えるかもしれませんが。

 ではこんなのはどうでしょう。


「世界を救うため」

 または

「人の命を救うため」


 ここまで来れば英検三級を受ける、強い動機にはなり得そうです。

 しかし、その現実とのギャップがあまりにも大きすぎて、うまく繋げるのは難しそうです。少なくとも自分の発想力ではできません。

 自分がもし作るとしたら、このような感じにするのがやっとです。


「大切なものを守りたいから」


タイトル:ハツラツよしこさん、英検三級を受ける

〜受ける理由、それは大切なものを守りたいから〜  

 

 よしこさんは老舗豆腐屋、吉村屋3代目の娘、家業を手伝いながらアラサーを迎えようとしている。しかし時代の流れは今や豆腐屋を必要としていなかった。経営は傾き、さらにある時、地元銀行頭取のドラ息子である英留(える)が父親の出張を良いことにずけずけとよしこさんの豆腐屋にやってきた。そしてここの融資を打ち切ると言い始める。英留は中学時代、正義感の強いよしこさんに事あるたびにボコボコにされており、今でもよしこさんを恨んでいる。今でも二人は犬猿の仲だった。

「本当に打ち切るっていうの?」

「もちろんだ。どうしてもっていうなら」

「言うなら?」

「そうだな、英検三級でも受かったら考えてやろう」

よしこさんはそんな突拍子もない提案にも動じなかった。

「いいわよ、やってやるわ。約束よ、合格したら考えてくれるのね」

父は慌てた。それもそのはず、よしこさんは英語が大の苦手で、知っている単語はイエス、ノー、アイムソーリーだけだった。一時ヒゲソーリーも英語だと思っていたほどだったのだ。

 とにもかくにもよしこさんの英検三級合格への戦いは今、幕を開けたのでした。


 ちょっと無理があるかもしれませんが、脚色次第では逆にそのギャップが作品を引き立ててくれるかもしれません。


 無理を少しでも現実に近づけるためには、今回のような「思いつき人間」や「やりたい放題人間」の存在が役に立ちます。通常なら時間をかけて、会議を経て決められるような事実を、上記のような主人公を登場させることにより、一気にぐっと作者の意図する方向へ持って行くことができます。


 続いて、先におおまかな結末も用意しておきましょう。

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