第8話 主人公は「大義名分」を勝ち取れ!
いよいよクライマックスのシーンに入ります。
まず始めにストーリーをおさらいします。一言でいうと、
メイがお母さんにとうもころしを渡しに行こうとして、迷子になり、それを未知の生物の力を借りて助ける。
二度目になりますが、これだけ聞いても全く面白みがありません。
しかしこのクライマックスのシーンには驚くほどの技法が数え切れないほど詰め込まれ、それにより壮大なスケールへと展開されていきます。
まず、スタート。メイが夕方に一人でお母さんのところに行こうとする。これだけ聞くと、その行動に対し、共感できない点が多々あるはずです。
何で行くの? 今から? こんな時間に? 一人で? 迷子になるのは当たり前じゃない、迷子になったって自分のせいでしょ?
……やめればいいのに。
こうなりませんか? こうなってしまった瞬間、読者はこの先のストーリーに共感できません。全てが色を失ってしまうのです。
しかし、ここではこうなりません。何故でしょうか。
それは今までの流れ、ホップステップジャンプ、があるからに他なりません。それまではただ単にお母さんの退院の延期をごねていたメイ。それがサツキの嗚咽をもらすシーンを見て、これはただごとじゃない、もうこうしてはいられない、サツキの泣きじゃくる姿はメイにそう一念発起させるに十分なほど影響があったのです。これにより、クライマックスのスタートであり、且つ最も重要な「メイの出発」に大義名分ができたのです。
ちなみに小説とは少し離れますが、このあたりから徐々に「暗く」なってきます。この描写が実によくできています。顔に影がかかるようになり、少しずつ空が暗くなってきます。影は次第に長くなり、やがて都市伝説にもなるように影が無くなってしまいます。これは読者にさりげなく「タイムリミット」を知らせています。ただ迷子になるにしても、日中ではそこまで不安にはなりませんが、この徐々に「暗く」なる描写のため、実に素晴らしくサスペンジョンが効いたシーンとなっていきます。しかもすぐには暗くなりません。ちょっとずつ、ちょっとずつシーンが変わるごとに夕日が沈みそうになり、暗くなって行くところが、蛇の生殺しのように読者は少しずつ、しかし確実にサスペンジョンをしかけられていくのです。
私の作品にはなりますが、「オルタナ」のテーマはまさにタイムリミット。24時間以内に問題が解決できなければみな死ぬ、というテーマですが、どのようにすれば、この緊迫感を出せるか非常に悩みました。単純にデジタル時計の時間が減り、最後は警告のアラームが鳴る、しかもそのアラームは読者だけが知っている、以前実際にリミットを迎えて死んだ者にのみが聞いたことある冒頭の警告アラームを持ってくる、という手法をとりました。それ以外にももっと考えれば、良い表現があったのかもしれません。何か良い案があればぜひ応援コメントなどで教えて頂ければ幸いです。
さて、本題に戻ります。クライマックスシーンへと突入する前、ばあちゃんがとある見逃せないセリフを述べます。
サツキ「あの子、お母さんの病院に行ったんじゃないかしら」
ばあちゃん「七国山の病院か? ○○○!」
一体何だったでしょうか? 覚えていますか?
このセリフは、とある重要なテクニックが隠されています。次の章で。
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