第18話 今の気持ち

「そんなわけで、俺も自分で話しててなんだそりゃって思うけどさ、異世界だの勇者だのって、俺はそれ自体は信じることにしたんだ。」


 昼休みに俺は、琴寄と2人で話をしている。


 最初にユキメが学校に来たときを始め、異世界騒動を隠そうとする俺を琴寄は事情を知らずにそれとなく助けてくれている。


 普通ならこんなこと人には話せないが、琴寄なら全部話した方がいいと思った。それだけ信頼できる奴だ。


「はあ?」


 琴寄の第一声は予想外の言葉、というか呆れ声だった。


「なんか、居住らしくないね」


「そ、そうか?まあ、ユキメにひっかきまわされて冷静ではなかったとは思うけど」


 琴寄の指摘はするどくて、大抵当たっている。


「別に居住の話を疑ってるわけじゃないよ。実際机から人がでてきたり、変な生き物がいたり、鏡がテレビ電話になったりしたんでしょ」


 表現はともかく、俺の話を信じてくれるのは助かる。まずは信じてくれないと相談にならないからな。


 琴寄が言葉を続ける。


「でも、異世界とか勇者とか、それを信じるって何?何を信じたの。信じたから何なの。それで居住の行動が何か変わるの?」


 あれ?確かに言われてみれば、俺は何をどこまで信じることにしたんだっけ。


 いつの間にか自分の中で、全部信じたことになっている気がする。


 見せられたのは超常的な力・・・ユキメの言う「魔法」と肉まんの存在だけで、後の異世界だの勇者だのっていうのは話で聞いただけだ。


 つまりそれ以外は信じるに値しない?


 いや、違うだろう。そもそも俺が異世界の話を信じてみようと最初に思ったのは、あの展望台でユキメの真剣な話を聞いて、こいつは信じていいと思ったからだ。


 つまり、俺は異世界の話を信じたんじゃなくて、ユキメを信用できると思ったんだ。


 ただし、信用できるのはユキメの「人格」だけだ。ユキメの「頭の良さ」とか「判断力」とかは信用できる要素がない。あのとぼけた娘が何か騙されてないかとか、ユキメを利用して俺になにか悪いことさせようとしていないかとか、そういった問題は残る。


「何か思うところでもあった?」


 黙って考え込む俺をしばらく待ってくれたのだろう。いつのまにか琴寄は串だんごを食べ始めている。


「ああ、ちょっと冷静になって頭の中整理できたかも」


「で、どうしたいの」


 琴寄はだんごをほうばりながら質問をしてくる。


「どうしたいって。。」


「現状何か問題があって、どうにかしたいから相談してきたんじゃないの?」


 まあ確かに困ってるのはそうだ。


「現状はどうにもならないと思うからさ、とにかく俺としては大事おおごとにしたくない。だから、それを手伝って貰えると助かる」


 琴寄は「ふーん」と言って立ち上がった。


「まあいいけど。この先どうするのか考えた方がいいと思うよ」


 琴寄の言葉はよく確信を突く。

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