第34話
そこから先はあまり覚えてはいない。
気が付いたらベンチにいて試合は最終回だ。
しかもツーアウトランナーなしバッターは九番の美雨。
カウントはツーストライクワンボール。電光掲示板のHのところにはゼロと表示されている。つまり神崎がまだ一本もヒットを打たれていないことに気が付いた。
ストライクアウト!!
試合が終わった。
6対0。
ノーヒットノーランの記録を打ち立てられ投打に完敗した。
集合してベンチを明け渡す間先輩たちは静かだった。圧倒的な力の差を肌で感じて悔しいという気持ちにもなれなかった。
明日もあるのかそう思っただけで体が重くなる。
「すいませんでした。私のせいで……」
ミーティングが始まってすぐ久留美はみんなに謝った。
この試合を勝つことが出来れば優勝が現実的になっていたかもしれない。そう考えただけで目から涙があふれてくる。
一年生の久留美が先輩たちの足を引っ張ってしまった。試合が終って冷静になった途端自分がやってしまったことを悔やんだ。
コンクリートに落ちる涙がとまらないのだ。
「久留美のせいじゃない。むしろよく五回まで踏ん張ってくれた。それまでに打つことが出来なかった私たちの責任もある」
真咲は背中をポンと叩いて励ましてくれた。それが久留美にとって救いでもあったが罪悪感を増加させることにもなった。
「みんなこの試合は負けた。でもリーグ戦は勝ち点を取ればいい。まだ明日がある切り替えて明日勝てばいいさ」
真咲はそう言ってみんなを鼓舞した。先輩たちも納得してミーティングを終えたが久留美はしばらくそこを動くことが出来なかった。
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