第26話


「咲坂、創世大のバッティングに腰抜かさないようにね」


 りかこがそういった瞬間快音が響いて白球が右中間を割った、バッターランナーはあっという間に二塁を陥れる。


 続くバッターが初球を難なく送りバントを成功させワンアウト三塁。ここからクリーンアップの登場だ。


 三番に構えるのはキャプテンの指宿。


 重心を低く落としバットを頭より高い位置で構えたフォームは体のブレを感じさせない、下半身が安定しているからこそできることだ。


「あの人足を上げずに打つんですね」


 久留美がりかこに尋ねるとりかこはうなずいた。


「あのバッターはノーステップ打法の使い手なのよ。すべての球種、スピードに対応できる技を持っている」


 カウントワンストライクツーボールからの四球目は低めの変化球だった。縦に落ちるスライダーで指宿の体が前につんのめる。


 普通の打者なら空振りするか手首をこねてひっかけるところだが指宿は違った。


 咄嗟に軸足を浮かせ体全体を前に移動させると左手首が返ってしまうのを防いだまま振り切った。


「うまい!!」


 誰もが思わず声を上げるワンバウンドになるギリギリで低めのボールをセンターの前に運んだ。


 わずか十球足らずで一点を先制した。


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