第42話
リーグ戦の疲れをとるための十日間のオフ期間が終わり久留美たちはいつもの河川敷のグラウンドに集合した。
スマホの時刻を確認する。もう三限が終わっているころだからそろそろだ。
「こ、こんにちは!!」
あんこの元気な声が響いて久留美の右耳がキーンとなる。
颯爽と登場した菜穂はしっかりユニフォーム姿で昔の面影を残している。
さすがに元プロ野球選手だ。帽子の上にかかった日光を遮断するスポーツ用のサングラスがすごくかっこよく見える。
「集合!!」
真咲の掛け声で小さな輪になる。
「監督さっそくなんですが……」
「ちょっとまって、やっぱり監督ってのはやめてくれる。なんか偉そうでいやだな。普段通り先生でいいよ」
真咲は改めて言い直すと今日の練習メニューを説明した。アップしてノック、バッティング、ランニングトレーニング、クールダウン。この流れでいいのか承諾をとると菜穂は頷いた。
アップと言っても野球の基本動作ができるように体を動かし、最後に短距離ダッシュをして体のキレをつくる。菜穂はなにも言わずアップを見ていた。キャッチボールが終わりいよいよノックが始まる。
ノックバットを持つ蔵田先生はキャッチャーの真咲に「すごく楽しみと」言って笑顔を見せている。
真咲が「内野七、五」(オールファースト七、ゲッツー五)と内野に呼びかけ何スイングかしたあとサードに打った。
正面に飛んだ打球はまるでバッターが打ち返したかのような回転がかかる。眞子のグラブは打球に少し押されながらゴロをさばき、ショート、セカンド、ファーストと流れるようにノックを打っていく。
菜穂は二周目から打球を右にふった。三周目は左、四周目は正面、五周目は「ショートバウンドでさばきなさい」と言って打球を野手がちょうどショートバウンドでさばける位置に打球を落とした。
さらに六周目はなんとバットのヘッドを下げながら地を這うゴロを打った。普通ノックでゴロを打つときはバットのヘッドを立てるのだがこの人はレベルスイングに近い軌道でボールを打つ。ノックバットは普通のバットより長いためどうしてもゴロを打とうとすると必要以上のダウンスイングになりがちだが蔵田先生はノックバットの長さをグリップを前に走らせることで克服してより実戦に近い打球を打っている。
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