第7話 ただいま、おかえりなさい
エリーさんの凄まじい回復魔法の魔力で、たちまち怪我が治っていきますが、立とうとしても立てません。
「立とうとしないでください!大量出血してるんですから!…リオルさんならまだ気を失ってはいますが生きているのでご安心ください…」
そうでした…どうりでまだ意識が朦朧としているはずです…
「お二人共よくぞ生きていました…傷が治り次第ここから離れるのでご安心ください」
「ブレイさんも…敵に攻撃を受けています…斬られたわけではないので致命傷ではないと思いますが…」
「あまり喋らないでください…と言いたいですが教えていただきありがとうございます。ノヴァ、頑張ってください」
ノヴァさんの方を見ると、魔法兵士の攻撃を片方の大剣で防ぎつつ、もう一本でフルーホと戦っていました。
「隙が大きいんだよぉぉ!!そんなんじゃそこでくたばってるやつみたいになっちゃうよぉぉぉ!!?こーんな風にさぁぁぁ!!」
ノヴァさんが大きく振りかぶったあと心臓に向かって刺そうとするフルーホ。ですがノヴァさんはあろうことか大剣を投げ捨て、ポケットから短剣を取り出し、フルーホの腕をかわして、切り落としました。
「アタイの腕がぁぁぁ!!ゆるさなー」
「『壁細工』短剣術及びクナイ術混合奥義『四肢滅裂』」
ノヴァさんは見えない壁にフルーホを蹴りつけ、クナイで四肢を留め、短剣で素早く残りの腕と足を切り落としました。
「アタイの…あぁぁぁ!!!」
「本当は最初にこうすりゃ早いんだけどよ…俺を初めてパーティに誘ってくれたあのアホがあんな姿にされるのを見てよぉ、単純にてめぇを処理できるわけねぇよなぁ、朽ち果て、地獄に落ちやがれ!『ゴッドパウンド』!!」
ノヴァさんの手元に四メートル以上はありそうな神々しいハンマーが現れ、フルーホを、魔法兵士達を叩き潰しました。
ハンマーが消えるとそこにはハンマーで叩いた後もなく、普通の道と倒れているブレイさんだけが残っていました。
「終わったな…辺りに俺ら以外の魔力もねぇ」
「そうですね、処理終わりに申し訳無いのですがブレイさんをこちらまで運んでくださいませんか?」
「分かってる…って大した装備してねぇのに重いなこいつ!どんだけ筋肉あんだよ…」
「当たり前だ、日々鍛錬をしているからな」
「てめぇ起きてんのかよ!起きてんならてめぇで歩け!」
こうして、ブレイさんやノヴァさんのおかげでこの小さな戦争に幕が閉じ、ベルタルタ国の人々はひとまず安心をしたのでした…
その後、私達は街に帰るのですが、私はエリーさんに、リオルはノヴァさんにお姫様抱っこをされて帰ることになりました。
「リオル~生きてますか~?」
「…ちょっと黙ってて。あんな恥ずかしいこと言っといて生きてたから恥で死にそう」
手で顔を抑えて耳まで真っ赤になっているリオル。可愛らしいです。
「そんな恥ずかしいことを言っていたのか、なんと言っていたんだ?」
「ごめんね…博打に行く約束…」
「言うなぁぁ!!」
「ジタバタすんな!…ったく死にかけだったやつらがこんなにも元気になる魔法なんてあったか?」
「ふふっ、元気なことはとても良いことではありませんか、…それにしてもミラさん、本当に良いのですか?その左目…」
そう、私の左目はフルーホに切られ、エリーさんによって傷は治りましたが、景色を見ることができなくなってしまったのです。
目を開けているという感覚はあるのですが左の景色は闇のように真っ暗です。
「もちろん良くは無いです。ですが戦う以上何かを失うことは避けられませんし、エリーさんの力でも治せないのであれば私はこれを受け入れるだけです」
この傷は私の罪に対する罰。きっとそうなのです。私の力不足でブレイさんやリオルを危険な目に遭わせ、セーラさんを独りにさせようとした自分への罰なのだと…
「もうすぐ街につくな…おっ、ありゃセーラか」
こちらに気づいた時セーラさんは私たちの所に駆け寄ってきました。
「おかえりなさい…そしてごめんなさい…」
セーラさんはボロボロと涙をこぼし泣いていました。
「何故謝る?こうして皆無事だったではないか」
「ノヴァさんとエリーさんは向かってくれましたがセーラはこうして待つことしか出来なくて…」
「そりゃお前が超息切れで街まで帰ってきてたからあの後走って戻れって言う方がおかしいだろ。逆に考えてみろ、お前がノロノロ帰ってきてたらこいつら死んでたぞ。お前はお前のやるべき事をやったんだからそれでいいだろ。それでもウジウジ言いてぇなら強くなりやがれ」
「強く…なれるのでしょうか…?」
「きっと…いえ絶対なれますよ、ノヴァも昔は泣き虫でよく魔物から泣いて逃げ帰って来たこともありましたし…ね?」
「んなことねーよ!お前らも笑ってんじゃねー!」
その夜、家まで運んで貰った私達はセーラさんにご飯を作ってもらい、ご飯食べた後セーラさん達は家に帰りました。
そして私の寝室では今日、隣にリオルが寝ていました。
「やっぱりクローゼットじゃないと落ち着かないわね…ミラ、どうしてもなの?」
「ええ、どうしてもです。今日はミラとお話をしたいので」
「話ねぇ…どうせ今日のことを謝りたいとかそういうのでしょ?それならむしろ私が謝りたいわよ。あんたの左目以上に失ったものなんて無いでしょ?…あとブレイの武器か…とにかく私なんて完治してるんだから気にしないの。あと…」
「あと?」
「博打、明日行くわよ」
「えっ」
あんなに博打のことを嫌がっていましたのに…今までも博打関係の約束は絶対忘れたふりしてすっぽかしていましたのに…
「その代わり!あんたはやらないこと。見てるだけ。いいわね?」
「いいですけど…」
「それじゃ明日は狩りしないで一日中街にいるから遅く起きてもいいわ、私もやりたいことあるし。おやすみ」
「おやすみなさーい」
私はこの時何も分かっていませんでした。
リオルが博打に行きたがらない理由を…
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