第11話 謝るって大切ですよね
ブレイさんのバーニングナックルにより今でも骸骨の破片が燃え盛っており、上がり続ける洞窟内の気温。当の本人は既に走って帰ってしまいました…
「どう…しましょう…このままでは‥」
既に倒れそうなセーラさん。私も蒸し暑くて脳が蕩けてしまいそうです…
とはいってもここまで歩いて一時間近く、走って帰っても三十分はかかります。
しかも洞窟内はサウナ状態。私とリオルはギリギリ…いや多分倒れます。そして倒れたら焼肉になってしまいます。さて、どうしましょう…
「とりあえずここの水…っていうかお湯くんで歩くわよ。ここにいたって誰も来ないし何も始まらないし」
「そうですね…セーラさん歩けます?」
「はい…」
私たちは来た道を歩き始めましたが…来た時よりも気温が上がっています。
例えるなら来た時がサウナで今が蒸し器です。肌がジリジリと焼けていくような感覚がします。
「これ…帰れるのかしら…」
「頑張りましょう!とは言いたいですけど…キツイですね…」
感覚的には数十分歩いた気がしましたが、出口が全く見える気がしません。
来た時にいたリザードマンは既にこんがりと焼けていて、普段でしたらすぐにでもかぶりつきたいですが、今はそんな気も起きないです。
体からは汗が止まらず、全身が濡れているはずなんですが冷たくならず、茹でられているような気分になってきました…
いつ倒れてもおかしくない状態でひたすら歩いていくと、冒険者のような人が見えました。
「見てくださいお二人共~冒険者の方が来てくれましたよ~」
「来てないから!あんた幻覚見始めたわね!?セーラ、ミラを叩くわよ」
「なんでですか~…ミラさんの言うとおり冒険者の皆さんがいっぱい…」
「あんたもか!…二人共歯ぁ食いしばりなさい!」
「「え?」」
スパァン!!と二回大きい音が響き、目が冴えたというか痛みで歪んでいた意識が元に戻った感覚がします。セーラさんも同じような感覚になっていると思いますが…
「痛いです…」
「倒れて焼肉になるよりマシだと思いなさい、ぶっちゃけ私も視界がぼやけてきてて意識あるかないかの境界線で歩いてるようなもんなんだから…」
「じゃあ今度は私がぶってあげましょうか?」
「絶対やだ!それなら壁に寄りかかって目を覚ました方がまだマシ!」
「えぇ…」
その後、さっきより歩くスピードをあげ、なんとか洞窟を出ることができました。
お昼に入ったのに外はもう夕方になっていて、服が濡れているので風がとても冷たいです…というかこれ透けて下着が見えているのでは…いや胸のところに鎧つけてますからそこは大丈夫ですけど…
「やーっと外に出れたー!さっさと町に帰ってお風呂入りましょ!あいつを探すのはそれからよ」
「ブレイさん…先に帰っていればいいですけど…」
町に帰る頃には日が暮れてしまい、凍えるような寒さになっていました。私たちはセーラさんと別れ、急いでお風呂に入りました。
元々一人用のお風呂のため少し窮屈でしたが、一秒でも早く入りたかったので仕方ありません。
お風呂から出てリザードマンの肉をあげるためにリオルと一緒にセーラさんの家に行くと玄関前にブレイさんが座っていました。
「あんた…色々言いたいことあるけどとりあえず…何してんの?」
「見ればわかるだろう、座っている」
「そういうことを聞きたいんじゃないのよ!なんでそこに座ってるかを聞いてんの!」
「そういうことか、セーラがここに座っててと珍しく声を荒げたから座っている。あいつが帰ってくるなり風呂に入って飯の準備を始めたから手伝うと言ったらこの様だ」
完全にブレイさんのせいじゃないですか…恐らくブレイさんは先に帰ってきていて(窓からの侵入)そこにセーラさんが帰ってきたがセーラさんは真っ先にお風呂に入ったのでブレイさんの顔は見れず、お風呂から上がってご飯の準備をしてたらブレイさんが現れて…といった感じだったのでしょうか。
…にしてもブレイさんまず謝りましょうよ…
「ブレイさん、洞窟を先に出て行ったことを私はもう気にしてないですけどセーラさんには謝りましょうよ、あとリオルも気にしてますし」
「なんだと?小生が先に帰ったからあいつは怒っていたのか?」
「それ以外何があるって言うのよ。とりあえず私たちはセーラに渡したいものがあるからそこどいてくれない?」
「ああ、だが今あいつは不機嫌だから気をつけたほうがいいぞ。いきなり矢が飛んでくるかもしれん」
「あんた普段どんだけセーラに迷惑かけてるのよ…」
ドアをノックするとセーラさんが出てきて、私たちには笑顔を見せてくれましたがブレイさんを見ると顔をムスっとさせたので不機嫌といえば不機嫌ですね…
家に上がらせてもらい、リザードマンのお肉をまずあげた後椅子に座って明日の話をするついでにブレイさんの話になりました。
「あの~そろそろブレイさんを許してあげてもいいんじゃないかな~って思うんですけど…」
「嫌です…!ブレイさんが…心の底から謝ってくれるまではあそこに座っていてもらいます…!」
何故でしょう…いつもどおりの話し方のはずですのにとても強い意志を感じます…
これ以上何かを言うと矢で撃たれそうな気がしますが相手はリオルではありません。
ここはひとつ賭けてみますか…
私は席を立って玄関へと向かいました。
「ちょっとミラ?もう帰るの?まだ話終わってないんだけどー」
「ちょっと待っててください!…ブレイさん、行きますよ」
「わかった。自分で行くから手を離してくれ」
ブレイさんを連れて行くとセーラさんは思いっきり嫌そうな顔をしています。
「なんで連れてきたんですか…?」
「ま、まぁお話を聞いてあげてください!ねぇブレイさん?」
「セーラ…その…なんだ…今日は洞窟に置いていって本当にすまなかった。次からは必ずおぬしを置いていかないようにする」
さぁどうでしょうか…?これで許してもらえなかったら最悪パーティメンバーが減ってしまう可能性もあるのですが…
「本当…ですね…?」
「ああ、この心臓に誓おう」
「なら…許します…」
なんだか重いような解決の仕方ですが…というかこんな事前にもあったような…
とにかく仲直りができてよかったです。
私たちはセーラさんに「おやすみなさい」と言って家に帰り、寝室に向かうと見たことのない、丈夫そうな弓が転がっていました。
手に取るととても軽く、扱いやすそうです。
「ブレイさんの弓でしょうか?にしては軽すぎですよね?」
「…ぷふっ!あいつ本当に不器用ね~」
「?どういうことですか?」
「その弓の下の部分見てみなさいよ」
よく見てみると「親愛なる友へ」の文字が。
ということは…私にくれるということなのでしょうか?
「貰っておきなさいよ、そして使ってあげなさい。少しはあんたの活躍も増えるでしょ」
「最後の一言は余計ですよ!…ですがあのブレイさんが造ったものです、きっと凄いものなんでしょうね~」
私は弓を武器置き場にしまったあと布団に入って寝ました…
そして翌日。貰った弓を早速使おうと家を出るとバッタリとブレイさんに会いました。
「ブレイさん!この弓ありがとうございます!大事に使わせていただきますね!」
「その弓はリオルに送った弓だぞ」
思わずその場に膝をついて崩れ落ちる私であった…
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