第10話

ネクロマンサー、それは死者や死霊を用いた術を使う者のことを言うそうです。


今では死者を操ることは魂と肉体への冒涜ということで数百年前の戦争以来禁止されている…と本には書いてありました。


「やつはこの先にいるだろう、小生達が操られることはないだろうが油断はするなよ」


「そうね、だけどなんでこんな所に来たのかしらね?ブレイが入った時にはそういう気配はあったの?」


「ないな、小生が来る途中に倒したリザードマンの中に操られていたやつはいなかった。それに相手はおそらく一体のみしか操れないのだろう、それがこいつというわけだ」


「じゃあそのネクロマンサーは今使う奴がいないってわけよね…じゃあパパッと行って倒して帰りましょ」


「そうですね、ですがネクロマンサーになんてどうやってなったのでしょう…」


私は気になりながらも奥に進みました。

すると多岐が流れている場所につき、滝の前には全身布で包まれた人(?)が祈っていました。おそらく屈んでいるので身長や体つきは分かりませんがおそらくネクロマンサーの方だと思います。


「魂が…大きな魂が消えたのは貴君らの仕業か…」


こちらに気づき、立ち上がると2mは超えていました。つけている仮面で顔は見えませんが声の低さから男性ということが伺えます。


「あんたネクロマンサーよね?ってかどうしてこんな所にいるのよ」


「それはこちらが聞きたいことだが…まぁいい、簡単なことだ…先程貴君らが倒した女王がいれば水、食料には困らん、それに死体があればここに来る輩も排除できるからな…さて、今度はこちらから質問だ。貴君らは何故ここに来た?」


「ここで繁殖したリザードマンが私たちの住んでる街に来てパニックになりかけたのよ、それでここのリザードマンの殲滅に来たってわけ」


「なるほどな…それにしてもやけに暑いとは思わんか?先程から徐々に気温が高くなってきているのだが…前に来た時はこんなことは無かったのだが…」


着ている布をパタパタと扇ぐ男の人。私たちはそこまで暑く感じませんが…


「多分…それならさっきものすごく熱かった所があったので…その影響かと…」


「熱かった所だと?そのような場所ここに来る途中まで無かったが…まさか貴君らがやったのではあるまいな?」


いや…やったのはあなたが使ってた死体の子分なんですけど…私がそう言いかけた時。


「これが答えだ!」


ブレイさんが熱気が凄い石を男の人に投げました。どこに隠し持っていたんでしょうか…というか熱くないんでしょうか…男の人も受け取っていましたけど…


「これは…熱した石か、これがどうかしたのか?」


「これはリザードマンがそこら中に吐いた炎が他の石を熱し、それに影響されて熱された石だ。おかげでここから数分戻ればサウナ必至だぞ」


「なんだと…だが待て、リザードマンが火を噴くなど聞いたことがないし見たことがないぞ」


「それはあんたが見たことも聞いたこともないだけでしょ。とにかくあんたにはここを出て行ってもらうわ」


「断る!我は村を追い出されたばかりの身なのだ!ここを出たら住むところがなくなってしまうだろうが!」


男の人が布をとるとやっと顔が見えました。

おっさんじゃないですか…しかも50近そうな髭がボーボーの…もっとこう…イケメンの方かと思ってたんですけど…


「なら実力行使だ、貴様を殺してでも出ていかせる!」


「やれるものならやってみろ!来い!我が最大の下僕、『カーススケルトン』!」


おっさんの足元から大きな骸骨が現れました。ですが洞窟はそこまで縦に大きくないので頭だけなんですけど…


「貴君らは頭だけかと思っただろう、だが弓兵ごとき、カーススケルトンの頭だけで十分だ!やれ!」


骸骨の頭に乗って調子に乗っていますね…ですが確かに私やリオルでは歯が立ちそうにないです。ですが私達の中には例外が…


「弓兵ごときだと?その言葉、あの世に行って後悔するがいい!弓兵が弓だけしか使えないと思うな!!」


骸骨の目から出る黒いビームを避けつつ接近するブレイさん。そして骸骨の目の前にまで来ました。


「弓兵が近くに来て何が出来る!ビームだけが攻撃と思うなよ!」


「燃え尽きろ!『バーニングナックル』!!」


ブレイさんの手には真っ青に燃えている炎が。

急に高まる洞窟内の温度。


「灰になれぇぇ!!」


ブレイさんが目に見えない速度で骸骨を殴ると

バァン!!といえ音を立てて骸骨が爆散して一つ一つの破片が燃え上がっていました。


そしておっさんの布にも炎は燃え移り、炎を消すためにゴロゴロ転がっていました。


「グワァァ!!火が!火がぁぁぁ!!」


「布を…外せばいいんじゃないんですか…?」


「きっと何かあるんでしょ、魔力が込められてるとか」


「というか何故あのおっさんは滝の中に入ろうとしないんでしょうか?」


私の言葉にハッとしたおっさんは滝の中に入りますが、炎は消えるどころか激しくなりました。


「簡単に消えるわけがなかろう、小生が出した炎だぞ」


理由はよく分かりませんが炎の温度は相当高いらしく、滝が沸騰し始めました。滝の勢いは弱いですがそれにしたって異常です。


「あっっっつい!!貴君は我を殺すなのか!?」


「そうだと言っただろう。…おい貴様、なぜ全裸なのだ…!!」


「あの布の下…裸だったんですか…」


布が全部燃えたのか滝から出てきたおっさんは全裸で、それを見たブレイさんの顔は真っ赤になり、セーラさんは顔を手で覆い隠しました。


「貴君が燃やしたのだろうが!どうしてくれー」


「小生の前から消えろぉぉぉ!!」


ブレイさんはおっさんの顔面を殴り飛ばし、おっさんは岩盤にぶつかった後滝に落ちていきました。


「はぁ…はぁ…穢らわしいものを見てしまった…」


「ブレイさんがこんなに慌てるのって珍しいですね〜」


「そうね、普段から魔物の〇玉見てそうなのに」


「魔物のそれと人間のそれとでは違うだろ!むしろおぬしらは何故普通に見れるんだ!?」


「そりゃあ…ねぇ?」


「はい、魔物の〇玉は滋養強壮にいいので〇玉剥ぎ取って売り捌いているんです。なので慣れているんですよ。〇玉なんて魔物だろうが人間だろうが〇玉の形にはほとんど変わらないですし」


しかもなかなか〇玉を剥ぎ取る人がいないため売るにも買うにも高価なんです。あのガレットさんもオークの〇玉を揚げ、塩で味付けしたものをたまに食べているとか。味までは聞いてないですけど…


「女とあろう者が〇玉〇玉と言うな!…とにかく目的は果たしたから帰るぞ」


「ですね…ですが帰れそうにないです…」


帰り道を見ると来た時よりも熱気がとんでもない事になっていました。もうサウナなんてレベルではありません。


「小生は走って帰る。ここにいても蒸し死ぬだけだからな!」


「1人だけ耐えれるからって逃げるんじゃないわよこの筋肉ダルマ!」


リオルの叫びも意味は無く、全力疾走で行ってしまったブレイさん。数秒後には見えなくなってしまいました。


「あの筋肉ダルマ…帰ったらアッツアツの風呂に入れたあと氷水ぶっかけてやる…」


洞窟内(体感温度42度超え)に取り残された私達。どうやって出ましょう…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る