第2話 ヒーラー始めました。

何言ってんのあんた?」という顔をするリオル。当然のことです、この町に住んでからずっとこの職業でしたから。


「今日の戦いで分かったのです、私に足りないのは回復魔法なのだと」


「いや…ミラに足りないものなんて他にもあるわよ?矢の命中率、筋力、お金の管理力とか…だいたいミラがヒーラーにならなくてもパーティを作ってヒーラーを仲間にすればいいじゃない。ほら、今日私の怪我治してくれたエリーとかいいんじゃない?」


「エリーさんはもうすでにパーティ組んでいます、しかもエリーさん以外にこの町にヒーラーいませんし…」


この町の人口は少なくはないのですが、ほとんどが農家や料理人などの職についており、私たちのようなモンスターを倒すための職業に就いている人はほとんどいないのです。しかもこの町付近に生息している魔物は弱く、ヒーラーはほとんど必要ないのです。


「だからってミラがヒーラーになる必要なんて…今日のことそんなに気にしてるの?」


「当然です、今日はリザードマンが二匹だけでしたのでなんとかなりましたが…リザードマン以上の魔物がこの町を攻めてきたら私はこの町、リオルさえ守ることができないと思います」


考えすぎかとは思いますが、明らかに異変は起きています…と自身なさげに言うとリオルは数秒固まってからため息をつき、私に軽く頭突きをしました。


「ったく…ミラがそこまで言うなら止めないわよ」


「ありがとうございます!」


私達は次の日の予定を決め、眠りにつくのでした。


次の日、職業を変えるために早速ギルドへと向かった私達。受付に行くと筋肉ムキムキのお兄さん、ガレットさんがいました。


「いらっしゃいミラちゃん!こうして僕に会いに来てくれたのは君がアーチャーになりに来た時以来かな!?」


ギルド内に響くような大きな声で話すお兄さん。職業がギルドの受付人なのが不思議です。


「そうですね、今日は職業をヒーラーに変えたくて来ました」


「ヒーラーかい!?ちょうど良かった!この町にはヒーラーが1人しかいなくてね!ハッハッハ!…でもいいのかい?この町に来てからずっとアーチャーだったじゃないか」


「はい、リオルときちんと話して決めたことですので」


「ハッハッハ!そうかそうか!なら良かった!」


お兄さんは転職するための資料を四枚用意して緑色の封筒に入れました。


「はい!これを記入して協会まで行ってくれ!きっとあの二人驚くと思うよ!」


「ありがとうございます、ではまた来ますね」


「たまにはクエストとか受けに来てくれよ!そっちの方が儲けるからね!ハッハッハ!」


ガレットさんは私がギルドから出るまで手を振ってくれました。


私達は資料に記入するため1度家に帰り、ヒーラーに転職するために資料を広げました。


「さて…まず一枚目は現在の職業と転職の理由の記載、二枚目は…特級職に必要なものなので書かなくていいですね、三枚目はヒーラーの立ち回り方のマニュアル、四枚目は回復系基本魔術の詠唱リスト…」


私がアーチャーになる時には三枚目にアーチャーの立ち回り方、四枚目は弓の使い方と種類が書いてありました。


「1枚しか書くものないわね、さっさと届けに行くわよ」


「そう急かさないでください…っと書けました!そういえば先程もそうでしたが、リオルがついて来る意味はあるのですか?」


「あるわよ、幼なじみが転職するんだもの、それともミラ、私がついてくるとまずいことでもあるの?」


ありませんよ、とキッパリ断ったあと協会に向かい、少し重く、大きな扉を開くとそこには真っ白なシスター服のエリーさんがいました。


エリーさんは大人っぽい方で、ここの協会のシスターをしており、毎朝早起きをしてはお菓子を作って協会に来る子供たちにお菓子をあげています。


町一番の美人さんで町の男性からは大人気なのです。


「リオルさんにミラさん、こんにちは」


掃除をしていたエリーさんは手を止めてこちらにペコリと挨拶をしてくれました。


「こんにちはエリー、ノヴァは出かけてるの?」


「いえ、地下で武器の手入れをしていますよ、呼んできましょうか?」


「うん、お願い。今日はミラが転職をするからノヴァがいないとできないし」


「ミラさんが転職ですか!?…まさかとは思いますが遊び人になるおつもりでは…」


「違います!ヒーラーです!」


「ヒーラーですか…それなら安心しました…ではノヴァを呼んできますね」


エリーさんが地下に向かい、しばらくするとエリーさんとノヴァさんが来ました。

ノヴァさんは所々破れた黒いシスター服を着ており、男っぽい性格をしています。

扱う武器は剣や斧、ハンマーなど幅広く扱える方です。

職業はシスター兼ウェポンマスターですが、元々はシスターでなかったとかそうでないとか…


「よぉお前ら、話は聞いたぜ。ミラが転職するってな…お前本気か?」


「本気です、そうしないとこの先リオルを守れませんから」


私はエリーさんに資料を渡すとさっと目を通して資料をノヴァさんに渡し、私の背中に手を当てました。


「では転職の魔法をかけますから肩の力を抜いてくださいね」


エリーさんは詠唱を始めると私の身体から何かが抜け、何かが入ってくるのを感じました。


「…これでおしまいです。お疲れ様でした♪これからのあなたのこれからの人生に神のご加護があらんことを」


「精進を怠るなよ、死神はいつも隣にいるということを忘れんな…ってこれ言わなきゃダメか?」


「ダメです、ただでさえあなたはシスターっぽくないんですから。あと前々から言っていましたが…」


ここにいるとノヴァさんに悪い気がするので私達は教会を出て早速町の外に出てみました。


「武器は変えないの?杖とかに変えればよかったのに」


「使い慣れたものの方がいいですから。…それにしても弓が重く感じますね、ヒーラーになって筋力が落ちたのでしょうか」


アーチャーの頃から耐久性の高い重めの弓と矢を使っていたので正直矢を引けるか怪しいです…


「なら今からでも町に帰って軽めの弓矢に変えてくる?」


「いえ!この弓は私の相棒ですから壊れてしまうまで変えません!私はヒーラーでありつつも高火力アタッカーでいたいのです!」


そんな私の意気込みに答えるように早速切れ味が悪そうなそうなナイフを持った毛がフサフサのワーウルフが現れました。


「さて、ヒーラーとなった私の初戦です!いきますよリオル!」


「ええ、でも無茶はしないで」


リオルはすぐさまにワーウルフの顔を撃ち抜いてしまいました…


「私の…ヒーラーとしての初戦が…」


「まぁ…私達遠距離専門だし、基本一撃で仕留めるからわざとでもなければ基本敵からの攻撃なんて受けないわね。でもいつ事故があるか分からないからその時は頼んだわよ」


「はい…」


その後もゴブリンやオークに出会いましたが私は回復系魔法を一切使うことなく、リオル一人で倒せてしまいました…リオルが怪我をするよりはいいのですけどね?一度くらいは使いたいのですよ…


「さて、討伐はこんなもんでいいかしら、町に帰って素材を売り捌きに行くわっとぉ!?」


オークの素材を剥ぎ取り終えたリオルが立ち上がろうとした時、オークの腕につまずいて転び、オークが持っていた棍棒に額をぶつけてしまいました。


「大丈夫ですかリオル!?」


「いたた…このくらい平気よ…あざできたかな」


ですがリオルの額からは血が出ていました...


「帰りましょう!そしてエリーさんに治癒魔法かけてもらいましょう!」


「あんたが魔法使いなさいよ!」


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