パーティ全員弓しか使えませんが何か?

茜色蒲公英

第1話アーチャーやめますよ!

私は今、とてつもない危機に襲われています。金欠です。パンを一つすら買えないくらい貧乏なのです。


「うぅ…こんなはずではなかったのですが…ラストのフルハウスさえ勝っていれば…」


俯いて賭博場から家に帰る私…あ、申し遅れました。私はミラ・アルセです。職業はアーチャーで趣味は賭博です。この街、ブリーズタウンに住んでいて、十四歳ですが一軒家も持っています。持つまでは大変でしたけどね。普段は街の外や洞窟などに湧いている迷惑極まりないモンスターを狩って、その皮などを売って生活費を稼いでいます。たまに賭博もするのですが…まぁだいたい素寒貧になって帰ってくるのです。


「ミ〜ラ〜?あんたやたらと帰り遅かったわね?どこに行ってたのよ?」


私の家の二階の窓から鬼のような形相で睨んできたのは私の幼なじみであり、同居をしているリオル・フィン。私と同じくアーチャーですがとても真面目な人で…少し面倒くさい親友です。


「ちょ、ちょっとそこまで散歩です」


「へぇ〜ただの散歩なのにちょっと高めの宿屋で一泊できるくらいのお金を持ち出す必要があると言いたいのね?」


怖いです。めっちゃ怖いです。睨みから笑顔に変わったはずなのに殺気すら感じます…


「で、では私はちょっと狩りに出かけて来ますので…ルスヲタノミマシタヨー」


「待ちなさい!話は終わってないわよ!」


リオルが二階の窓から飛び降りて追いかけて来たので私は町のはずれにある門を目指して逃げると人の肉の焦げた匂いがしてきました。

門の前にいるはずの兵士さんもいません。

私は様子を見るためその場にとどまり、周りを見ているとリオルが追いつきました。


「追いついたわよ、って臭っ!人の焦げた臭いじゃない!」


「リオル、大変まずいことになっているかもしれません」


「そりゃあ門が閉まってるのに門番がいない、しかもこの匂い…高いところから様子を見るわよ」


私達は少し離れた木の上に登り、門付近の様子を伺っていると、門の外側からリザードマンが2匹乗り越えて現れました。


「リザードマンじゃない!この近くじゃ見ないのに…」


普段リザードマンは洞窟内に生息しているのですが…洞窟から出てくるなんて聞いたことがありません。


「まずいですね、人を呼ぶにもここを離れるわけには行きませんし、その上夕方ときたものです。早めに倒さないと被害が出ます」


今の時間だと酒場や出店が賑わっている頃…このままだと被害が出てしまいます。


「そんなこと分かってるわよ、一撃で仕留めるからあんたはいつも通りにお願い」


「了解です、では行ってきますね」


私は木から降り、二メートル半はありそうなリザードマンの正面に立ち、弓を構えます。私の弓矢は大きく、思わぬ方向に飛ぶことが多いので近くまで行かないとなかなか狙った場所に当たらないのです。リザードマンのが大剣を振り上げた瞬間、細く、鋭い矢が一匹のリザードマンの頭を貫きました。


ですがもう1匹のリザードマンが木の上にいるリオンに気づき、持っている大剣をリオルのいる木に投げると簡単に木は倒れ、バランスを崩したリオルは巻き込まれてしまいました。


「リオル!今行きます!」


「私のことはいいからそいつを倒しなさい!」


リオルへと走っていくリザードマンの頭をよく狙い、矢を放つと身体のど真ん中に的中。ですが致命傷ではなかったらしく、逃げようとするリザードマンに私はもう一度よく狙って矢を放つと、今度は頭を命中し、倒れました。


「なんとか倒せました…リオル!無事ですか!?」


リオルのもとに走って向かい、様子を見ると少しですが頭から血を流しており、足にいくつかあざがありました。


「うるさいわね…このくらいじゃ死なないわよ、ちょっと肩を貸してくれる?さすがに一人じゃ立てないから」


「私が運びますから、無理に立とうとしちゃダメです!」


私はリオルを背負おうとしますが、私の力不足なのかリオンが重いのか分かりませんが、足がぷるぷるします…


「お、重いです…」


「重くないわよ!…無理しなくていいから肩を貸しなさい」


「じゃあそうします…」


こうして私達は町で運営しているギルドにリオルを連れていき、怪我を治してもらったあと門番の方が亡くなってしまったこと、リザードマンが現れたことを説明して家に帰りました。私達は寝室にいき、私は布団の準備、リオンはクローゼットの中で寝る準備をしていました。


「はぁ…今日は散々だったわ…」


「そうですね…ばくt…リザードマンが現れるとは思いませんでしたね…」


「あん?今博打って言おうとしたわね?…そんなこと分かってはいたけど…勝手に持ち出すのはいけないことよね?」


「いけなくないですよ!あれは私が稼いだお金です!私がどう使おうが勝手じゃないですか!」


「あのお金は生活費!ミラが放ったらかしにしてる服を洗ったり、お腹減った時のためのご飯を作ったり、矢が足りなくなった時、弓が壊れちゃった時のお金なの!あんたがお金持ってると全部お菓子とか要らない武器とか博打に全部ぶち込むでしょうが!」


ぐぅの音も出ません。ですが私はこの家の主、威厳を見せなければならない時があるのです。


「うぅ…ですがこの家は私がお金を払って建てたものです!」


「たかが三割でしょ?残りの七割は私が払ったのよ!それに大体のことはミラの自由にさせてるし、生活費も稼いだ四割にしてるじゃない。だいたいねぇ、家事も私一人でやってるのよ?」


またもやド正論にぐぅの音も出ません…


「あ、そうです、リオルに伝えたいことがありました」


「何よ?実は今日の戦闘で弓が壊れたとか?」


「違いますよ!これは私もあまり気が進まないのですが…私、アーチャーやめてヒーラーになります」

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