第3話 パーティ編成はバランスよく
夕方になり街に帰ってきた私達、いつも通り素材屋さんに行ってゴブリンの牙などを売り、私は博打にー
「おい待て…どこに行こうとしてるのかしら?」
博打に行こうとする私の肩を掴んで止めるリオル。力が強いです…
「どこって…家に決まってるじゃないですか〜」
「へぇ〜、お金を握りしめてねぇ、じゃあもう一つ聞くわね、そっちは家のある方向じゃなくて…あんたが大好きな博打場がある方向よねぇ?」
肩を掴む手の力が強まるのを感じます…ですが私は引くわけにはいきません。今日こそは勝てる気がするのです。いや勝てるのです。
「ええ!私は博打に向かいますよ!今日は勝てるんですから!」
「その台詞は今月入って十回くらい聞いたわぁ!」
私の頭に入る完璧な垂直のチョップ。ここで私の意識は飛んでいて、気づいたら家に引きずられてて布団の中に放り込まれていました。
「…はっ!私のおっく千万!」
「何を言ってんのよ…ご飯できたからさっさと食べて風呂はいって寝なさい」
リビングからは既にご飯のいい匂いが…今回のチョップはいつもより少し軽かったようです。
いつもでしたら起きるのは朝方ですから……
夕食を食べ終えた私はお風呂に入り、少し考え事をしていました。
私がヒーラーとして活躍できるのは仲間が増え、パーティができて、強い魔物と戦い、仲間が傷ついた時にヒーラーである私が必要になるのではないかと。
「つまり!私に今必要なのは仲間です!仲間は不可欠なのです!博打のためにも!」
「うるさい!長湯してないで早く出なさい!」
こうして私は本日2度目の布団に飛び込んで明日の準備という名の睡眠に入ったのでした。
そして翌日、早起きした私は仲間を増やしリオルをびっくりさせようと隠れてギルドに行こうとしましたが何故か玄関にリオルが立っていました…
「おはようミラ、こんな朝早く起きるなんて珍しいわね。一緒に朝市に行く?」
「ええ…そうします…」
何故か朝から元気なリオルと共に眠い目をこすって朝市に出かけました…
御近所さんに混じって楽しそうに買い物をするリオル。何もすることがない私は近くにあった木にもたれかかると、隣には武装のしていないノヴァさんがいました。
「よっ、お前も買い物に付き合ってるのか?」
「ええ、好きで付き合ってるんじゃないんですけどねー…ノヴァさんってパーティ組んでいます?」
「なんだよいきなり、別に組んでねーけど…まさかお前組めって言うんじゃねーだろうな?」
「そのまさかです。私とリオルの二人では心もとないですし…それに二人共弓矢使いなのでバランスが悪いんです。ですが私は弓矢が使い慣れているので今更変えるというのも嫌なんです」
「確かに弓矢使い二人、しかも片方は筋力の落ちたヒーラーじゃこの先不安だわな、だがその誘いは断る。俺とエリーは既にコンビを組んでる。しかもエリーはヒーラーで俺はアタッカーってのは見りゃ分かると思うが…それ以前に俺らこう見えて忙しいからな…教会に住んでるわけじゃねぇけど毎日教会の掃除したり、死んだ奴がいたなら葬式もしなきゃいけねぇし…誘いは嬉しいが他を当たってくれ。ガレットに言えば掲示板にパーティ募集張り出してくれんだろ」
「ノヴァさんやたらと饒舌ですね…良いことでもあったのですか?」
「うるせっ、んじゃエリーが呼んでるから行くぜ、またな」
行ってしまいました…さて、私もリオルにギルドに行く旨を伝えてギルドに行くとしましょう。
私はリオルの所に駆け寄ってギルドに行くことを言ったのですが…
「ダメよ、どうせそんなこと言って博打に行くんでしょう?」
まさかの即答。幼なじみなのにこの信頼の無さです。
「本当に行きます!でしたら賭けましょう。私が5分後にギルドにいなかったらこれからのお金の管理は全てリオルに任せます!これで私は博打に行けなくなります!ですがもし5分後にギルドに私がいたら...」
「いたらどうするのよ?」
「リオルに博打を一緒にやってもらいます」
リオルは今まで博打をしたことがないのでこれで博打の良さを知ってもらうのです!
「ふぅ〜ん...いいわよ、乗ってあげる。このこと自体が賭け事なのはもはや突っ込まない。もうすぐ買い物終わるし家に荷物置き次第すぐに向かうわ」
「ではスタートです!」
ここの朝市広場から私の家までおよそ3分。しかし家からギルドまでは歩いて5分!
そしてこの朝市広場からギルドまでは歩いて2分!つまり私が何をしたいのかを言いますと...そう!ギルド内で博打をするのです!六分あれば丁半が何回か可能です!私はギルドにスキップで向かい、軽やかに扉を開けると、いつも博打仲間と丁半をする席にガレットさんと小動物のように小さくなって震えている人がいました。
「おはようミラちゃん!ノヴァくんから話は聞いているよ!仲間を探しているんだってね!」
ノヴァさん…自分で言えと言っておきながらノヴァさんが言ってるんじゃないですか…
「ええ、ではその人は…」
「そう!掲示板に張り出した瞬間君たちの仲間になりたいと言ってきたセーラ・マースちゃんだ!」
「あ、あの...この前のリザードマンの戦い二人だけで倒したと聞いて…もしよければですが…セーラを仲間に...お願いします」
パーティメンバーが増えることはこれ以上なく嬉しいことです。断る理由がありません!
「もちろんです。こちらからもよろしくお願いしますね、セーラさん。あっ、申し遅れました、私はミラ・アルセといいます!」
それにしてもセーラさんほぼ顔以外を隠すように布を覆っていますね…職業は暗殺者かハンターでしょうか?
「ミラー、来たわよーっていたいた」
丁度いいところにリオルが来ました。なんだか私がいることが前提かのような普通の声ですね…
「リオル、聞いて驚いてください!パーティメンバーが早速一人増えましたよ!」
「...ん?どういうこと?……なるほど、ギルドに行ったのはそういうことね。だいたい状況が飲み込めてきたわ。あなた確か…セーラさんよね?ほかのパーティに入ってた気がするけど…」
「前のパーティからはこの前抜けました…前のパーティの方達はなんというか…テンションの上がり具合が凄いというかなんというか…」
「そうだったのですか…」
「まぁパーティにも相性はあるわよね、じゃあ戦い方とかも考えなきゃいけないからいくつか質問するわ、まずは職業と武器の種類を教えて?」
セーラさんは非武装でしたので私も見た目ではどんな職業かは確信できませんでしたからね…こういうのは作戦を考えてくれるリオルにお任せしておきましょう。
「セーラの職業はハンターです…武器は短弓を扱っています…ナイフは使えますが素材を剥ぎ取ることくらいにしか使えません…」
…はい?私の聞き間違いでしょうか?聞き間違いですよね。きっとメイン武器がナイフで、短弓はきっと…サブ武器なはず……現実逃避はやめましょう。今は目の前のことを見つめましょう。
「弓が三人ねぇ、しかもハンターときた。ミラのヒーラーとしての役目は更に無くなったけど火力分はミラの分を埋められるからいいんじゃない?」
「ソウデスネー…あっ、ガレットさん、掲示板に張り出した内容を変更してもらえますか?」
「もちろんさ!近距離攻撃可能な人を求むと書いておくよ!」
「あとリオルの飯は世界一ィ!とでも書いておいてください」
「絶対要らないわよねそれ!?」
寧ろそれを最初に書いてほしかったと言うのはセーラさんとノヴァさんに悪いので言わないでおきましょう…
しばらくセーラさんと私達の詳しい自己紹介や隣の家に住んでいることで話が弾んでいると腹筋バキバキなことがはっきりと分かる格闘士っぽい女の人が無言でセーラさんの後ろに立っていました。
「あのー…うるさかったでしょうか?」
「違う、話に割り込んではいけないと思って話しかけなかっただけだ。小生の名はブレイ・ドーファン。あの張り紙を見てガレットに訪ねてみたらおぬしらが頼んだものだと聞いた。なんでも近距離戦闘が可能な者を探しているとな。このブレイ・ドーファン、貴殿らのパーティに入れてはくれまいだろうか?」
このムキムキなお姉さん…特攻してくれそうです!しかもめっちゃ強そうです!文句無しです!
「ちなみに聞くけど職業と武器は?」
「ふん、よくぞ聞いてくれた。小生の武器はな…」
あのムキムキの筋肉…恐らくは大剣、斧、戦槍…一体何を使うのでしょうか…
「職業は魔法戦士!弓と矢を扱う!」
…は?と私含め三人が同じ反応、そして数秒の間の沈黙が流れました…
「どうしたのだ?小生が魔法戦士だということにそんなに驚いたのか?」
「違うわぁ!あんた掲示板の条件見た!?近距離戦闘が可能な人を求むって書いてあったよね!?あんたは文字も読めないのか!?」
やたらとキレるリオル。さすがに弓矢使い四人はダメなようです…無論私も勘弁ですが…
「馬鹿にするな、字くらいは読める。それに小生は弓矢使いではあってもほとんど近距離戦闘だ」
「近距離戦闘の弓矢って…どんなバトルスタイルですか?」
「危ないのでここには持ち込めないが極限にまで鍛え上げた鉄製の弓を使い敵を切り裂き、重さ三キロほどある矢を使い敵の頭を貫く。遠距離攻撃としても使うことはあるが体に針を纏っていたり毒を纏ったりしている敵のみだ」
なるほど…というか三キロもある矢と鉄の弓なんてどこで売ってるんですかね…少なくともこの街には無かったはずですが…
「それと一つ、頼み事がある」
「なんでしょう?私達に出来ることならなんでも言ってください」
「住むところがないから提供してほしい。だが家の中は落ち着かん、大きな木があればそこに住まわせてほしい」
まるでお猿さんかなにかですね…
「あんたは猿か…でも家に木は生えてないし…セーラさんの家には木生えてる?」
「ええ…戦争時代から生えている大樹があります…でも枝までがだいぶ高いので危険かと…」
「構わん、慣れている」
あからさまに「えぇ…」という顔をセーラさん。
その後、素材の山分けの取り分、戦闘時の各自立ち回り、行動範囲の拡大などを話し合い気づけば日が暮れそうになっていました。
「もう夕時か、リオル、頼んだぞ」
「え?何を?」
「飯に決まっているだろう、小生はお前の飯が世界一だというのを見てこのパーティに入ったのだぞ」
冗談で言ったつもりなのに本当に書いたんですかガレットさん…
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