第5話 小さな戦争の始まりです
出てきた魔法使いの人はだらしない格好をしている人ですが、あれだけの魔法を使った人です、只者ではないことは確かと言えるでしょう。
そしてこの場合の答えは…
「私達ですか?ただの旅人です、この先のベルタルタ国を目指して歩いたんですけど…あってますかね?」
「ベルタルタ国なら〜さっき陥落したよ〜そのドラゴンは同盟組んでる国に連絡しようとしたらしいけど〜…君達は何を話してたの?返答次第によってはそこに落ちてる戦場から逃げた負け犬兵士みたいに…殺しちゃうよ?」
さて…なんと答えましょう。素直に答えれば見逃してくれるでしょうか?ですが見逃してくれたとしてこの人はこのあとどうするんでしょう?私達の住んでいる街を襲って来るのでしょうか、いえ、気づかなければ…ですが…
「今見てたなら分かるでしょ、そのドラゴン私達を襲ってきたんだから敵。そしてあんたは私達の敵!」
リオルが指を2回鳴らしました。これは一斉攻撃の合図です!
私とリオル、セーラさんでタイミングをずらし、矢を放ちましたが、私の矢はよけられ、セーラさんの矢は持っていた杖で打ち落とされてしまいました。
「おっと!危ないねぇ!人間同士の殺し合いをする時には名乗れって教わらなかったのかな!?」
「では名乗ろう、小生の名はブレイ・ドーファン、貴様を葬る者だ!『バーニングアーツ』!」
ブレイさんは後ろから炎を纏った弓で切りかかりましたが、これも杖で弾かれてしまいます。
「ヒャッヒャ!面白いね!弓そのもので攻撃なんて!じゃあそろそろアタイの名前を名乗らせてもらうよ、アタイはルメラカ国魔術軍3番隊隊長の『砲撃のフルーホ』ことフルーホ・ブッセ!君のハートを物理的に撃ち抜くよ!そりゃ!」
フルーホがブレイさんに向けて杖を振ると詠唱なしで巨大な火の玉が飛んでいきました。
「詠唱なしで魔法を放つか!となるとその杖に何か仕掛けがあるとみた!『ウォーターアーツ』!」
ブレイさんは弓に水を纏わせて火の玉を切り、フルーホに再び斬りかかりました。
「ヒャッヒャ!面白いのはいいけどアタイはあまり近接戦は得意じゃないんでね!そらぁ!」
フルーホが足元を蹴ると軽い爆発が起こり、大量の煙が巻き上がりました。
「ちっ!煙幕か!」
「ヒャッヒャ!いくよぉぉ!!」
煙の中から火の玉が様々な方向から出てきてブレイさんに次々と当たっていきます。
「ぐっ…リオル!そっちから撃てないのか!?」
「撃てたならとっくにやってるわよ!とりあえず煙が晴れるまでは持ちこたえてちょうだい!」
「私も回復してサポートします!『ヒーリング』!」
この呪文は私が魔力を送り続けている間だけブレイさんの傷が治るのですが、私自身の魔力はまだそこまでないのでいつまで持つか…
「ヒャッヒャ!そんな回復量でアタイの攻撃に耐えきれると思ってんの!?ほぉら!とどめだよ!」
ブルーホが煙の中から頭をめがけて杖で殴りましたが、当たったのは肩でした。
「やっと現れたなぁ…貴様が馬鹿みたいに大声をあげたからこうして小生の肩に当たった。捕まえたぞブルーホ!」
ブレイさんは杖を引っ張り、引っ張られたブルーホの腹を思いっきり殴りました。
「かはっ…」
「貴様のような外道の血で小生の弓を汚したくはない、貴様は我が拳で地獄に落ちるがいい!」
部分魔力強化で拳と脚を強化し、稲妻の如き速さでフルーホの身体が浮くほどボッコボコにするブレイさん…
「これで終いだ!『ボマーアーツ』!吹き飛べぇぇ!!」
ブレイの最後の一撃でフルーホは吹き飛び、見ることが耐え難いくらい悲惨な姿になっていました…セーラさんは死体に駆け寄り、興味があるのかまじまじと見始めました。
「所々関節が変な方向に曲がってますね…死んでいるフリをしているか確認のため矢を撃ち込んでおきます…」
セーラさんが、死体に矢を撃ちましたが、リザードマンのように黒くなるようなことはありませんでした。
「やはり…そうでしたか…」
「ん?なにか分かったことでもあったの?」
「はい…この人…さっきから詠唱することなく魔法が出せていましたよね…」
「ああ、だが杖が特殊ではないのか?こいつは何も言っていなかったが」
その杖はブレイさんが壊してとても調べられそうにはないですけどね…
「いえ…この人の身体をよく見たら体の様々な場所に小さく術式がいくつも書かれていたんです…これは『ボディスペル』と言って魔力を込めたペンで身体に術式を書き込むと、書いた部分のみですが詠唱することなく魔法を放つことができます…弱点としては詠唱をする魔法より魔力を数倍近く多く消費するのでもう使われていないと思っていましたが…」
「ほう、興味深いな…だがセーラ、何故おぬしはそこで魔法に詳しい?おぬしはハンターだろう」
「実は私…魔法使いになりたかったんです…魔法学の本を本棚いっぱいに買っては読み漁り…ですが初めて魔法を放とうとした時…火の玉一つ出せないほど魔力が無いことが分かりました…ですが今でも本を読むのは好きなので知識だけはあるんです…」
ちなみに私はこの話を昨日の夜に聞いてます。魔法が使えない知った時はかなり落ち込んだそうで、全ての本を自分ごと燃やそうとも考えたそうです…ですがエリーさんにその知識を生かしてくださいと言われてしばらく魔法学の教師を教会でしていたそうです。ちなみに魔力の計測は初めて就職する際にガレットさんがしてくれます。
「魔力ねぇ…私もゼロなのよね、なんでかしら?」
「知らんな。小生もこう見えて最初はソルジャーマスターになろうとしていたからな、だがガレットが魔力が有り余っていて勿体ないと言うのでこうして魔法戦士となった」
「こう見えてって…どう見ても幾千もの戦をくぐり抜けてきた戦士にしか見えないんだけど…さて、これからどうする?私達敵国の隊長殺っちゃったけど…」
そうですよね…ですが逆に考えれば敵国の強い人を倒したくらい私たちは強いのでもしかしたら…
「ふん、愚問だな。このまま攻め込むに決まってるだろう。このまま街に帰っても攻め込まれるのがオチだ」
「ですけど…たった4人じゃ無謀なのでは…」
「確かに…ですがブレイさんの言うことは間違いありません!私たちがやるしかないんです!リオルはどうしたいですか?」
「どうしたいかって決まってるじゃない。もちろんどっかにトンズラしたいわよ。だけどあんたが博打以外に馬鹿やりたいって言うなら私も乗るわよ。セーラ、あなたはどうする?ここで街に帰っても私達はあなたを裏切り者だと思わないし、寧ろ一度帰ってギルドの連中を呼んできてけれると助かるんだけど…」
「じゃあ一度帰れば…あっ…」
セーラさんが気づいたとおり、今攻め込まなければ敵の準備が出来た状態で戦うことになってしまいます。フルーホはさっき陥落したと言っていました。なので敵の兵力、体力などが回復しないうちに攻め込まなければいけないのです。
セーラさんは「死なないでください」と大きめの声で言い、走って街に戻っていきました。
「さて、あんた達、覚悟と準備はいい?」
「無論だ。とうにできている」
「私も同じくです!」
こうしてたった三人によるベルタルタ国を取り戻す戦争が始まるのでした…
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