第4話 戦争の臭いがします
その夜、セーラさんとブレイさんを家に招き、食事をしてお泊まり会をすることになりました。
「とはいいましたが…一つ一つの部屋がそこまで大きくないので寝るところは分けることになってしまうんですよね」
「小生は木の上で寝るから心配するな、先ほど食事をした部屋なら机をどかせば三人で寝ることが可能だろう」
「それではお泊まり会の意味がありません!全員同じ部屋で寝るからこそお泊まり会というものです!」
ギルドにいた時とは違いヘドバンかのように激しく頷くセーラさん。
「せっかくだから…四人一緒がいいです…!リオルさんもそう思いますよね…?」
セーラさんがリオルに聞きますが、リオルは申し訳なさそうに俯いています。
「あのー…言いづらいのだけど…私クローゼットの中じゃなきゃ眠れないのよね…」
「それ初めて知りましたよ!?私の家に住むことになってから寝る場所が無いと思ってクローゼットの中で寝ていたと思っていましたよ!」
ですが今考えれば私の家に住むことが決定した時真っ先に聞かれたのが「クローゼットはある?そこで寝るんだけど」でしたからね…
「クローゼットで寝るのか、面白いやつだな」
「木の上で寝るあんたには言われたくないわ!…てかそれならミラとシータ二人で寝ればいいんじゃない?私だって今日寝れなくて明日に支障が出るのは嫌だもの」
「それには同感だ。というわけで小生はこれにて失礼」
ブレイさんはそう言って外に出てしまいました。
「さて、私たちも寝るわよ。明日は遠くまで行くんだし、私も朝早く起きて弁当作らなきゃいけないのよ。ミラとセーラも夜更かししないで早く寝なさいよ」
「リオルさん…お母さんみたいです…」
「あっ、セーラさんそれは…」
少しだけ寂しそうな顔をするリオル。
リオルのお母さんは私達が小さな頃に…あれ?おかしいですね、どうしたんでしたっけ…
「リオルさんのお母さんが…どうかしたのですか?気に障るようなこと言ったのなら謝ります…」
「いえ、大丈夫よ、大丈夫なんだけど…あれ?おかしいわね…自分の母親なのに…ミラ、あんたが覚えてて私が覚えていないのはおかしいのはわかってるけど一応聞いておくわ、あんたは覚え〇〇〇は俺の嫁てるわよね?」
すごく不安そうな顔をして聞いてくるリオル。
ここは「もちろん覚えていますよ」と言いたいですが「どんな格好?どんな顔?」と聞かれたら答えることはできません。ならば私はこう答えるべきなのです。
「オボエテハイマスガナニセオサナイコロナノデスベテガオボロゲデス」
「覚えてないじゃないの!…はぁ…何よりも大切な人だったはずなのに…なんで…」
「記憶を…お二人共無くされているんですか…?」
「そのようですね、もしかしたらですけど誰かに記憶をなくされたとかありそうですよねー」
私が軽はずみに言ったこの言葉が、後に大変なことに巻き込まれることになるとは、私達はまだ思いもしませんでした…
「馬鹿なこと言わないの、さっ、寝ましょ」
結局その日の夜はセーラさんと色々お話していたので寝るのは遅くなり、翌朝は…
「ほら起きなさい二人共!ブレイはもう支度終わってご飯食べてるわよ!」
「「もうちょっと…寝かせてください…」」
「起きろ!!」
リオルの容赦ないチョップが私とセーラさんの脳天を襲い、目が覚めました。ちなみにですが初めてリオルのチョップをくらったセーラは頭が二つに裂けそうと言っていました。
朝食を食べ、武器などの準備を済ませると再確認のためのミーティングが始まりました。
「改めて、今回は商人がよく通る隣国への道を私たちがそのルート通りに行って、魔物が出たら片っ端から倒して安全性を高める。そして隣国関係者がいたら極力話しかけない、話しかけられても頼まれごとは受けない、話す時間はとにかく短くする…質問はある?」
「ないですよー」
「ないです…」
「ないな」
基本的に私たちはギルドにあるクエストは受けません。理由としては大体のクエストは戦争が起きている国の近くがほとんどで、一度戦争に関与すると私たちのいる街が狙われる可能性が極めて高いのです。今回のちょっと遠出も割と危険なもので隣国は別の国と戦争中なので道の途中で戦争での死体が落ちている可能性もあります。(ガレットさん情報)
私たちは街を出て隣国付近を目指し、まだ数分しかしていない時に、なんとリザードマンが四匹も現れました。
「いきなりお出ましね、街に入られないためにも全力で殺すわよ」
「了解です」「了解です…」「承った」
最初にブレイさんは敵に向かって走り、弓で一匹目のリザードマンを横に斬ってしまいました。
「グルルァ!!」
「甘いなぁ!」
それに怒ったリザードマンはブレイさんを斬ろうとしますが、見事にかわして矢を取り出し、リザードマンの頭に刺してそのまま地面に叩きつけました。
「すごい動きですね〜」
「同じ弓矢使いの動きとは思えないわよね…」
ほかの二匹がブレイさんに注意を向けている時、セーラさんは凄まじい速度で二匹との心臓部分を撃ち抜くと、リザードマンの体は真っ黒になり、その場に倒れました。
「うっわ…これは素材回収無理そうね…」
「それはすみません…私の矢には生物性の猛毒が塗ってあるので…その魔物に触れたら触れたところから腐っていって…魔物の殲滅を目的とした矢です…」
「ふむ、だが肉を食えんとは勿体ないな」
「ふえっ…魔物の肉を食べるんですか…」
セーラさん、昨日食べたお肉も、お店に出ているお肉のほとんどは魔物のお肉ですよ?
私達は道をしばらく進んでいましたが、それから魔物は不気味なほどほとんど出てくることはなく、その代わりに背中から魔法を撃たれてやられてしまった人間の死体が何体か転がっていました。
「背中からということは脱国者でしょうか…軍服を着ていますし逃げ出したところを遠くから撃たれたのだと思います…数人で近くにあったので計画逃亡の可能性もあります…」
「ほう…やたら詳しいのだな、もしやおぬしも脱国者だったのか?」
「そんなこと…ないです…!」
ぶんぶんと必死に手と顔を横に振るセーラさん。
「でもそれにしたって魔物出ないわね、まるで何かに隠れてるみたいに…」
「そういう不気味な事言わないでくださいよ、そういうこと言うとヤバイ魔物が出ると賭博仲間が言ってたんですよ」
私がそう言い終わる直前でしょうか、突如吹き飛ばされそうになるくらいの風が吹き、私達の目の前に5メートル程の二本足で直立しているドラゴンが現れました。
「なるほどね…こいつがその原因ってわけね」
落ち着いて話していますが足震えてますよリオル。
「人間ごときが気高きドラゴンにこいつ扱いとはいい度胸だな…」
どこからともなく聞こえるものすごく低い声、もしかしてですが…
「噂には聞いていたが本当にいたとはな…まさか人間の言葉をドラゴンがいたとは…」
「我らドラゴンはお前らみたいな人間と違って知能が高い、故に人間の言葉を話すなど造作もないことだ」
「はっ、それはどうかな、小生が今まで葬ってきたドラゴン共は妙な叫びと断末魔くらいしか聞こえなかったなぁ」
挑発し合う両者…よく見るとドラゴンのお腹には焼印が小さく刻まれていました。
「その紋章ってすぐそこにあるベルタルタ国の紋章ですよね?ということは国に忠誠を誓ったドラゴン…ですよね?」
するとブレイさんとリオルは「ぷっ」と吹き出して笑い始めてしまいました…私何か面白いこと言いましたかね?
「あーはっはっは!!あんだけ人間が下等生物みたいな言い方してあんたはその人間の下僕ってわけ?じゃああんたは気高いドラゴン様の中でも最底辺ってわけね!あー面白い!」
「まったくだな!しかも腹に刻印とは降伏の象徴!背に人を乗せていればもっと笑えていたのだがな!」
「ぷっ…クスクス…いえすみません…人の言葉を話しているのでその時点で気づいてて我慢してたんですが…ぷひゅっ!」
セーラさんも笑ってたんですか…しかもよほどタチ悪いじゃないですか…
「殺す…塵すら残さず葬ってくれるわぁ!」
ドラゴンが咆哮をして、硬そうな爪を振り下ろそうとした瞬間、何かがドラゴンの背中から巨大な火の玉が貫通し、ドラゴンはドシンという音を立てて倒れてしまいました。
そしてそのドラゴンの後ろからひょっこりと現れたのは先ほどのあった死体とは違う軍服…恐らくベルタルタ国が今戦争している国でしょう…片方の肩は出していて、ぶかぶかなのかシワだらけの軍服を来ていました。
「こんにちは、あなた達は誰の味方でしょう?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます