第8話 賭けますか?賭けまs
土下座しているオーナーさん。そのオーナーさん見下すリオル。
「もう勘弁してください!これ以上は店が潰れてしまいます!」
「まだやるわよ、やるなら徹底的。もう一戦やるわよ!」
どーしてこんなことになったのでしょうか…
時を遡ること三時間前…私達はお昼ご飯を食べたあと教会に行きノヴァさんとエリーさんに昨日のお礼を言いに行きました。ですがいたのはノヴァさんでエリーさんが見当たりません。
「こんにちは〜あれ?エリーさんは?」
「エリーなら客用のソファで昼寝中だ。ほら見ろこのアホみたいな寝顔」
ソファを見てみるとエリーさんがタオルケットを咥えて寝ていました。
「癒されますね…」
「こいつのファンクラブ的なやつは天使みたいだと言ってたがな。で、今日は何の用事だったんだ?」
「ええ、昨日のお礼を改めてお二人に言いに来ました。昨日は本当にありがとうございました」
「いいってことよ、だがもうあんなことになるような事に首突っ込むんじゃねーぞ」
「はい!先輩!」
「大声出すんじゃねぇ!エリーが起きるだろうが!あとてめぇ俺が言ったこと忘れやがれ!」
「あんたも十分声大きいわよ…エリーには起きてる時に言うわ」
「そうしてやってくれ」
その後、私がいつも博打をする場所に向かいました。
大きな街ではないので広さはそこまで大きくはありませんが、ルーレットやポーカー、ビンゴ、丁半など様々なゲームがあります。まずは二万円をチップに交換し、選びます。ん
「さて、とりあえずポーカーね。ディーラー、イカサマ防ぎにトランプ見せてちょうだい」
リオルは真っ先にポーカーの席に座り、ディーラーさんにトランプを借りてチェックしました。
「ウチはイカサマなんてしませんよ。お嬢さんこそ細工などしないでくださいよ」
「はっ、そんなことする意味無いわ。とりあえず一万賭けるわ」
「と、とりあえずで一万ですか!?初めてなんですからもうちょっと安めから…」
一万円、リザードマンの皮で二十匹分、ドラゴンの皮で二体分です。実際これで一週間は狩りをしなくて済むレベルです。
「え?私初めてじゃないわよ、まぁ見てなさいって」
「随分と自信があるんですね、では始めましょう」
軽快にトランプをシャッフルし、配るディーラーさん。隣にいるリオルの目は狩りの時の目をしており、配っている時にも一切瞬きをしていませんでした。
「さて…と、ちなみに聞くわ、トランプはどこから交換してもいいのよね?」
「もちろんですよ」
ディーラーさんは上から二枚交換し、リオルさんはそれぞれ別のところから三枚交換しました。
「さて、降りますか?」
「降りないわよ、はいストレート」
5から10まで、マークこそ違えど揃っていました。
「これは凄いですね…私はダブルペアです」
「三倍だから3万頂くわ。さて次やりましょ。次はこの3万賭けるわ」
そしてリオルは四枚交換して…
「あら、私運がいいのね。ストレートフラッシュだったわ」
「くっ…私はフルハウスです…ですが偶然はそう続きませんよ…」
「その前に七倍で二十一万円貰っとくわよ。で、この二十一万賭けるわ」
リオルがニヤリと笑ってそう言うと周りのギャンブラーの皆さんがどよめき始めました。
「おい…あの賭け方…伝説の店潰しじゃねぇか…?」
「でもやつはもうとっくに姿を消して引退したと聞いたが…」
「しかもやつはツレなんていなかったはずだぞ…」
ざわざわとする店内。ディーラーさんも思わず困惑します。
ディーラーさんは素早くシャッフルし、配りました。
「さて…私は1枚だけ交換するとしましょう」
「私は全捨て。ブタ(役なし)だったわ」
リオルは新たに五枚引き直し、リオルの表情はもはや悪魔のように笑っていました。ですが表情を見ていないディーラーさんは笑っていました。
「フォーカードです!さぁどうでしょう!」
「私って…幸せよねぇ?ロイヤルストレートフラッシュよ」
扇状に綺麗に並べられたハートのロイヤルストレートフラッシュ。当たり前ながらディーラーさんはポカーンとしています。
「こ、こんなのイカサマです!何を細工したんです!?」
「そりゃこっちのセリフでしょ?あんたもフルハウスとかフォーカードをホイホイと出してたんだから。しかも私が細工できていたとでも?そっちで用意したトランプにあんたがシャッフルしたんでしょうが。ほら早くよこしなさい、二十倍で…四百二十万ね」
ディーラーさんは膝から崩れ落ち、一気に歓声が上がりました。ある人はリオルにサインを貰おうとしたり、ある人は拝み始めてしまいました…
「サインなんて書いたことないわよ…ほら、これでいい?」
「ありがとうございます!!」
リオルは立ち上がり、そのまま帰るかと思いきや、カジノウォーの席へ。※詳しくはググって下さい
「さて…トランプを見せてもらおうかしら」
「どうぞ、私はあの人と同じようにはいきませんよ」
「そうだといいわね、はい」
トランプを返し、ディーラーさんはシャッフルをし始めます。
「おいくら賭けますか?」
「そうねぇ…久々にやるし百万でいいわ、勝ったら二倍だっけ?」
「ええ、では配りますねー」
「待った。私にやらせなさい。カードはそのままでいいわ」
「私達ディーラーはイカサマなんてしませんよ、ギャンブルは基本運が関わってきますから。このゲームだってたった二枚で勝敗が決するゲームですのでー」
「さっきのディーラーのイカサマをこっちは見逃してあげてんのよ。配らせるのが嫌ならせめて選ばせなさい」
「信用ゼロですね…いいでしょう、特別ですよ」
ディーラーさんはトランプをスラッと並べ、両者とも一枚ずつ引きました。
「勝負よ」
ディーラーさんが出したのは6。リオルは8でした。
「さすが…といったところでしょうか…」
「次は引き分けに五百万賭けるわ。あなたがクビになりこの店が潰れる準備はいいかしら?」
引き分けは十倍…つまり五千万が動くことになります…この店潰れませんかね…この街に博打場ここしかないんですけど…
「五千万ですか…これで引き分けでしたら確かにクビどころじゃありませんね…いきます!」
あれ、おかしいですね?ディーラーさんが主人公っぽく見えてリオルが悪役っぽい感じに…
「チェックメイトね」
ディーラーさんとリオルが出したカードは7と7。つまりリオルさんの勝ちです。
「五千万…いただいてくわね」
「そんな…そんな馬鹿なことが…これはきっと夢なんです…悪い夢…」
「ところがどっこい現実よ、夢なんかじゃないわ。これが現実。さぁもう一戦♪」
こうしてリオルのことを聞いたオーナーさんが駆けつけて来て時は戻ります。
「お願いします!ほかのお客様のためにもどうか…」
「こんなイカサマだらけの店でカモられる客のほうが可哀想よ、ねぇミラ?」
「え、私に振ります?」
「そりゃそうでしょ、あんたここの常連なんだし、あんたがここに数百回と行って勝ってきたことなんて数えるほどしかないでしょ。で、カモられてても楽しいの?」
「言い方きついですね…私もそうですが皆さん楽しんでるんでそれでいいのだと思いますよ、なのでオーナーさんの言うとおりこれくらいにしてあげましょう」
リオルは「そう」と言って大量のチップをお金へと交換しました。チップの数がやたらと多く、全部交換するまで数分かかりましたが…
そしてもう来ないでくださいと言わんばかりに頭を下げるオーナーさん達に私は一応謝って私とリオルは大量のお金が入ったカバンを持って博打場を後にしました。
「リオルは運が凄くいいんですね〜」
「んなわけないでしょ、あんなのトランプの位置覚えただけよ」
「なんですと…?では何故あんなに博打のことを嫌がっていたんですか?」
「簡単に金が入ったら狩りをする必要が無くなるでしょ?そうしたらあんたと狩りが…できなくなっちゃうじゃない…とにかく!これで約束は守ったからね!」
「は、はいっ!」
家への帰り道、リオルがギルドに寄りたいと言うので一緒に行くとブレイさんが居て退屈そうに骨付き肉の骨を齧っていました。
「やっと来たかリオル、呼び出しておいて遅いぞ」
「ごめんごめん、ちょっと手間取ってね」
リオルは机の上にカバンを置き、ブレイに向けてカバンを開けました。
「なんだこの大量の金は…?一体どうやって…」
「そんなことはどうでもいいのよ、あんたを呼び出したのは他でもない。あんたの武器壊れちゃったからこの金使って新調してほしいの」
私の約束を利用してブレイさんの武器を新調することまで考えていたとは…さすがと言いますかなんと言いますか…
「そんなことで呼び出したのか、武器ならストックがあるから金は要らん。そもそも小生の武器は自分で調達し作っているから金などかからん」
まぁ…考えてみればそうですよね…接近専門の弓なんて聞いたことないですし…
「いやそれは嘘でしょ!鉄なんてどうやって手に入れるのよ!」
「この街のすぐ近くに洞窟があるだろう、そこに山ほど鉄があるぞ、製鉄と鍛錬なら過去に教えて貰ったから造作もない」
「じゃあこの金どうするのよ…今更あんな所に返したくはないし…」
「ここにでも使ってやれ。ギルドがでかくなれば人は集まるし人が集まれば助け合いもできるだろう。あの国もまたいつ襲われるか分かったもんじゃないからな、なぁガレット。さっきから受付の書類を片付けているフリをしてこちらに聞き耳を立てているのは丸わかりだぞ」
ギクッとしたガレットさんはこちらに来てカバンの中を覗き込み始めました。
「確かに本物のお金のようだね…!全部とは言わないけどブレイちゃんの言う通りギルドに回してくれると助かるよ!」
「なら私達は四十万あれば十分よ、あとはあげるわ」
「ありがとう!必ずいいギルドにすると約束するよ!」
「そうね、三ヶ月後にはこんな依頼と職業変えるだけのちんけな役所と変わらないような所じゃなくて、酒場とかが併設してある賑やかなギルドになっていてちょうだい」
「あとあと!博打ができるのもいいと思います!」
「軽食ができる場所も頼むぞ」
その後も話は盛り上がり、気づけば夕暮れになっていました。
「あ、もうこんな時間でしたか…帰りましょうか」
「そうね、ご飯の支度もまだ出来ていないし。ブレイはどうするの?」
「セーラの家に行く。あいつも小生のことを気にしているからな。今頃料理が出来ているはずだろう。ではまた明日な」
「ええ、ではガレットさん、頼みましたよっ」
「うん!何かあったら報告するよ!!」
こうして私達は家に帰り、いつもより少し贅沢なご飯を食べ、お風呂に入ったあと寝室に向かうと、なんと窓が割れ、セーラさんがうずくまって泣いていました…
「な、何事です!?」
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