基本ストーリーは、少年が成長しながらお姫様を助けに行く話。
ストーリーラインは非常に素直で単純だ。
しかし、そこに日本刀をはじめとした武器、そして武術というエッセンスがたっぷりと詰めこまれている。
さらに、漫画チックな個性的なキャラクターたちが暴れまわることも強い魅力を放っている。
だが、それはあくまで味付け。
やはり、ゾンビ!!
このゾンビの導入があまりに自然で驚く。
少年の一人称ながら淡々とした文章で、日常から非日常へと運ぶのだが、その運ばれた先の非日常がなぜか日常のような空気を漂わせている。
その独特の雰囲気が強い個性を放って、「怖い」というよりも「面白い」という印象を強く焼きつけてくる。
そしてスピーディー。
語り型の文章の特徴を活かした物語の進行は、次々と展開していき、飽きさせない構成が練られている。
見終わった時、まるでゾンビ映画を1本見たような満足感と快感がある。
素直に「おもしろかった」と思える作品だろう。
ごちそうさまでした!<(_ _)>
まずね、タイトルに惹かれますよね。
そして次に浮かぶのは「カネサダ」って誰の事?ってなりますよね。
この言葉が指すのは会津兼定、つまり一振りの刀なんですね。
よく刀とは武士の魂とは言いますが、本作ではキーとも言える立ち位置。銃規制により日本では基本的に銃は出回ってません。(猟銃を除く)ロメロ(監督)ウィルスが蔓延し、死に掛けと呼ばれるゾンビが徘徊する町で刀は有効な防衛手段として利用価値のあるものとなりました。
なら、北極星に向けろとは単に方角を指しているだけなのか?
否、それはご自身の目でお確かめ下さい。
ひとまず
「12話 永遠には生きられない 」まで読んでその意味を確認してみて下さい。
本作の特徴としてはホラーゾンビパニックというよりは、災害に近いゾンビハザードに対し、どう対処していけば良いか、サバイバル色の強いホラーになっております。
書き手さんの影響か、どこか体育会系の匂いのする男らしい作品で、直球的な表現は読者を選びません。取材や下調べをしたであろう箇所も最低限の説明に止め、読者の事を考えてくれています。
いくつかの出会いと別れを繰り返し、少年は星の下へと辿り着けるだろうか?
ゾンビ映画の定番的要素も散りばめられてますが、根底にあるのは少年の成長物語です。
そして刀の他にチート要素として、茶色いあれが出て来る訳ですが、これがある意味で一番強いかもです。
世界が反転した時、武道の心得がその道を切り拓く。刮目せよ、このゾンビサバイバル。
始めに断っておくが、私は作者・梧桐彰氏のいわゆる固定ファンである。
氏の作品はことごとく私にとって琴線に触れる傑作良作ばかり。未だかつてハズレと感じたことはない。
しかしながら、今作に関しては当初非常に困惑し、読むかどうかをかなりためらった。
なにしろ内容が「ゾンビを日本刀でぶった斬る話」である。
ゾンビといえば、半死人が徘徊し、生者を襲い、かくして世界は亡者の王国となったのでした――そんなB級映画のイメージしかない。
この作品は本当に大丈夫なのか? いくらなんでも、私の好みに合わないのでは?
そんな一抹の不安とともに読み始めた。最悪、口に合わなければそっとブラウザを閉じればいいのだと呟いて……。
不安は杞憂だった。
やはりこの作品、最高に面白い。
まずこの作品に登場するゾンビとは「自立歩行する災害」だ。
ある日突然、前触れもなく現れて、日常を破壊する、地震や台風といった災害の象徴なのだ。
この物語の基本骨子は、その災害の中でどのように生き延びるかにある。
気合いだとか根性だとかは通用しない。たった一つの判断違いが危機を招く。綱渡りのような恐怖がある。それを乗り越える術が一つ一つ登場する。恐怖が薄れ、希望が見えてくる。
言うなればこれは「対ゾンビ災害対策マニュアル」。これを読めば明日この世が死んだとしても、生き残る確率がぐっと上がるに違いない。
そしてサブストーリーとして、主人公の人間的成長と恋模様が描かれる。
死の権化が徘徊する中を、たった一人のために歩めるか?
それも、焦ることなく、冷静なままで。私なら30分で退場すると思う。
また一方で読者を楽しませてくれるのがアクションだ。
なにしろこの歩く災害、幸か不幸かぶっ殺せば死ぬのである。
主人公は剣道、またそこから昇華させた剣術を扱う。それ以外にも多種多様な武術を身に着けた人物が現れ、それぞれの特色を活かしながら死者に引導を渡す。
やっぱり梧桐作品はこうでなくっちゃ!
そんなわけで、ゾンビものという部分に不安を感じる必要はない。
敵を退け前に進む、進み続ける。これはそういう物語だ。
突如として崩壊した日常。
昨日まで何気なく過ごしていた街が、ゾンビが蔓延る悪夢のような世界に。
あまりにも呆気なく地獄へと変貌した世界で、少年は幼なじみを救いに行く。
主人公である邦彦は戸惑いつつも着実に知識を積み上げ、技を磨く。
死臭漂う街を生き抜こうと戦う人々との出会いもまた、彼に様々な変化を与える。やがて初めは少し頼りなかった邦彦の姿は、徐々に力強いものに。
出会い、別れ、託し、託され、獲得し、喪失する。
そんな巡りの中で邦彦は『死にかけ』を倒し、幼なじみのユミを救うためひたすらに進み続ける。
流麗な文章は、これらの過程を確かな説得力を持って読者に訴えかけてくる。
丁寧に作り込まれた深みのある作品です。
まずこの作品ですね、タイトルがいいですよ、うん。
シンプルだけど凄くカッコいい。
「なぜに北極星? しかもカネサダってなによ。銀牙伝説ウ〇ード?」って、気になって仕方なかったですもん。とてもキャッチーです。
タイトルの意味が分かった時は、「おお~」ってなりました。
そして内容。あらすじの通りゾンビ物ですよ。
ゾンビ物って、書くの凄く難しいと思うんです。
だって、ゾンビが出るって最初から分かってるから、よほど超常的な要素でもない限り、ストーリーのオチもなんとなく予想がついちゃうじゃないですか。
でもこの作品、おもしろかった。
普通の中学生だった邦彦が、ある日放り込まれた非日常の中で、剣の達人のじいちゃんを始めとする人々に様々な教えを伝授されて、ただの少年から剣士……いや、生きるための戦士になっていく。その過程の書き方が見事。
ラスト付近のカネサダを振るっての戦闘描写なんて、シンプルなのに手に汗握ってしまいましたもの。もう、手汗がねっちょり!
別に魔法が付与されているわけでもなく、卍解して千本桜になったりもしない、普通の日本刀。それを振るうのです。ひたすらに振るうのです。カッコいい!
戦いの動機が、「遠くにいる幼馴染の女の子を助けるため」っていうのも、単純ながら年相応の少年らしくて、凄くいい。
二人のメッセージのやり取りなんかも、短いながらそれだけに心にくるものがあって、思わずほろっとしてしまいました。
そして、次々出てくる登場人物たちのキャラがいいです。
特にサラ姉さんなんて、「あんた、ゾンビ物に出て来ちゃだめでしょ!」っていうくらいのハッチャケっぷりで、いい意味で悲壮感をフッ飛ばしてくれました。
あと、なんといってもじいちゃん。私の人生の師匠になってほしいくらい、素敵なおじい様です。
実戦的なゾンビの対処法や、サバイバル術の描写なんかも、丁寧でとてもタメになります。この作品を読めば、いつバイオハザードが起きても大丈夫!
とりあえずまずは、ホームセンターにいってスコップを買って来ましょう!
カネサダを持っていなくても、スコップがあればなんとかなるさ!!
洞爺湖の木刀もいいけど、万能なのはスコップだ!
やり直すはずだった日常が、壊れていく。
突然のことに主人公、上町邦彦は現状に追いつけない。中学生、15歳なら無理もないでしょう。
彼は祖父をはじめ、様々な人達――個性豊かな仲間たちに生きることを教わりながら、迫り来る「死にかけ」を倒し、踏み、進んでいく。
幼馴染の女の子、ユミを救うべく。ただの幼馴染という枠を越えて、大事な存在となっていく彼女を想い、時には辛い別れも刻みながら一歩ずつ強くなっていくのです。
好きな子を救うために敵を討つというシンプルな構成ですが、それがいい。最後まで圧巻でした。
「ゾンビVS日本刀」ってキャッチコピーに惹かれ、そしてタイトルの「カネサダを北極星へ向けろ」がかっこよくて、パッケージ買いっていうのかジャケ買いっていうのか…読み始めた動機はそんなでしたが、本編がめっぽうかっこよく、物語に引き込まれました。
武道に関する知識や描写が作者様らしく、とにかく説得力があるので安心して読み進められます。いや、内容はまったく安心できないんですが。
生きるか死ぬかの瀬戸際で、それに仲間が容赦なく死んでいく……つらいです。好きなキャラクターが死んでいくのはつらいです。
それでも生きなきゃいけない。死ぬわけにいかない。邦彦とともに前を向いて進んでいきました。
リアリティあふれる情景に、この悲惨さがどうにも身近に起こりそうで、怖い。
たとえゾンビに襲われないにしても、日本は災害大国ですから生き抜くための術、知恵や武器を備えるに越したことはない。便利になりすぎた現代だからこそ必要な知識ですね。
正吉おじいちゃんの教えに頷きながら、ショウさんのマニアックな知識に唸りながら、読者も主人公とともに術を蓄えていける。
スリルなサバイバルアクションだけでなく、たくさんのことが学べる一作でもあります。
また、物語もさることながら、筆致のかっこよさに惚れました。
愛すること、生きること、死ぬこと、戦うこと、大事なものを得られる作品です。ぜひ、ご一読ください。
小気味好いテンポに優れたプロットに魅力溢れるキャラクターに、徹底した世界観のリアリティと読者を飽きさせない緊張感の連続と、どこをとっても一級品!
いわゆるゾンビの溢れる世界でサバイバルを繰り広げる作品はいくらでもありますがその中でも群を抜いて面白い。ゾンビ相手にただ武道で立ち向かうのではなく「武道の知識、経験をどうやって生き残る為に活かすか」が練られており、武芸に対する知識と哲学が物語に深みを、キャラクターに魅力を加えている。
またリアリティの追求が徹底しているから、ゾンビが溢れるという虚構に対して全体がニセモノっぽくならず「本当になったらどうしよう」という恐怖と緊張を感じる。
ストーリーは序盤から緩むことなく加速を続け、主人公は目的を達することが出来るのか、誰が生き残るのかと気になって読み進める手が止まらない。カネサダを北極星に向けろ。タイトルも最高に格好良い。
非常に面白い、傑作!!
「板子一枚下は地獄」という言葉がある。
これは、船底一枚を隔てれば、そこには落ちたら助からない、危険だらけの海が広がっているという、船乗り仕事の過酷さを表したものだ。
一見すると堅牢・安全に見える現代の日本社会も、地震や台風、大雨や大雪のような自然災害の前には無力であることがしばしばだ。
我々の暮らすこの平和で快適な社会は、実際には荒波の中に浮かぶ一隻の船であり、「板子一枚下」には地獄が広がっている。
本作は、そのただでさえ危うい社会がパンデミックによるゾンビの大量発生という、未曾有の事態によって崩壊した中で紡がれる物語だ。
「好きな子を助けたい」という一心で突き進む主人公・邦彦の姿は、荒波に浮かぶ船どころか、時化の海に揉まれ油断すればあっという間に転覆してしまう、一艘の小舟でしかない。
熟練の船頭が如く道を指し示してくれる祖父や、頼りになる仲間たちも現れるが……最早戻れる港もなく、高波一つでもろともに海の藻屑となる、過酷な状況は邦彦に予断を許してはくれない。
剣道の素養があるだけの、ごく普通の少年であった邦彦が、如何にしてその過酷な状況の中、それでも諦めない強い意志を身に着けていくのか?
「好きな子を助けたい」という想いが、戦う力になるまでのプロセスをしっかりと描いているのも本作の魅力だと感じた。
蛮勇ではなく勇気を、そして希望を抱いて絶望の中を駆け抜ける少年の姿を、どうか見守ってあげて欲しい。
剣道部に所属している上町邦彦は、幼馴染のユミと自転車で帰る途中、祖父に「病気か?」と突然意味深な問いを投げかけられる。
そして、次の日、世界は動く死体だらけになっていて……。
邦彦の視点で描かれていく本文の心情描写がとても丁寧で、ひとつひとつの表現がその場の様子を的確に伝えてくれて想像しやすいです。
正吉おじいさんがとにかくカッコよくて大ファンになりました。
邦彦が少しずつ覚悟をもって成長していく様も、状況がきちんと描かれているため無理なく自然に感じました。
物語自体は比較的王道かと思いますが、非常にキャラが良く立っていて、リズムもテンポもよく、闘う彼らを心から応援したくなる作品です。
新種のウイルスに感染した人間がゾンビ化し、街に蔓延し始めた。
ある種の様式美な展開から容赦なく始まる極限生活。主人公の邦彦はまだ中学生で、一人で生きていく力も知恵もない。そんな彼を周囲の家族や友人が助け、導き、やがて人間としての逞しさを身に着けていく。
本作はゾンビパニック・サバイバル小説ですが、なんといっても主人公を含めたキャラクターの生き様が素晴らしく格好いい。
言わずもがなじいちゃんは、邦彦に剣だけでなく生きる術と生きる意味を教えてくれる。他の面々もたくさんの悩みや事情を抱えながら、支え合って一瞬一瞬を強く生きている。
泣かせられる場面も多くて、じいちゃん関連と、邦彦の親父さんの場面では涙ぐんでしまった。
本作では他人と共に過ごすことの大切さと、支えになる誰かの言葉の重要さをひしひしと感じる。
現代では当たり前になってしまったものも、元は人間が生きるために培ったもので、そこに意味はない。剣道だってその一つに過ぎない。とにかく生きて、大切な人のそばにいることに意味がある。
単純明快でガツンとくる思いに打ちのめされました。
読みやすく完結されておりますので、一気に読み切ってしまうことをおすすめします!
楽しく拝読させて頂きました。
街が突如ゾンビで溢れ、ただ一人の想い人を助けるために、不可能と思われる旅に出かける。
剣道をやっていながらも、決して好きではない主人公だが、さまざまな人に助けられて成長していく。
そして途中、大切な仲間を失い、普通なら挫折してしまいそうな強い絶望が訪れながらも、それを乗り越えていく姿は、見習うものがあります。
最後まで読みきったとき、読者に強い余韻とカタルシスを残すことでしょう。
それだけ、随所に散りばめられた秀逸な表現や登場人物たちのかっこいいセリフがとにかく光っているのです!
既にたくさんの方がレビューされていますので、本作の魅力について改めて私が語るものでもないかもしれませんが……、おすすめです!
ゾンビものながら、本作は普段そういう血なまぐさいものを読まない人でも広く楽しめることでしょう。ロメロウイルスで人々のゾンビ化が進む中、苦境に陥った幼馴染を助け出す。一本芯の通った王道のストーリーが幕を開けます。
しかしなによりその肉付けが素晴らしい。自然体ながら引き締まった文章は言うに及ばず、主人公を様々に支援する活き活きとしたキャラクター達、状況を切り開いていく武術やサバイバル知識の数々が童心を沸き立たせます。
これを読んでいたら明日突然パンデミックが始まっても生き残れそうな……、はさすがに無理かもしれないけど、なんかそのために鍛錬を始めたくなったりして、少なくとも希望は失わない、そんな気持ちにさせてくれる物語だったと思います。