概要
――それでもこの世界は止まらない、現実はいつまでも生き続けるから――
4人の主人公が東京の火葬場を舞台とし、繰り広げるヒューマンドラマ・ストーリーです。
連作短編で群像劇構成となっております。
1.桜花乱満(おうからんまん)
葬儀場に勤めることになった春田俊介(はるた しゅんすけ)は初日から極道の親方を送ることになり、奮闘するが、思わぬ事件に巻き込まれることになり――。
果たして彼は、無事におくりびとになることができるのか――。
2.一蓮託唱(いちれんたくしょう)
由緒ある寺に生まれ女として僧になった夏川菜月(なつかわ なつき)はお盆の日をスクーターで駆け回る。
彼女の祖母である静(しずか)を思い出しながら――。
3.紅葉綾灰(こうようりょうばい)
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★ Good!元斎場(火葬場)職員より
凄い目の付け所が良いだけに、取材不足が否めない内容に残念。
実際のドラマの見せ場は棺を炉に送り出す前に、遺族が別れを済ます時に
遺族が泣き崩れたり、叫んだり、時には阿鼻叫喚の騒ぎになる事も。
他にもお骨をいかに早く正確に、焼くか。
そして、1000℃を超える炉の火力調節や、焼きあがったお骨を
如何に早く正確に人の形へと「整骨」するか。
そこに葛藤やドラマがあったりなかったりするんだけれども。
あと坊さんが女性だと、地域によっては忌避されたり陰口叩かれたりするかそこでもドラマが生まれる。
描きようによっては、吐き気を催すような醜い、人間ドラマが生まれる。
リアルな元職員から見ると…続きを読む - ★★★ Excellent!!!たくさんの方々に出会っていただきたいです。特に読まれて欲しいのは……!
第一証まで読ませていただきましたが、とても夢中になって読むことができました。重すぎず、そして軽すぎない、本当にお見事!と言える作品です。冒頭から一気に惹き込まれます。短時間で決まってしまう面接とか、リアルにありますし……!
仕事による自殺が年々増えていく中で、どうして部下たちが苦しい思いや、最悪、死ぬ思いまでに至らなくてはならないのか。
このお話は、幻想なんかじゃなくて、死と向き合う人、そして死を送る方々の思いを丁寧に描かれているお話です。
是非、リーダーに当たる方々に読んでいただきたいと、強く願っております。
とはいえ、話の流れがスムーズで、惹き込ませ方がとても素晴らしい作者様ですので、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!みんな誰かの大切な人
火葬場。それほど多くの縁がある場所ではないけれども、人生の最後、多くの人がここから旅立っていく、大切な場所。
こちらの物語は、お葬式に関わる多くの仕事(こんなにたくさんの方々が関わっているということを初めて知った)をそれぞれの視点から掘り下げた、オムニバス形式のお仕事小説。
章ごとに変わる主人公が、皆それぞれ忘れられない過去を抱えており、お仕事小説というだけでなく、ヒューマンドラマとしての色合いもとても強い作品です。
人の死という重いテーマではあるけれども、ほんわかとした恋愛要素が随所でからめられ、流れるような文章と相まってとても読みやすいです。
早いか遅いか、それだけの問題で、いつか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!亡くなるけれど失くならないもの
多くの人が知っているであろうお葬式と火葬場を「職場」として見ることのできる作品です。重くなりがちなテーマですが軽やかな語り口で読みやすいです。
各章ごとに異なる主人公のエピソードが展開されますが、それぞれの章の登場人物は繋がっています。それぞれが抱く疑念や悔いなどの想いが絡み、あるいはほどけていきます。
作者独特の既存の四字熟語に同音異義の漢字を当てはめる各章のタイトルがエピソードに意義を持たせます。
亡くなっていく人が残していく想い。
生きている人が受け継ぐ想い。
身体はなくなり現世を離れるけれど、失くならないものがある。
それがその人が生きていた証。
残していく人へ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!陽の一章、陰の二章
本作『それでも火葬場は、廻っている』は、くさなぎそうし氏の代表作『花纏月千(かてんげっち)』に次ぐ“葬儀屋シリーズ”第二弾という位置づけだ。作者いわく「コミカルで読みやすさ重視」とのことだが、一章と二章では、おもむきが異なる構成になっている。
一章は……“陽”。もちろん、人の生き死にを扱った作品である以上、どこか悲哀の影がさすところも見られるが、誰がなんと言おうとこれは陽だ。とある暗い過去を持つ主人公、春田俊介は上昇志向が強く、勝ち得た職場で“葬儀の本質”へと歩んでゆくこととなる。進化するキャラクターであり、“大変なトラブル”を抱えた彼の視点で物語は進む。そこである“決断”をする……という…続きを読む