In your room

 飾磨しかまは鴨川署に戻り、簡単に高崎たかさき管理官に口頭で、伝えたものの、報告書はキッチリ書かなければならない。これ警察の掟。

 丁度、一晩かかった。コンビニ弁当だけではいつも足りないので、プラス菓子パンか、プラスカップ麺となる。それらとくだらない深夜バラエテイとともに丸々徹夜。

 もちろん、清家せいけ緒方美月おがたみづきの学業と出席状況の大学事務方面での報告書を書かなければならないはずだが、どういなっていることやら。

 殺された緒方美月おがたみづきの私生活はかなり複雑だ。だが徐々に炙り出されている。

 ここ京都にという名前に憧れて受験。京都にある大学に通いたがる受験生、高校生は多い。

 生まれてから、ずーっと京都とだった飾磨には、もう一つピンとこない。

 京都で学生生活を送るというのは、他府県の高校生からすると大変な魅力らしい。

 飾磨に言わせると、京都は、二、三日、訪れるところで、住むところでは決してない。

 京都は盆地のせいか、夏は熱く、冬は寒い。天気予報も大阪より冬場は2度下がり、天気は一段回悪化すると考えたほうがいい。冬に関せば、大阪が晴れなら京都は曇り、大阪が曇りなら、京都は時雨しぐれる。大阪が雨なら、京都は小雪がちらつく。


 翌日、東京の携帯サーバー会社に問い合わせてあった、緒方美月の携帯利用状況、接続状況が捜査本部に上がってききた。 

 しかし、依然。

 緒方美月の携帯並びに監禁可能なカード類財布身分証明書はみつかっていない。

 どうやら、これがマスコミには完全に伏せてある容疑者確定証拠になるかもしれない。

 この日、朝一の捜査会議。飾磨は、一連の報告が終わった後。壇上の高崎管理官に呼ばれた。

「飾磨」本部一課の捜査官が呼んでいる。よくない呼び出しらしい。

被害者ガイシャの部屋の捜索について行ってくれ」

「自分がですか?」

「空いているだろう?」

「清家がやってる防犯カメラのほうに回れと、荒尾一課長から言われていますが」

「それより、こっちを頼む、事件はおまえの署の所轄内だろ土地勘もあるだろうし、路案内にを頼む」

「はぁ」と飾磨。

「それより、おまえのその服装なんとかならんのか」

 飾磨の、下はスウェット、上はパーカーのフードを出したに肩にワッペンを貼ったジャンパーをさしているのだ、

 右肩には"DL98"大学アメフト時のポジションと背番号。左肩には、The201thSqn北の空を守る空自に戦闘機中隊。もちろん、こちらは完全なレプリカ。

 この服装は、前任の一課長とも相当やりあったが、結局飾磨が押し通した。

 飾磨が面倒くさいこというなぁ、という顔して「はぁ」と言葉を濁すと。

「さっさと、いけ、」と高崎管理官。

「そして、府警本部捜査一課を舐めるなよ」高崎の小さい声だった。

 廊下には、本部一課の刑事二人組が待っていた。


 被害者ガイシャ宅のこういう重要な証拠採集ならびに情報収集には、本部の捜査一課をあてる、手柄はどんな小さいものでもあくまでも本部一課の刑事に挙げさせたいのだ。警察は警察内部でも署単位、班単位で本当につまらないものまで争っている。旧帝国軍隊方式。敗戦後の平和憲法でも治らない日本人の悪い癖。

 覆面パトは前回のB級のアコードでなく、本部から乗り付けられた堂々たるマークX通称"しっぽ付き"。どの覆面パトにも無線用に後部にアンテナが付いている。これで、犯罪予備軍、暴力団、並びにマニアには覆面とバレバレといううわさ。

 捜査の指揮は、紺のスーツでいかつい大男の本部一課も刑事が取り、もう一人、さらに大男の本部の一課刑事。確か、両方共飾磨より後輩のはずだが。運転席だけが空いている。飾磨が運転して、亡くなった緒方美月の元学生アパートへ。

 本部付きもいいかもしれない、永遠に運転しなくて済むのなら。

 緒方美月の学生アパートは、、松ヶ崎にあり高級アパート顔負けだった。女子学生専用のアパート。

 大家が不動産とともに待っていた。緒方美月の母親は先日前まで京都に居たそうだが、今日は、用事があるとかで大津で帰ったそうだ。

 不動産屋は、50代、髪が相当ヤバイが天性のペコペコ営業スマイルを崩さない。 が、大家60代女性は、露骨に面倒そうだった。当たり前だろう。店子が殺されたとあっては、露骨に借り手が減るか、怯え引越す学生も居るだろうし、来年の四月に学生が集まるか。賃料を大きく下げるしかあるまい。

 大家が言った。

「うちは、悪いうわさなんて始めて20年一個もなかったのに」

 まるで、緒方美月が犯人のような言い方だ。緒方美月があくまでも被害者。

「本部一課の谷本です」紺のスーツのいかつい刑事が手帳を手品クラスの早業でみせ名刺を渡す。警察手帳の提示はきちっとしっかりとが、制服警官でもマニュアルの一つではなかっただろうか?。

 このあたりは、"妙""法"北山の山向こうにさらに条件の悪い住宅地が大挙できたので、一応高級住宅地に80年代以降転身した地域。自転車でなら通えなくもないが、南に京都大、西にアダアダジョ東にほぼ男子学生が占める京都工科大学があるため学生用のアパートも多いが、学生街という雰囲気はほとんどんない。学生街は、やはり京都大学の周囲がする。あくまでも洗練された、高級住宅街。

「こちらです」不機嫌な大家にかわり不動産屋が案内する。ここの防犯カメラもすでに捜査本部のほうで押収してある。

 現場の保全は、母親にも伝えてあったし、一応鑑識も指紋の検出を一通り行っているはずである。

 家主の亡くなった、部屋はどの部屋も独特ムードを醸し出している。簡単にいえば不気味。時があるじが亡くなった時点で完全に静止している。どれだけ生活感があろうともなかろうとも、死者の部屋だとすぐに分かる。

 刑事三人大の大人が入れば、室内はいっぱい、いっぱいである。

 谷本は、色々、箪笥たんすや、小物入れを開け始めた。箪笥を開けた時、ブラジャーやパンツ類がたくさん見えた。プライバシーなど、死ねば何一つない。小さなこたつ机に乗っているラップトップのPCはもちろん押収する。

 飾磨が、ぼーっと部屋の中をも、見回していると。

「貴様も、捜索をしろ」と谷本。

「やってますよ、二人のじゃまになってはいけないと思い」

 あくまでも、三流所轄刑事を演じる飾磨。

「ふん」

 これは二度目の捜索になる、Wチェックしたところで、何も出ないだろう。交友関係を示す、写真数点。身につけてていない手帳数点か?。

 室内は、とてもきれいだ。生活感があまり感じられないと言ってもいい。

 浮田准教授が言った、文字通り優秀な女子学生なのだろうか?。

 捜査情報だと、大津の普通高校から現役でアダアダジョに入学。憧れて入った京都の女子大。おそらく、周りは、自分よりできない、ぼんやりした女子学生、もしくは、恐ろしく、金を使うしんのお嬢様学生。学生生活に露骨に失望したか?なにを考えたのだろう。自分ならなにをその時感じる。こういったは、普通こういった中では、モテるのだろうか。

 三流大学にやっとこさ入れてもらった飾磨自身は良くわからないというのが、本音だ。

 それに、学生生活のほとんどをアメフトに費やしていた。走り回らせれた挙句、あっちでごっちん、こっちでごっちん。

 一課の谷中がドサッと捨てたプリントアウトされた数枚の写真を見る。

 写真のどの位置に写っているかも結構その人となりを表す。

 真ん中か、端か、二列目か、それとも、撮る方の係りだったか、嬉しそうか、一応のピースサインか。

 緒方美月は、大津の普通高校から来たとはいえ、服装はとりわけ地味というわけではない。目立ってもない。馴染んでる。

 飾磨にとって一枚気になった写真があった。普通のというより、中でもより地味な男子学生と二人だけで写った写真。一枚だけ、緒方美月の表情が砕けているというか、打ち解けている気がしたのだ。

 本部一課の谷本が投げ出した写真なのだ、かまわないだろう。

 飾磨は。その写真をそっとジャンバーの内ポケットに入れた。


 Don't take any photograph.

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