Smooth criminal

 捜査会議は、そう揉めず、終わった。高崎管理官の差配が優れていたのか。

 あまりにも緒方美月の情報が多すぎたのか。飾磨の知るところではない。

 メディアでは一概にいかに無垢でなんの罪もない被害者が犯罪者理解不可能な毒牙にかかったか涙モノのストーリーに仕上げがちだ、もちろんそういう場合もある。

 が、捜査に携わると、そうでないことのほうが多いことに否が応でも気付かされる。

 土台、容疑者の手の届く範囲行動半径に、被害者が居たことは間違いなく。

 アメリカ人がいうところの間違った場所に間違った人物がいたことなどまだましなほうで、近所の住民からメディア、警察、誰も口にしないが、被害者側にもある程度過失がある場合が多い。

 それにこれもほぼメディア、警察があまり露骨に発表しないことだが事件の犯人はの4割から6割は近くは、被害者の家族だ。

 結局、人は利害がぶつかると血のつながりなど関係なく、犯罪に訴えてでも事を解決しようとする傾向が残念ながらある残忍な生き物なのだ。

 緒方美月おがたみづきはどうか?。

 田舎の進学校から、あこがれの街の実は名前だけのお嬢様大学に入学。

 挫折と言ってもいい異質なものを感じた大学生活ではなかったのではだろうか。

 それが、風俗まがいのバイトに発展したのかは、これからの捜査の焦点になるだろう。

 そこに絡んでくる、おそらくその元締めであり真の恋人、表拓人おもてたくと


 人海戦術で情報を集めに集めた一期は終わった。これで、捜査員はがくっと人数を減らされる。もちろん所轄、本部の一課は残るが、他の署や他部門の掛け持ちの応援部隊は本来の仕事に戻っていく。

 これも、残念な事実だが、警察も人員と予算が限られている。一つの事件に全精力を集中することは一行政機構として不可能だ。


 会議終了後一番に、荒尾は、いつもの一服もせず、家へ向かう。

 高崎管理官も高枕では寝られないだろうが、家に帰っていく。人である限り睡眠は必要だ。

 それは緒方美月には悪いが飾磨も同じ。飾磨の机の引き出しには、くすねた、緒方美月と親しそうに映る謎の若者の写真、これは、飾磨と死んだ緒方美月だけの秘密、いや、この若者も入るか。


Because of these matter.

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