第8話 取材はもうこりごり

 最近来なくなったと言えば、取材の申し込みもすっかり来なくなりましたね。流石にもう珍しくはなくなったからでしょうか。正確なデータがある訳ではないですが、私が宿を始めた頃は、鳥を飼う人が今よりずっと少なかったような印象があります。逆を言うと、今は随分増えた感じがしますね。小鳥を見ながらお茶を飲めるカフェとか、ふくろうカフェとか猛禽カフェとか、あるいは鳥グッズの販売会が大盛況だったり、そういった幅も広がっているように思います。


 しかしそういった広がりがまだ無かった平成16年頃、小鳥専門のペットホテルは珍しかったせいか、ちょくちょく取材の依頼を受けていました。ただ、取材と言っても、一番多かったのが、

「芸能人がそちらに伺います、そこでお店のPRをしてください。そのとき撮影したものを編集して、当方のサイトで公開します」

 というような感じ。


 勿論有料です。お金を払って取材していただく、という形でしたが、これには引っかかりませんでした。何せやって来るという芸能人が、その時既に「で、誰?」「あの人は今」状態の、微妙な人しか居ませんでしたから、それにお金を払うほどには、頭も呆けてませんでした。


 こうして、取材依頼が来ては断る、を繰り返していた日々なのですが、そこに異変が。関西ローカル放送の、「大阪ほんわかテレビ」というテレビ番組があるのですが、なんとここから取材依頼が来たのです。


 どどどどうしましょう、「金払え」と言われない、まともな取材です。電話を受けた手が震え……はしませんでしたが、悩みました。

「お店の宣伝にもなると思うのですが」

「そうですね!」

 たいして悩まなかったかも知れません。


 で、その時の電話で簡単な打ち合わせをして、取材当日となった訳ですが。ですが! 覚えているのはカメラを向けられて頭がテンパった事だけでした。いや、アレ駄目ですわ。無理。ただでさえコミュ障気味なのに、テレビカメラなんて向けられたら、平常心とか無理ですから。


 何聞かれたかとか何喋ったかとか、まるっきり記憶にございません。よく事件報道なんかで容疑者が逮捕前に突撃取材されて、カメラ向けられて怒ったりしてますけど、あの気持ちちょっとわかりますよ。テレビカメラって、怖いです。正直な所、テレビの取材はもういいや、って思いました。


 でもまあ、取材されてもお金払えとか言われませんでしたし、それどころか番組の記念品まで頂いてしまったので、悪い印象は無いのですが。


 さて、それからしばらくして。私が受けた取材は幸か不幸かボツになる事もなく、関西一円で放送されました。勿論私も観ました。観ましたけれど。

「うわあ……これはテレビには映ったらアカン顔や……」

 以上で感想を終わらせて頂きたいと思います。

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