第5話 ペットホテルなら

 動物取扱業どうぶつとりあつかいぎょう、という言葉をご存じでしょうか。文字通り、動物を取り扱う仕事の事を言うのですが、私は自分が鳥の為に何が出来るのか探し始めてみるまで、この言葉を知りませんでした。


 出来る事なら獣医になれればベストなのですが、私が獣医になるのは流石に無理です。私が鳥の為に何か出来るとすれば、何らかの動物取扱業に関わるしかないだろう、そう考えました。とは言え、どんな仕事にせよ、始めるとなれば先立つ物が必要になります。普通に考えれば、店舗が無ければ話になりません。お店があるのが当然なのです。しかし当時の自分には店を借りる金などありませんでした。


 何も自分で店を始めなくても、何処かのペット関係の店で働くだけでいいんじゃないか、従業員として鳥の為に働くのも有りだろう、とも考えました。でも無理です。何せ身体が――というか頭が――ポンコツなのですから。勤め人はもう務まらない、自営でなければ無理だろう、それはその時点でもうあきらめていました。だから自営で出来そうな動物取扱業を探していたのです。それもお金をかけずに始められる仕事を。


 そんなある日、ふと気付きました。ペットホテルなら、鳥を預かる場所さえあれば、店舗要らないんじゃないかな。うちに普段使ってない部屋二つほどあるよな。


 普段使っていない部屋、というのは要するに客間なのですが、それはこの際無視しました。何せそれまで10年近く住んで、客など来た事は1度も無かったのですから。そして私は同居する親に相談することもなく、ペットホテルを始める事を決めてしまいました。売り文句は『小鳥専門のペットホテル』『小鳥と飼い主様の幸せの為に』。


 ただこの時期の記憶が曖昧です。平成14年だった様な気もするし、平成15年に入っていた様な気もします。

 さあ、長い前置きがやっと終わりました。ここからがペットホテル『小鳥の宿miyagi』のお話のスタートです。

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