第6話 営業開始

 当時の動物取扱業は現在と違い、届出制でした。つまり、都道府県(政令指定都市は市)に所定の書類を提出し、届出をするだけで(届出料は必要だったと思います)誰でも動物取扱業者になる事が出来たのです。大阪府に届出をして、税務署にも届を出して、ペットホテル『小鳥の宿miyagi』が正式に営業を開始したのは、平成16年1月の事でした。


 そのオープンと共にお客様が列をなし、連日人が押しかけ……などと言う事はもちろん毛の先ほどもなく、ひっそりと、誰にも知られぬ営業開始でした。


 窓口となるのは自作のインターネットサイトのみ。広告を打つお金も殆ど無いので、無料登録できるあちらこちらのポータルサイトに次々に登録し、ペット関連のサイトと相互リンクを繰り返す日々。サイトの「リンク」のページはバナーだらけで混沌として、もはや判別不能一歩手前。こんな事をして本当に意味があるんだろうか、と思い始めたオープンから3か月ほど後、初めてのお客様に来ていただけました。


 最初のお客様はセキセイインコさんだったのは覚えています。残念ながら記録は残っていないのですね。当時は記録類を作製しても保存する義務は無かったのです。今かえりみると記録を残しておくべきだったなあ、と思うのですが、当時はそんな事に思い至らないほどにいっぱいいっぱいのアップアップ。とにかく無事にお預かりして、無事にお返しする。それだけで頭の中はパンパンでした。


 最初のお客様を無事飼い主様にお返しして、それからまたしばらくは静かな日々が続きます。つまりまた数か月、お客様のご利用はありませんでした。最初の2年くらいはそんな感じで、数か月に一度のペースでお客様のご利用がある、という状況でした。


 そんな中、動物取扱業者について記されていた法律、動物愛護管理法が改正されます。 平成17年6月22日改正動物愛護管理法が公布、平成18年6月1日より施行されました。これにより、動物取扱業は届出制から登録制になり、悪質な店には登録停止をする事が出来る様になりました。


 また、専従の動物取扱責任者を置く事が義務付けられました。動物取扱責任者になるには、動物を扱う専門学校・大学の卒業もしくは半年以上の実務経験が必要になります。普通新たに動物取扱業を始めようとすると、ここがネックになる事が多いのですが、この規定は私にはとても有利でした。何せその時点で2年ほど(お客様の来ない閑古鳥の鳴く)ペットホテルで働いた、という、冷静に考えれば殆ど価値のない経験ではあるものの、一応書類上は実績があったからです。


 結果的には、小鳥の宿miyagiの登録も、私の動物取扱責任者への選任手続きも、何処からも文句は出ず、無事認められました。


 そして多分この頃からだったと思いますが、ネットで「鳥 ペットホテル 大阪」で検索すると、当宿のサイトが上位に表示されるようになりました。地道な活動の成果、と言えなくもないような気もしますが、そもそも母数が少ないのですから、当然と言えば当然だったのかもしれません。しかしその甲斐あってか、この頃を境に、少しずつご利用のお客様の数は増えてきました。

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