第19話 終わりに

 私は他人にアドバイスする、という事をあまりしません。がらではないですから。問われれば答えますが、所謂いわゆる啓蒙という活動を積極的にはして来ませんでした。それが良かったのか悪かったのか、何とも言えません。啓蒙って難しいですよ。余程の知識と経験の裏打ちが無ければ言葉が上滑りしてしまいます。価値観の押し付けになっても意味が無いですしね。


 ムキ餌を与えている飼い主さんに、皮つき餌をあげた方がいいと言った事はありますが、果たしてその言葉に説得力はあったのでしょうか。預けている間はともかく、実際に家でどんな食事をさせているのか、私にはわかりませんし、それを尋ねる事は私の仕事ではないように思うのです。鳥と飼い主との関係は、一朝一夕に出来上がるものではありません。全ては積み重ねの結果です。それを横から、しかも一部分だけしか見ていない者が、「貴方は間違っている」と糾弾めいた声を上げるのは、私には正しい事だとは思えないのです。


 しかしそうは言っても、せっかくこういう作品を書き、興味のある方がここまで読んでくださっている訳ですから、何か一つくらいはアドバイス的な事も書いてみたいですよね。だから一つだけ書きます。これから小鳥のペットホテルを開きたいと考えている方、あるいは知人の飼っている鳥を預かる機会のある方に向けたアドバイスです。


「何もしないというお世話」がある事を覚えておいてください。


 鳥を預かるとどうしても、寂しいんじゃないか、不安なんじゃないか、自分は味方だという事を理解出来たらきっと安心するだろう、と考えて、ついつい構ってしまうという事になりがちです。でも鳥は賢いですから、自分に向けられているのが敵意なのかどうかくらいはわかります。その上で、慣れない環境に対して不安を感じているのです。


 そんな状態で話しかけられたり、ケージの中に手を入れられたりしたら、鳥は混乱するばかりです。だからまずは慣れてもらう事、そこが安全な場所だと理解してもらう事が大事になります。その為には触らない、動かさない。もっと具体的に言うなら、鳥から離れた、でも良く見える場所に座って、しばらく本でも読んでいればいいと思います。そして時々顔を向けて、名前を呼んであげるといいでしょう。ケージから出して遊んであげるのは場所に慣れてからで充分です。慣れる為の時間を鳥さんに与えてあげましょう。それが何より最優先です。



 さて、ここまでいろいろ書いて来ましたが、どうでしょう、多少迷走気味だったかもしれませんが、実際に小鳥専門のペットホテルを立ち上げるに当たって立ちはだかりそうな問題は網羅もうらできていると思います。これを読んで、小鳥専門のペットホテルをやってみたい、と思われた方はいらっしゃるでしょうか。もしそうであれば、とても嬉しいのですが。


 私はこれからも、小鳥の宿と創作とを続けて行きますので、皆様とここ以外の別の場所でお目にかかる事もあろうかと思います。その際には、どうぞよろしくお願いいたします。尚、当宿の受付時間は午前11時から午後4時まで、人員が一人ですので所用で席を外す事はたびたびありますが、大体はこの時間なら待機しております。お問い合わせ等がございましたら、この時間帯にお願いします。


 ではまたいつか、お会いできるのを楽しみにしております。最後までお読み下さり、ありがとうございました。


<追記>

 小鳥の宿miyagiは2017年10月に泉佐野市から隣の貝塚市に移転しました。関空からは少し離れてしまいましたが、変わらず小鳥をお預かりしております。今後ともよろしくお願い致します。

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小鳥の宿の始め方 柚緒駆 @yuzuo

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