笑って泣けて熱い戦国譚🔥~真田戦国伝~

ふぁたけ

序章 真田戦国史始動

第一話 クソボケの少年・源太

 戦国時代の始まりは1467年。応仁の乱の勃発をきっかけに都は焼け落ちて、室町幕府の権威も地におちた国の秩序は崩壊した。そして、北条早雲。今川家の食客にすぎなかったものが下剋上をおこし、1516年に相模さがみ(現・神奈川県)を統一した。こうして、戦国時代が開幕した。 しかし、乱世の波の波及が遅い地域も存在した信濃しなの(現・長野県)もその一つ。1526年。今まさに乱世の火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 ここは信濃の更科さらしな(今の長野県、北部)にある葛尾城。ここは村上家の居城である。この城を夕闇が不気味に覆っていた。その近くにある草原で一人の男が死体にまたがっている。その男は夕空をチラリと見たあと、少し遠くにある、もう一体の死体を見ても残念そうな顔をした。そして、一言「あー。弱かった。」その残酷な言葉を清めるように涼しい風が流れた。

 

 ところ変わって、信濃の小県ちいさがた(今の長野県、上田市)。「ひえー!!助けてくれ!!!」大草原を青白い顔をして細い目をした、いかにも武士をやってそうな髪型をした武士が、汗を棚引かせながら、悲鳴を上げながら全力で疾走していた。そして、そのうしろからドタドタと爆走する馬が現れた。その腰には目つきの悪い、ツンツンとした髪の少年が「ダッセぇな。いい年ぶっこいてよ!!」と馬を爆走させながら、とてつもない奇声をあげて武士に勢いよく迫っていった。

 そして、しばらくたつと逃げ惑う武士の目の前に小高い絶壁のような山が現れた。ここで武士の逃げ場は完全に断たれてしまった。少年は下馬して武士に迫る。「ボケ親父。これは、一体全体どういうことだ!!」なんと!?この武士は己の息子に追いかけられていたのだ。

 この情けない武士の名前は真田頼昌さなだよりまさ。小県の領主である海野棟綱の家老である。そして、この頼昌は己の息子である真田源太さなだげんたにむかって「......源太やめてくれ、僕がなにしたって言うんだよ!!」と惨め極まりない命乞いをしたのだ。

 そして、ちょうど、そのときだった。源太はニヤリと笑い、己の父を襲った衝撃すぎる理由を明かす。「裕福な農家の養子にしろって言ってんのがわからねぇのか!?俺は勉強したくねぇーんだよ!!お前の後は俺の弟に継がせろ!!!」

 そして、頼昌は動揺して、コンニャクほどに体をブルブル震わせながら「......また、その理由か。源太はお兄ちゃんになったんだろ!?。弟のために人肌ぬごうとかないの!!」と源太に問いただした。

 そして、源太はなにを今更という顔をしたあと、ある驚愕な発言をした。「何をトボケた発言してんだよ!?ある訳ねぇだろ、ボケ親父が!!。俺は弟のおかげで、めんどくせぃにもほどがある武士の仕事をしなくていいんだろうがよ!!分かったら、さっさと俺を※廃嫡はいちゃくしろや!!」と叫んだ。

※何らかの理由により跡継に対し相続する権利を廃すること

 頼昌はこれでもかというほど、わかりやすく引いた顔をした。そのあと「......そんなこと言って恥ずかしくないの?」と源太に質問した。

 すると、源太はどんな刀より切れ味鋭く、それでいてビックリするほど堂々と「全然!!」と言い放ったのだ。

 頼昌は思わず顔をしわくちゃにして、発せられた言葉がギリギリ理解できるぐらいの活舌を保ちながら「恥を知れよ!!」と叫んだのだった。

 すると、源太は己の顔を鬼神のような形相に変貌させて「お前、誰にもの言ってるかわかってんのか?」とボケ親父に詰め寄っていった。

 そして、頼昌はおそる、おそる「ひ!?......源太に決まってる」と威厳ゼロのか細い声で、それを言ったのだった。

 だが、源太は先程とは一転、凶器の雰囲気を残したまま冷血な吸血鬼のような顔になり「......今から、親父を処刑します」とその人間離れした表情をドヤリとニヤケさせた。

 頼昌は恐怖でキッとひきつった顔をして「やめるんだ。やめるんだ!!」とサッサッと後ずさりした。でも、後ろにあるのは絶壁。もう逃げることなどできない。

 源太は不気味にケラケラとニヤケ、懐から球のようなものを取り出した。そして「覚悟はいいか?ボケ親父」と言い放ち、その球を頼昌の真上の投げた。

 そして、その球は空中で炸裂し、中から恐ろしくクサイ家畜の糞がでてきて頼昌に降り注いだ。

 「ぎゃぁああああ。くせぇええええ!!」と途方もなく、ドデカい絶叫をあげる頼昌を源太はニコニコ凝視すると。糞まみれな頼昌を置いて悠然とどこかへ立ち去ってしまった。

 頼昌は糞まみれになり、涙を浮かべながら「......僕の直観はこう言ってる。お前は普通じゃない。僕は今から村上義清殿の接待なのに」と言い残し、そのまま、しばらくシクシクと泣き続けた。

 この予想はある意味。的中してたいた。この少年がのちに真田昌幸、幸村を輩出する戦国真田家の始祖となり。『戦国三弾正』と称され。甲斐の虎・武田信玄の懐刀になることを誰が予想しただろう?。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る