第九話 優秀な配下とは
そして、彼は椅子の後ろに無造作に置いてあった木刀をもち、立ち上がると「しかたねーな」と言って佐太夫の方へむかっていった。
さっきの
源心は後ろを振り返り「どうもこうもないわい。」と言うと幸隆を見てニコッとした。
幸隆は少し動揺して「......あのボケ野郎が、どこが優秀だってんだよ!?」と声を発した。
源心は不敵な笑みを浮かべて「ボケはオヌシのほうじゃ。優秀な配下とは己の足りない部分を補ってくれる者をいうのだぞ」と言った。一瞬だけ幸隆がハッとした顔をすると源心は再び顔を佐太夫の方へむけた。
源心は佐太夫をジロリと見ると「鷲塚佐太夫いざ尋常に勝負!!」と言って飛び掛かった。
それからしばらくの間、源心と佐太夫がしばらく戦っていると、高山が不意に目を覚まし、寝ぼけた顔が徐々に変化していき「アイツ??何者なんだ!!!源心様と互角に戦ってやがる」と驚きのあまり顔から汗がしたたり落ちた。
しばらく互角の攻防が続くと佐太夫はイライラした顔をして「おっさん!!何で本気で戦わねぇんだ??」と悔しさを滲ませて大声を張り上げた。
源心はバカにしたようなニヤケツラになって「ワイが何でオヌシごときに本気をださなくてはならないのだ?」とヘラヘラしながら言った。
心に火がついた様子の佐太夫は真剣な眼差しで「だったら俺がおっさんの本気。引き出させてやる!!」と源心に突っ込んでいくと、どこからともなく銅鑼の音が鳴った。
天幕の外から
そして、天幕の中に虎のような目をした大男が「......警備が甘すぎだ。信濃にその人ありと言われた
佐太夫はこの大男に対して「お前?誰だ??」と思わず声がでた。
その言葉に反応したのか虎のような目をした大男が佐太夫をジロリと見て「これから、天下最強になる者だ!!」とあたり一面が吹き飛ぶぐらいの大声をだした。
すると、ちょうどその近くにいた高山は爆笑して「はははは。コイツバカか!!」と指をさして笑った。
虎のような目をした大男は驚くほどに無表情で右腰についた鞘から刀を抜き「その程度で俺の道を見下すな、死ね。」と言い放ち、高山の首をいともたやすく吹き飛ばした。血柱が上がる彼の胴体を大男は無慈悲に左腕で「じゃまだ、どけ」と払いのけた。
その光景を見た幸隆は急に青ざめだした。そして、彼の脳裏には少年時代の記憶、父が死んだ記憶が無限に流れ続け「うわぁぁああああ」という彼に似合わない地鳴りのような大きな悲鳴をあげるとパタリと地面に倒れた。
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