第八話 平賀源心
その
すると、目の前に小山ほどの大男が立っていた。思わず、佐太夫は「なんだ!?このドでかいオッサンは!?オッス!!」とさっきまで気絶していた男とは思えないほど、ドデカい声で挨拶したのであった。。
やや大きめの椅子に座っている、そのドデカいオッサンは「なんやねん。コイツ?」となぜか隣にいる幸隆に尋ねた。
そのドでかいおっさんはネコのような細い目をツブッて少し考えたあと「なんで、こんなどうしようもなさそうな奴とダチに?」とタンタンと幸隆に聞いた。
幸隆は顔をりんごの皮ほど赤くしたあと、覚悟を決めたかのような顔をして「なりゆきじょう仕方なかった」とやや棒読みで言うのであった。
状況をいまだに掴めない佐太夫は、またしてもヘラヘラ笑いながら「幸隆?コイツ誰???」と尋ねた。
少しだけイラっとした幸隆はムスっとして「......ボケ 、この人こそ
さっきまでヘラヘラ笑っていた佐太夫は「え!?あれがあの!???」と急にたじろぎだした。
源心はえっへんという顔をしたあと「ワイこそが、かの有名な平賀源心じゃ。あれってなんやねん!?」と言い放った。
佐太夫は源心の、その圧倒的な存在感に驚愕したあと「......このネコ目デブが、源心!!突然でわるいけど俺に稽古をつけてくれ!!」とあまりに唐突なお願いをした。
源心はネコ目デブと言われ首を傾げたあと、神妙な面持ちでキッパリと「 断る!!」と言い放った。
失礼な佐太夫はふざけんなといわんばかりに「え!?なんでだ。」とジタバタと騒ぎたてた。
源心は当たり前だという顔をして「ワイがなんで、初めてあったオヌシの面倒みなくてはならんのだ」と言った。
すると、幸隆は源心をちらりと見て「おい、おっさん。別にいいだろ、減るもんじゃねぇんだからさ」と言った。
源心は幸隆が何やら頼んできたぞと驚いて「オヌシ、本気で言ってるのか???」と言った。驚きすぎて声もかすれている。
幸隆はニコッと微笑むと「おっさんはボケだな。......どうせ、俺の頼み断れないだろお人好しだし」と恥ずかしそうに言った。
ようやく友達ができたわが子を祝福するように源心は幸隆に笑い返すと「ふふふ。まあよい。高山、こい!!コイツに勝ったら剣術を教えてやる。」と佐太夫に宣言した。
すると、天幕の外から
佐太夫はオッシャアと歓喜のオタケビをあげたあとに「約束だぞ、ネコ目デブ!!」と叫ぶと高山のほうにむかっていいた。
高山は佐太夫と対峙すると一つの疑問をぶつける「ネコ目デブって誰だ?」と。
佐太夫は無表情で「あれだよ、あれ。」と源心のほうを指さした。
高山は怒りのあまり、ひきつった笑顔をしたあと「クソチビめ。跡形もなく粉砕してやるぅぅぅ!!」と絶叫した。
幸隆は「おいボケ。真剣をつかうなよ。木刀で戦え。死人がでるだろ!!!」と言うと佐太夫に木刀を投げた。
佐太夫はそれを掴み「あざす。見てろよ、幸隆。絶対勝つからな!!!」と今日一番の笑顔をみせた。
幸隆が佐太夫と高山の戦いを少し心配な表情で見ていると、横に座っていた源心が「おい、源太。.......大丈夫だ、どうせ高山は負ける。」と言った。
幸隆が少し不機嫌そうな表情をすると「なんだりゃ。......ボケ。その名はやめろ、それはガキのときの名だ」と言った。
源心は顔を下に傾けると「......わるかった。」と言う。
幸隆は「......謝んなよ。海野家一の猛将がボケすぎるぜ。」と少し悲しそうな顔をした。
源心は話をかえて幸隆に「オヌシ、まだ幸義の仇を討とうと思ってるのか?」と聞いた。
すると、幸隆は即答で「わりぃかよ。」と答えるのであった。
源心は「今や村上義清は信濃で一番勢いがある勢力だ」と言ってクスっと笑った。
幸隆はイライラを顔ににじませながら「それが、どうしたってんだ!!」と大声をだした。
その大声をさらりとカワスかのように、途端に優しい顔になった源心は「本当に、それを望むなら優秀な配下を持つことだな」と言った。
それを聞いて幸隆はハアと顔をしたあと「例えば誰だよ?」と源心に尋ねた。
すると、源心は人差し指をつきだし「例えばあの小僧とか」と言って微笑んだ。
すると、半泣きで倒れ込んでいる高山と「勝ったぞ!!ネコ目デブ!!稽古つけてくれよ!!!」とこれでもかというぐらいニコニコ笑う佐太夫の姿があった。
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