第二十三話 結果オーライ

 幸隆ゆきたかはキョウの父親である羽尾はねお殿を見下した表情をして「見てわかんねぇか、ボケ。俺とキョウは愛し合ってんだよ。」と言った。

 羽尾殿は怒り浸透で頭から湯気をだし「このクズが!!そんなことでワシが婚約を許すとでも?」と自身の腰にまたがっている刀を抜いた。

 幸隆は、ヤレルもんならヤッてみろという顔をして「下手にでりゃ。いい気になりやがって!!この恐怖のジャガイモ顔が!!俺がキョウを愛してなにがワルイ!?言ってみろやボケ野郎!!!」と羽尾殿をニラんだ。

 羽尾殿の唇は怒りで震えだし「わ、わわ、ワシの顔のどこがジャガイモじゃ!!もう一度聞く。なぜキョウのことをめとろうと思ったのだ!!?」と、幸隆を声だけで殺せそうなほどに大きく鋭く怒鳴った。

 幸隆は、その怒鳴り声を跳ね返す勢いで「なんもねーよ。しいて言えば、キョウと居ると楽なんだ。アイツの慌てた顔、アイツの笑った顔、アイツの寝顔。全部、見てて、落ち着くんだ。何度も言わせんなボケ。そんなジャガイモのくせにキレイな娘こしらてんじゃねぇぞ!!」と大声を張りあげた。

 羽尾殿は、一瞬だけ、キョウの顔をみたあと「......勝手しろ。ワシは帰る。ワシの期待裏切ってみせい!!」と言って兵士を引き連れて箕輪みのわ城をあとにした。

 自分の父がいなくなったあとキョウは「幸隆、何でキスしたの。恥ずかしいじゃない。」と静かに聞いた。

 幸隆は、少し照れたのか、柄にもなくカッコつけた表情をしたあと「あ、テメェこそ余計な御世話なんだよ。俺のために自分の親父と縁切ろうとしたろ。」と言った。

 キョウは「......だからって。」と言うと、顔を赤くしていた。

 幸隆は凛として「前に言ったろ。俺の親父は俺とのケンカのあと死んだ。好きな人に自分と同じような目に合ってほしいって思う男がどこにいるかよ。ましてや、それが自分が原因なりゃあ。なおさらだ、ボケ。」と言った。

 「......あれ?」とキョウはあることを思い出した。

 幸隆は「どうした?」とキョウに尋ねる。

 キョウはボソッと「......景持かげもちがいない。」と言うのであった。

 幸隆は笑っているのに、どことなく怖い顔をして「本当だ。あのボケ野郎。ただじゃ死なせねぇ。」と言った。

 キョウは破壊的に怖い笑顔をしたあと「......応援してる。」と小さな声で言った。

 景持は幸隆の仕返しから身を守るために走っていた。すると、目の前にトラが現れて「ん!?トラだ!!。僕を守ってくれ。幸隆が逆ギレしてきて、僕を襲ってきてるんだ。」とぜぇぜぇ言いながら、とんでもないクズ発言をするのであった。

 トラは「わかった。」と言うと、少し遠くに幸隆の姿を確認した。そのあとで、景持をニラみつけて、腹に力士顔負けの張り手をかました。景持なるクズ男は、その場で倒れ込んだ。

 トラは、嬉しそうにハシャぎ「ししし。捕まえたぞ。」と言って、景持を縄でしばった。

 景持は、動揺で目を血走らせ「やめろ、トラ。これは、どういうことだ。」クズな人相が、死にかけの悪魔みたいになっていた。

 幸隆がトラと景持のもとへたどり着くと「あざす。」とトラの肩を叩いた。

 トラは「このゴミどうする?」と聞いた。

 すると、幸隆は即答で「家畜のフン捨て場に一日放置しよう」と言った。。。


 

 その日の夜、箕輪城の長野業正ながのなりまさの部屋の外から「入ってもいいですか?」と丁寧な声が聞こえた。

 中で座布団の上に座っていた業正は「いいですよ。」と優しい口調で返事をした。

 フスマが開くと、そこにはキョウの父である羽尾幸全はねおゆきてるの姿があった。羽尾殿は業正様に一礼をすると「業正様。ワシは正直、心の準備ができてません。元々、武家に嫁ぐための修行の一環として業正様のところにむかわせました。覚悟していたツモリなのに……いざとなると。真田幸隆は、どんな男なんですか?......ケシカラン奴ではないでしょうね?」と喋り口調から心がにっちもさっちも行かない状態だとわかった。

 業正は、そんな悩める父親を優しい目で見たうえで「真田幸隆は何があっても、心が折れない。そして、見た目に反して情に厚い。だから、彼は君の娘を誰よりも幸せにすると思いますよ。」と言うのであった。


 業正が貸してくれた部屋で幸隆とキョウ、そして産まれたばかりの源太が三人並んで、それぞれの布団の中で寝ていた。そんなか源太を挟んで一番左側に横になっている幸隆は「ところでキョウ、俺のどこがよかったんだ?」とキョウに尋ねた。。

 一番右側で寝ているキョウは「......幸隆の前向きさは私にはない。あと、実は人の気持ちがわかって優しいところかな」と答えた。

 

「俺が優しい!?。ボケ、それはテメェの勘違いだよ。」

 

 「......そうかな。」


 「まぁ、でも。一緒に幸せになろうぜ。」


 「幸隆。これからもよろしく。」


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