第六話 初めての共闘!?

気が付けば夕暮れになり、真田幸隆さなだ ゆきたか鷲塚佐太夫わしづか さだゆうは丘の上に立っていた。幸隆は謎の青年・佐太夫の手を振りほどくと「勝手に助けてんじゃねぇぞ!!ボケ!!なんで俺を助けた!?初対面だぞ!!」 とうなるように叫んだ。

| 佐太夫は謎にニッコリ笑い「さあな。なんとなくだ!!。 お前腰抜けって言われてるんだろ?なんでだ?」と幸隆に脈絡がない唐突な質問をぶつけた。

この質問に幸隆は思わず頭に血がのぼり、ただでさえつり上がった目をいっそうにつりあがらせて「なんでお前なんかに、そんなこと言わなきゃいけねぇんだよ!!初対面で答えるわけねぇだろボケが!!!」と大砲のような大声を張り上げた。

 すると、佐太夫は真顔でその大砲をカワスかのように「じゃあ、言わなくていいぞ」と言うのであった。

幸隆は虚をつかれたように「はあ!?なんだてめぇ!!......おちょくってんのかよ」 とさっきまでの大声を途端に小さな声に変換させた。

 佐太夫はニッコリ笑い「ばれた!?」 と一言。

 その一言がきっかけに、あたりイチメンに一筋の風が流れた。

 幸隆は一瞬だけ動揺したあと、その反動で頭に血がのぼり、後ろの空気が怒りの熱波でゆがみだした。そして、幸隆は「てめえ、卵ぶっかけて豚の餌にさせっぞ!!」と雷の爆裂音の如くの大声をはなった。

 それからだった。佐太夫はハッとした顔をして「よくそんな恐ろしいことを思いつくな。血が怖いくせに」と言ってはならない一言を悪気もなく幸隆にあびせてしまうのだった。

 そして、幸隆のイライラと連動するかのように夕暮れが、ほんの少し暗くなった。

 次の瞬間「てめぇ!!ボケが!!!」 幸隆は気が付くと佐太夫に殴りかかっていた。

 佐太夫は幸隆のコブシをかわすと「でもなあ俺が興味があるのはそんな事じゃないんだ」 と言って幸隆を勢いよく殴り飛ばした。

 倒れ込んだ幸隆は負けてたまるかと言わんばかりに、再び立ち上がる。

 そこへ佐太夫は問いを投げかけた。「お前は何と戦ってんだ?」と。

 幸隆は目を己の顔の限界までつり上げ「うるせぇぞボケ!!戦う!?俺が何と戦うってんだよ!!!トボケた顔しやがって!!」と突進することしか知らない暴れ馬の如くに再度佐太夫に殴りかかる。そして、また簡単に殴り飛ばされてしまう。

 佐太夫は倒れこんでいる幸隆をマジマジと見つめて「なんていうか、お前は血が怖いだけじゃなくて。なにか本当の別の原因でもがいてそうな雰囲気を感じるんだよなぁ」と言った。

 幸隆は殴りかかろうとするも「黙ってろ!!この!!......ボケ」 と言って立ち上がれずうずくまった。そして、しばらく沈黙が流れた。

 佐太夫はボソッと一言「見栄とかいいから言えよ。楽になるぞ」と言う。

 それをきっかけに幸隆は地面をドンドンと叩きつけて「......黙れ。......黙れ。黙れよ!!俺とテメェは初対面だぞ。空気を読むって概念叩き込んでやろうか!!」とはち切れんばかりの大声をあげた。

 すると、佐太夫はおもむろに「俺はな鷲塚家の次男坊。跡継ぎじゃない。だから、百姓の養子になることになった。 百姓と言っても大地主の家系で養子になれば安泰だ。だけど、兵士として駆り出されることもない。 でも俺は武功をあげて出世したかった。 俺のやりたいことは田畑を耕すことじゃない」と己のどうしようもない現状を幸隆に伝えるのだった。

 幸隆はニヤリと嫌味たらしく笑うと「お前の人生つまんなそうだな!!マジザマーだぜ!!。俺が血が怖い理由ってのは親父の血まみれの死体を見たからだ。そんで親父を殺した張本人は村上義清。そいつを討って仇をとるために今まで生きてきた。なのに、俺にはそれができない。血がダメじゃ戦場にすら出れない。」と再びドンドンと地面を叩いた。

 佐太夫はニッコリして「そうか打ち明けてくれてありがとな。もう夕暮れだ。帰り道の案内しろよ幸隆」と優しい口調で聞いた。

 幸隆は目を大きくカッ開き「お、俺の名前!!!どこで覚えた!!!」と嬉しいんだかビックリしたのか、なんとも言えない大声をだした。

 すると、キョトンとして佐太夫は「ど、どこだっけ」と言って茶色がかった短めの鷲のような髪をかきむしった。

 幸隆は開いた口がふさがらないという表情をしたあと「はあああ!!???ボケか!!!」と大地を揺らすように叫び声をあげた。


 「・・・プププ。バカが大声でなにかを言ってる」


 幸隆はいけ好かない声のほうをに首を傾けると、少し遠くのほうにたるんだ顔を不気味に揺らしながら笑う海野幸義うんの ゆきよしの姿があった。しかも、そのうしろには30名ほどの屈強そうな兵士たちも控えてる。

 幸隆はいつもの数倍以上のするどい目つきで「......幸義」と言ってにらんだ。

 豚ヅラのわりに上品な長髪をかき上げると幸義は「ワレは今、屈強な兵士30人を引き連れている。さすがの腰抜けもお手上げだろうな」と豚ヅラのくせにカッコをつけた口調でそれを言うのであった。

 そして、あることに幸隆は気づき、思わず「そんなことより頼綱よりつなはどうした?」と幸義に己の弟のことを聞いた。

 幸義は謎に失笑したあと「さっきケガをしたワレを担いだところ腰をやってしまい、ここにはいない」と、その事情を話した。

 幸隆はマジメな顔をして「マジザマーだな。御主人様が痩せないばっかりに」と遠まわしに幸義の悪口をボソッと言うと、それがコッケイだったのか佐太夫は腹を抱えて笑いだした。

 幸隆はギロリと佐太夫を見たあとニヤリと笑い「おい!!佐太夫!!!」と叫ぶ。

 佐太夫はビックリして笑いが止まるとㇺッとして「お前!!俺のシャックリが止まらなくなったらどうすんだ!!」と子供のような理由でカンカンに激怒した。

  幸隆はしらけたネズミのような顔をしたあと「意味不明なことで怒んじゃねぇよ。ボケが!!。......耳貸せ」と佐太夫にボソッと何かを吹き込んだ。

 佐太夫はハッとした顔をしたあと「おまえ。賢いな」とニコッとした。

 幸隆は悪魔のように笑うと「あたりめぇだ。突っ込め佐太夫!!」とパシッと勢いよく佐太夫の背中を押した。

 そして、佐太夫は幸義が連れてきた兵士30人にむかって猪の突撃のように全力疾走で殴りこんでいった。

 この光景に幸義は脂肪まみれの顔を震わせながら高い笑い声をあげて「プププ。あんなところにバカがいるぞ。あっという間にやってしまえ!!」と小県の跡継ぎとは思えないほど下品な大声で叫んだ。

 その瞬間だった。幸隆は兵士と佐太夫の上、空高くに謎の玉を勢いよく投げた。そして、その玉は炸裂し、おぞましい茶色の物体が空から降ってきた。幸隆はそれを指をさして満面の笑みで「それはウンコだ!!」と高らかに叫んだ。

 兵士たちは動揺のあまり「えぇぇええ。きたねぇええ!!」とウメキ声にも似た声を口々にあげるのだった。 兵士たちの悲痛な叫びがコダマするなか、佐太夫は彼らを次から次へと殴り飛ばしていった。

 その光景を見て幸義は青ざめた表情で呆然としていた。そして、我に返ると「なんであいつ動揺しないの。バカなの!?......ん。ワレの服にウンコがぁぁあああ!!。ぎゃぁああああ!!!!」と我々が思う想像の三倍以上に慌てふためいた。

 そうこうしている間に佐太夫は幸義の30人の兵士の全員を戦闘不能に追い込んでいた。そして、佐太夫は幸義にゆっくりノソノソと近づいていき、彼の真ん前に立つとニコッと笑い「オッス!!」と堂々と大きな一言をカマすのであった。

 幸義は「ぎゃああああああ」と驚愕し、その衝撃で思わず倒れ込む。そのあとに彼の腹から謎のギュッと音がしたかと思うと、その直後から腐敗臭がしだす。恥ずべきことに、彼は脱糞してしまったのだ。

 完全に半泣き状態の幸義に佐太夫は「玉からでた茶色のコイツはウンコじゃないぞ。ただの泥だ!!」と圧倒的にわかりやすく説明した。

 幸隆は遠くで意地悪く笑うと拍手をして「よくやったな」と佐太夫の労をねぎらった。

 佐太夫はキョトンとして「人相悪いうえに。えらく、上からだな」と苦笑いを決めこんだ。

 すると、幸隆は「お礼にお前にホンモンの戦場をみせてやるついてこい!!」とハジケルのように大声をだした。

 佐太夫は思わず「は。どこに?」と尋ねる。

 そして、またしても幸隆は悪人ヅラでニヤけたあと「んなの決まってるだろ。今、武田と戦ってる海野最強の猛将・平賀源心ひらが げんしんが守る海野口城うんのくちじょうにだ!!」と高らかに叫んだ。

 運命の出会いを果たし、初めての共闘を終えた真田幸隆と鷲塚佐太夫は脱糞した海野幸義を置き去りに海野口城にむかった。そこで惨劇が待ってるとも知らずに。

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