六月の本棚

作者 六月菜摘

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★★★ Excellent!!!

 読んでいるうちに、記されている言葉に、言葉の連なりに、一人の女性の姿が現れてきます。
 雨宿りの木の下、あなたの座るベンチの隣りに。
 その人は、あなたを気にとめるでもなくベンチにくつろいで、文庫本を開き、聞き取れないほど小さな声でハミングをしながら、雨を楽しんでいます。
 あなたは、雨がこのまま振り続ければいいな、と思います。
 そんな風に、このまま続いていってほしいという思いが、満ちてくるのです。

★★★ Excellent!!!

「本棚には、裸よりも裸になった自分がいる。」
かつてさる思想家は、心が覗かれるのが怖くて、自分の部屋に本を置いていなかった。

本棚を自分の作品のように見せつける人がいる。
難しい本や装丁の凝った本を並べ、見栄えを考える。
それは審美的な姿を見せるけれど、時として気取り過ぎて三文ポルノになってしまう。

本棚を物置だと思っている人がいる。
とにかく機能的に、サイズやジャンルに分けて、良く読むものを手に届くところへ。あるいは、とにかく隙間のあるところに、どんどんと詰め込んで。
それは知の探究心を反映した無頓着だけれど、時として乱雑な紙束の中へその人の姿すら埋もれてさせてしまう。

筆者の本棚はどうだろう。
ことさらに気取ったポーズは取らない。
けれども、きれいに整えられている。
ただただ好ましいのだ。

そんな素敵な本棚の持ち主が少年だった少女時代を振り返る、あるいは自分が通り過ぎて行った彼女たちや自分を通り過ぎていった彼たちに想いを馳せるその横顔に、心惹かれない人があるだろうか?

★★★ Excellent!!!

*完結おめでとうございますー!!

詩的な言葉で、私的な物語を語るエッセイ。

語り口は柔らかく、まるで文字の向こう側から著者が語りかけているような心地の文章で、著者の思い出を綴っていく。エッセイというよりは、物語であり、詩であり、日記であり、呟きであり、でもやっぱりエッセイという不思議な雰囲気のエッセイだ。

著者の思い出と共に登場する本は、誰もが知っている名作たちばかり――『雪国』、『檸檬』、『月と六ペンス』。小説だけでなく、詩集、音楽、写真、映画と、どこかノスタルジックな気分にさせてくれる、たくさんのジャンルの名作、著名人が登場する。著者の文章を読んでいると、不思議と過去が喚起され、思い出の一冊を読み返したくなってくるのだ。

さぁ、このエッセイを読んで、あなたの思い出の一冊を振り返ってみよう。赤ワインなんかを飲みながら、煙草をふかしてみるもの良いかもしれない――思い出の一冊を読むのだから、少し贅沢をしたっていいじゃないか。

たまには宿酔してみるのだって、悪くはないだろう?


★★★ Excellent!!!

 雨音には、リズムがある。

 目を閉じて、水溜まりの波紋を脳裏に思い浮かべてから、この作品を読んで欲しい。
 染み入るような霧雨も、穿つようなスコールも、雨粒ひとつひとつが言の葉となって、私の、あなたの心を打つのである。

 エピソードのひとつひとつが、言葉と、想いと、出会いの積み重ねだ。
 手の平を重ね、そこに雨を溜めてみよう。
 いつか、溢れて、落ちてしまう。
 その雨を、我々は、或いは別の誰かが受け止め、溜めてくれるはずだ。

 この作品の世界は、『そういうもの』であると、私は言い切る。
 伝えるということ、共有すること、繋ぐこと。

 温かく、柔らかく、身体を冷まさず、心を濡らす、優しい雨。

 そんな雨が、あってもいい。

★★★ Excellent!!!

無理やりカテゴライズしてしまうと、「詩的な文章で綴られたエッセイ集」でしょうか。やや私小説的でもあります。

とはいえ、これほど内容を分解して考察する行為そのものがバカバカしい作品も、Web上の小説投稿サイトではそれほど多くないでしょう。
おそらく、エピソード毎のテーマと共に、ただただ言葉の持つ表現の妙味のようなものに触れさえするだけでも、心に響くものがある人は少なくないと思われます。

そこから薫り立つ叙情的な雰囲気を楽しむことができれば、これは麗しき文系の花園であり、あるいは至上の「癒し」足り得るテキストの数々なのです。

★★★ Excellent!!!

この「六月の本棚」が、ごくごく自然にもう何十年もそこにあったかのように思わせる部屋があって欲しい。あの薄緑とも碧ともつかない本棚に似つかわしい部屋が。

そしてその部屋に私は何度も訪れる。彼女の部屋に。窓の外を眺め、本棚から今日の一冊を取り出す。彼女のセレクションした珠玉の作品たちはみなスモーキートーンだ。桜色、萌黄色、縹色、それから彼女の好きな檸檬色。本棚の隣の椅子に腰を下ろす。外は雨がいいかな。生命に命を与える恵みの雨。そこには蒼い紫陽花が微笑んでいる。
そんな日を過ごしてみたい。この本と共に。

★★★ Excellent!!!

言葉は時として武器になる。
それは或いは、小さな一言が人の命にさえも突き刺さるような。

だけど、言葉は武器だけでは無い。
人を癒やし、或いは笑わせ、喜びと悲しみを与えてくれる。

さて、なら自分が今発している文字や言葉は武器だろうか、それとも小さなバンドエイド程度にはなっているのだろうか?

願うならバンドエイドでありたいな、そう思いながら……

今日も日本語と向き合っている。

もし、貴方がバンドエイドでありたい、ナイチンゲールでありたいと思ったなら、この作品を読んで頂きたい。

★★★ Excellent!!!

綴られる内容はもちろんのこと、その言葉遣いの美しさにくらくら来ます。 どんなレビューも陳腐に見えて、何度書き直したことか。他のレビューの皆さんのお気持ちが痛いほど分かります。 私も、この優れた御作品に相応しいレビューができる力量が身に付くまで待つべきと思いつつ、そんなこと言ってたら一生レビューできない気がして今日は思い切って残していきます。
こんなすごい言葉の天使に出会ってしまうと、自分はプロットだけの小説書きだと思い知らされる、けれども、だからこそ、こうして何度も読ませて頂いて少しでも学んで行けたらと思うのです。 
もちろん、その類まれな創作世界に浸らせて頂く幸せを享受しつつ。なんという贅沢だろう、巡り合えたことに感謝です。

Good!

 勝手ではありますが、告白させていただきます。

 わたしは六月様の作品にレビューを綴らせていただこうとすると、なぜだか常になく悩んでしまうのです。この作品に限らず、六月様の書かれた作品は全て、です。
 どうしてでしょう。
 しばらく考えて、答えを見つけ出しました。
 レビューを綴ろうとすると、どうしても六月様に対する恋文になってしまうのです。それで、なかなか言葉にできずに――

 わたしがレビューを綴るときは、その作品の核のようなものを拾い上げ、それを中心にわたし好みの装飾を施して言葉にいたします。
 心を込めて書かれた作品には物語の中に核が隠されておりまして、物語の中に入り込むように読むことでその核に触れる事が出来ます。一度読むだけでは捉えにくかった場合は、何度か読み返すことで浮かび上がってくるものです。
 レビューで作品の内容をそのままお伝えしては読む面白さが失われてしまいますから、いつもは核を中心に暈かしを入れながら綴っております。

 核とは作品の根っこ。
 六月様の作品の核は、『六月様』でした。
『六月の本棚』はもとより、『玻璃の音*書房』も、作品中に登場するコリス君のご活躍を描いた『こりす書房』も、核に六月様がいらっしゃるのです。


 好きな物全てを“大好き”で包み込めるくらい素直で優しくて、登場された方みんなを甘く描き出す柔らかさを持っていて。
 ことのは一葉の手ざわりにも気を配って角を撫でる心遣い、読む方へ伝わって欲しいと願いが込められた言霊の熱さ。
 形ある物をより楽しく見せる工夫と、視点に凝った描き方。
 もっとも可愛らしいところは、形の無いものを形の持たせない本当の姿のままで紙面に載せようと奮闘なさるお姿です。それは、物書きの誰もが目指して挫折した道でしょう。
 もっとも素晴らしいところは、形の無いものを形の持たせない本当の姿のままで言葉にしよう… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 漱石、鴎外、谷崎など文豪たちの名前が出てくるのが嬉しい。
 もう何年もああいう人たちの書いた本は読んでないな。また読んでみようかな、と思った。
 それと、この作品を読んだのがきっかけとなり、自分の父親の本棚のことも思い出した。文学書がほとんどなくて、法律と仏教と囲碁の本が多かったような気がする。

★★★ Excellent!!!

(追記させていただきました)

 ある人の本棚に並べられた本には、その人の人生が詰まっている。私はいつからか、そう思っています。この本棚に並んだ本も、だれかの美しい人生の思い出です。
 空白を用いた、散文と韻文の中間のような文体は、目にも耳にも心地よく響きます。ぽつぽつと語られる本の思い出には、きらめきながら霞んでゆく色彩が見えます。よく選ばれた言葉は、或る人の本の思い出を語るだけ。それなのに、いや、だからこそ、お堅い批評や書評よりも、ずっとその本への興味を惹きます。
 ここに出てくる本はきっと、誰かの人生を垣間見る読者の、その人自身の人生となるでしょう。
 これからどんな本が並べられていくのか、これからの「本棚」を楽しみにしたいです。







(5・7追記)

 最新話まで、拝読しました。ちょっと、どうしても書かなければいけないと思ってしまったので、こっそり追記します。個人的な思いになってしまって、しかも感情の迸るまま書きますので、もし目障りであったのなら、消してしまってください。
 第5話を読んで、動けなくなりました。何度も何度も、読み返しました。読み返せば読み返すほど、ああ、ここには私がいる、私とおなじ寂しい誰かが、この手紙の向こうにはいる。そう思って、しばらく、何も出来ないでいました。誰かの書き残した言葉が、こんなにまで自分のなかに入ってきて、声が聞こえて、怖ろしいほどにずっと残って、そんなこと、ちょっと今までにありません。
 レビューの質とか、文体とか、「誰かもまた読んでみたくなるような」とか、そんなこと、もう気にしていられない、書くしかない、それでこの追記を書いています。文章も何も滅茶苦茶です。乱文をどうかお許しください。
 それほど、どうしようもなく、持っていかれました。この感情を書くために、こんなにも言葉がみつからないものかと、困っています。
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★★★ Excellent!!!

哀歌のように降り続く雨のにおいを感じる。
椿の花びらをふくむ風が頬をとおりすぎる。
檸檬色のレモンの月が、顔を覗かせている。

その文章は五感に訴えてくる。
忘れがたい余韻をもって、鮮明に脳裏に焼きついてしまうのだ。
六月さんの綴る世界を、お読みになった書物を、その日常の
かけらを、少しでも垣間見てみたいと思ってしまう。
彼女の綴る言葉を読んだなら、きっと誰だって。

これからもこの随筆集がつづくことを、切に願います。
わたしはあなたのファンです、とここに公言します。