郷愁、憧憬、雨の音はノスタルジア
- ★★★ Excellent!!!
雨音には、リズムがある。
目を閉じて、水溜まりの波紋を脳裏に思い浮かべてから、この作品を読んで欲しい。
染み入るような霧雨も、穿つようなスコールも、雨粒ひとつひとつが言の葉となって、私の、あなたの心を打つのである。
エピソードのひとつひとつが、言葉と、想いと、出会いの積み重ねだ。
手の平を重ね、そこに雨を溜めてみよう。
いつか、溢れて、落ちてしまう。
その雨を、我々は、或いは別の誰かが受け止め、溜めてくれるはずだ。
この作品の世界は、『そういうもの』であると、私は言い切る。
伝えるということ、共有すること、繋ぐこと。
温かく、柔らかく、身体を冷まさず、心を濡らす、優しい雨。
そんな雨が、あってもいい。